俳壇賞2020 落選作 暖かやお尻で磨く滑り台

俳壇賞2020
「好きな絵本」

落選作

◎葉書俳句

 

 

◎テキスト

初の試みで、
作者名に「増殖する俳句歳時記」へのリンクを貼ってみました

春

スキップで春の体が飛んでくる　ハードエッジ

参考句：

よく弾（はず）む春の霰（あられ）でありにけり　柘植史子（つげ ふみこ）

くさめ児に母来る祖母が飛んで来る　大野伊都子

鞠（まり）のごと弾み来し子にお年玉　轡田進（くつわだ　　）

 

 

暖かやお尻で磨（みが）く滑（すべ）り台　ハードエッジ

お尻：

ミック・ジャガーの小さなおしり竜の玉　内田美紗

 

 

仮（かり）の世の二月の末の四月号　ハードエッジ

仮の世：

仮の世といへどあまりにうらゝかな　小杉余子（　　よし）

仮の世に仮の垣根を繕（つくろ）ひし　高野素十（　　　　すじゅう）

仮の世にいろあらばこの桜貝　上田日差子（　　ひざし）

仮の世のその花びらを水に置く　ハードエッジ

仮の世のひとまどろみや蝉（せみ）涼し　高濱虚子（たかはま きょし）

仮の世に生きて夏痩（なつやせ）することも　上村占魚（うえむら せんぎょ）

仮の世と思へば祭さへも仮　大牧広

仮の世に秘めごと多し蚯蚓（みみず）鳴く　市堀玉宗（いちぼり ぎょくしゅう）

仮の世の仮の氷柱（つらら）の長短（ながみじ）か　ハードエッジ

 

 

頭だけ替（か）へるカミソリ雛（ひいな）の夜（よ）　ハードエッジ

剃刀：

研（と）ぎ上げし剃刀（かみそり）にほふ花ぐもり　日野草城（　　　　そうじょう）

髪剃（かみそり）や一夜に錆（さ）びて五月雨（さつきあめ）　野澤凡兆（のざわ ぼんちょう）

剃刀は香水瓶（こうすいびん）のすぐそこに　ハードエッジ

剃刀にふれし揚羽（あげは）は熱からむ　八田木枯（はった こがらし）

剃刀に蝿（はえ）来て止まる情事かな　寺山修司

髭（ひげ）のびて剃刀さびぬ秋のくれ　正岡子規（　　しき）

剃刀のその切れ味の桂郎忌（けいろうき）　川崎展宏（　　　　てんこう）

 

 

春眠（しゅんみん）の宿に落花（らっか）の限りなし　ハードエッジ

春眠自作：

母春眠父朝酒の旅の宿　ハードエッジ

落花自作：

飛花の山落花の谷と続きをる　ハードエッジ

花冷（はなびえ）の銀の落花となりにけり　ハードエッジ

切株の落花再び吹かれ行く　ハードエッジ

枯草の上の落花となりにけり　ハードエッジ

美しや落花に燃ゆる花篝（はなかがり）　ハードエッジ

身に余る落花を浴びてゐたりけり　ハードエッジ

 

 

代診（だいしん）の先生若し春の風邪（かぜ）　ハードエッジ

春の風邪：

病にも色あらば黄や春の風邪　高濱虚子（たかはま きょし）

こいびとを日がな眺（なが）めて春の風邪　池田澄子

よくもなくわるくもなくて春の風邪　下田實花（しもだ じっか）

雪の降る頃の薬を春の風邪　ハードエッジ

春の風邪チクッとしますよと言はれ　ハードエッジ

春の風邪おでこで熱をはからるゝ　ハードエッジ

 

腰伸ばし見るや周（まわ）りの潮干狩（しおひがり）　ハードエッジ

潮干狩：

人生は長からねども潮干狩　岸本尚毅（　　　なおき）

飛行機のちひさくひかり汐干狩　中嶋憲武（なかじま のりたけ）

潮干狩京成（けいせい）電車よい電車　小沢信男

燈台の影が日時計汐干狩　藤井亘（　　　　わたる）

母たのし汐干にあそぶ子を眺（なが）め　星野立子

 

 

夏

初夏のこれが一番白い服　ハードエッジ

これが：
素裸（すはだか）のこれが私のオリジナル　櫂未知子（かい　　　　　　）

これがその神田の生れよてふ祭　後藤比奈夫（　　ひなお）

天高しこれが社長のキャデラック　西村麒麟（　　　きりん）

こんなもの吊（つる）してこれが鳥威（とりおどし）　綾部仁喜（あやべ じんき）

五六本ころがりこれが鮭（さけ）の棒　細川加賀（　　かが）

幼子よ地に水氷るこれが冬　肥田埜勝美（ひだの かつみ）

雪を敷きこれが葡萄園（ぶどうえん）これが梨園（なしえん）　山口誓子（　　　せいし）

これがまあ終の栖（すみか）か雪五尺　小林一茶（　　　いっさ）

ずつしりとこれが熊（くま）撃（う）つ鉄砲ぞ　ハードエッジ

 

