打水をけふは神輿の男らに
子規の忌の糸瓜・鶏頭・柿の鐘
一堂に姫や坊主や歌留多会
タグ: 葉書俳句
俳壇賞2021 落選作-Ａ 紅さしてこの子どこの子祭の子
縦横に水羊羹の詰め合せ
地下鉄が闇を押し行く赤い羽根
落葉道長き小枝を拾ひけり
開発素句報 2022-09 美しきサマードレスの鎖骨かな
蟻の列みる子に日傘さしかけて
飛び込めばプールの底の炎ゆるごと
曝す書の古き埃を払ふなり
角川俳句賞2021 落選作-Ｂ 新妻の新緑の旅衣かな
初夏のガードレールの緑色
夜明けなり決死の蝉が穴を出づ
ほんまやなものの五分で蟻たかる
開発素句報 2021-01 初日の出しづかに富士のうかびたる
初詣神も佛も隔てなく
初夢といふ年玉を賜りぬ
綺羅星の月雪花の初芝居
角川俳句賞2021 落選作-Ａ 吹かば吹け春一番の空の旅
蝶が舞ふパンもケーキも無き寺に
蟻の道お天道様が見てをられ
きゆつと鳴く踏んで幼き霜柱
NHK俳句2021 落選作抄 表面はかりりと焼けて春を待つ
坂道を春一番の子が駆ける
開かれて鯵は干物に花は葉に
病院も駅も夜長の灯を点し
冬 【七五三】 神もまた素数を愛す七五三
七五三着飾るに良き寒さなり
胎内の次女も健やか七五三
長きものフランスパンと千歳飴
開発素句報 2021-02 滝はもうこりごりと水流れ去る
桜貝よりも色濃し蓮の花
八方へシャワー打ち出す畑かな
ドーナツ状に残土積み上げ蟻の穴
開発素句報 2024-03 堪へ難キヲ堪へ帝國の秋日濃し
図書室は本の涼しさ夏休
二度寝して昼寝の贅を尽しけり
電車には都の生者盂蘭盆会
開発素句報 2021-03 苦しまず死せりと遺髪終戦日
打水に刹那の虹を賜りぬ
母と読むおばけ絵本や蚊帳のなか
絵日記もその子も燃えて終戦日
開発素句報 2021-04 神々も寂しがりしや秋の暮
もやもやと腸のある南瓜かな
顔だけの食はれ残りの秋刀魚なり
行く秋の実を柔かに種硬し
夏 【紫陽花】紫陽花や砂利敷き詰めて変電所
紫陽花は気圧の谷に咲くといふ
紫陽花も金魚の墓も雨の中
紫陽花やハムを土台の目玉焼
春 【春】 土手に寝て春の証の腕まくり
明暗の春よ根を張り芽を伸ばし
スキップで春の体が飛んでくる
春かなし下駄箱の名札みな剥がされ
春 【雛祭１】 新聞も三月三日ひなまつり
背が伸びて細き手足や雛祭
雛の灯に子の宝物ありつたけ
雛の間のひと夜ひと夜の桃の花
春 【菜の花】 菜の花にあらざる花も黄なりけり
あけがたの黄の冷たさの花菜かな
花菜畑とは一面の花粉色
菜の花を中洲に積んで船出せん
開発素句報 2020 全葉書俳句 溜りたる葉書うれしき炬燵かな
2020年発行の開発素句報
その葉書俳句、全６枚の画像
冬 【春待つ】寒卵割つて明るい春を待つ
春を待つものの日あたり風あたり
美しき蝶になる夢春を待つ
春を待つ百獣の王その妻子
冬 【おでん１】 おでん酒おでんの人に寄り添ひぬ
もれいづる光と声とおでんの香
おでん屋のテレビに「地球最後の日」
おでん酒ぐびぐび飲んで寝るとせむ
俳壇賞2020 落選作 暖かやお尻で磨く滑り台
腰伸ばし見るや周りの潮干狩
ちらかつて庭うつくしや野分あと
手袋で好きな絵本を撫でてをる
新年 【去年今年】 滴々と濾過の雫や去年今年
つながつて長き夜汽車の去年今年
十二時は即ち零時去年今年
時計みな去年今年なく励むなり
開発素句報 2021-05 大陸間弾道弾を枯野地下
冬たのし新幹線型スニーカー
大皿に青き山脈雪催
「翌年のパリ」の字幕に雪と兵
年末【除夜の鐘】 すこすことボディーソープや除夜の鐘
人気なき松の廊下や除夜の鐘
蕎麦を啜り蜜柑を剥いて除夜の鐘
ＮＨＫ第一放送除夜の鐘
冬 【着膨れ】 着膨れの三文安を婆が抱く
重ね着の雪より白き恋衣
着膨れのままか一肌脱ぐべきか
着膨れの仏の顔も三度とや
NHK俳句2020 落選作抄 店先にママの名前の春燈
ピストルの手入れ運動会前夜
蟷螂の怒りに燃ゆる緑色
紫も緑も黒も葡萄なり
【腹】 空腹を宥めつつ朝寝坊かな
腹巻の腹話術師もありぬべし
乾鮭に腸のなき叫びかな
青空を胸一杯に囀るよ
【足】 猫の子を膝に世界を牛耳る日
両足で乗つて重たき踏絵かな
赤ん坊の足裏ふつくら汗臭き
山茶花の散り敷く上を土足にて
角川俳句賞2020 落選作-b 山一つ氷つてゐたる昼の酒
涅槃絵図涙ながらに褪せゆくも
吾輩は西日に立てる赤い箱
呪文の如くチヨコレイトや露地の秋
角川俳句賞2020 落選作-a 春待つや猫より小さき箱に猫
天井に届く悲しみ涅槃絵図
さくらんぼ美しき血を絶やさずに
よく遊びよく学ぶべき秋のチョコ
秋 【葡萄】紫も緑も黒も葡萄なり
恋人と葡萄の園に昼寝して
食べ終へて骨格残る葡萄かな
園閉ざすころには雪か葡萄村