珈琲（コーヒー）に負けてはならじ柏餅（かしわもち）　ハードエッジ

負けて：
じゃんけんで負けて蛍（ほたる）に生まれたの　池田澄子

ずるずると負けて悲しき終戦日　ハードエッジ

一度負けてそれから老いし角力（すもう）かな　野村喜舟（　　　　きしゅう）

 

良薬（りょうやく）を黴（かび）の神より賜（たまわ）りぬ　ハードエッジ

賜りぬ：
大年の空そらいろを賜りぬ　鶴岡加苗

年の瀬に午後の日差を賜りぬ　ハードエッジ

初夢といふ年玉を賜りぬ　ハードエッジ

 

枕には頭の匂ひ芥子（けし）の花　ハードエッジ

枕：
寝返れば枕つめたき初音（はつね）かな　大塚凱（　　　　がい）

花散るや城を枕といふ言葉　岡本眸（　　　　　ひとみ）

避暑（ひしょ）の子や白き枕を一つづつ　岸本尚毅（　　　なおき）

蛞蝓（なめくじ）の化けて枕や梅雨（つゆ）長き　高橋睦郎（　　　むつお）

長き夜を重ね～し枕かな　高濱虚子（たかはま きょし）

赤まんま空地に捨ててある枕　秋元不死男（　　ふじお）

立冬（りっとう）や父の枕の重かりき　片山由美子

干布団（ほしぶとん）枕も添（そ）へてありにけり　ハードエッジ

 

海に降る夕立徒労（とろう）ではないか　ハードエッジ

参考句：
冷やかに海を薄めるまで降るか　櫂未知子

 

片蔭（かたかげ）を通用門へ廻（まわ）るなり　ハードエッジ

 

羽化（うか）の蝉（せみ）飛んで風化（ふうか）の蝉の穴　ハードエッジ

羽化：
春月や羽化のはじまる草の中　高柳克弘（たかやなぎ かつひろ）

羽化終へて蝶（ちょう）の不思議（ふしぎ）のなくなりぬ　ハードエッジ

羽化終へてこの世の色に油蝉（あぶらぜみ）　横井理恵

風化：
背中より風化始まるサングラス　櫂未知子（かい　　　　　　）

 

 

秋

秋の雲いわし雲とはまた別の　ハードエッジ

別の：
また別の濁（にご）りを加へ雪解川（ゆきげがわ）　山本一歩

浅蜊（あさり）の舌別の浅蜊の舌にさはり　小澤實（おざわ みのる）

また出会ふ別の花吹雪（はなふぶき）のなかで　箱森裕美

夕焼に別の赤子も泣きだせり　ハードエッジ

滝壷（たきつぼ）の音とは別の滝の音　後藤比奈夫（　　ひなお）

寒鴉（かんがらす）啼（な）いては別の鳥翔（た）たす　岡本眸（　　　　　ひとみ）

 

ちらかつて庭うつくしや野分（のわき）あと　ハードエッジ

散らかって：
猫の子の散らかつてゐるベッドかな　ハードエッジ

散らかつてゐても涼しき広さなり　ハードエッジ

ひらかなの散らかつてゐる歌留多会（かるたかい）　後藤立夫

 

宿の湯にかすかに運動会の楽（がく）　ハードエッジ

かすかに：
夕空のなほかすかにもさへづれる　岸本尚毅（　　　なおき）

水音のかすかにありて涼しさよ　稲畑汀子（いなはた ていこ）

夕焼や遠くかすかに救急車　深見けん二

田草取プールの音のかすかにす　桜井博道（　　　　はくどう）

鮎（あゆ）の腸（わた）かすかに灰の味したり　長谷川櫂（はせがわ かい）

渡り鳥かすかに見えて過ぎてゆく　星野立子

胡桃（くるみ）割るかすかに濡（ぬ）れていることも　対馬康子（つしま やすこ）

 

桃の夜（よ）に大きな種を吐（は）き出せり　ハードエッジ

桃の種：
白桃に入れし刃先の種を割る　橋本多佳子

白桃にくれなゐの種耕衣（こうい）亡（な）し　大木あまり

白桃の中に苦悩の種がある　ハードエッジ

 

 

葡萄酒（ぶどうしゅ）も買つて葡萄の旅終る　ハードエッジ

葡萄酒：
古葡萄酒聖夜をすごし又古ぶ　能村登四郎（のむら としろう）

 

 

飛ぶ鳥の日本を目指す夜長かな　ハードエッジ

飛ぶ鳥：
飛ぶ鳥の鋭（と）き嘴（くちばし）の囀（さえず）れり　ハードエッジ

飛ぶ鳥の体を抜けし木の実かな　ハードエッジ

飛ぶ鳥と地を行く鳥と浮寝鳥（うきねどり）　齋藤朝比古

 

 

冬

父母を我がものにして七五三　ハードエッジ

我がもの：
一行を書いて我がもの新日記　ハードエッジ

 

 

切り分けて尖（とが）るケーキやクリスマス　ハードエッジ

切り分け：
どこも夜水羊羹（みずようかん）を切り分ける　山口優夢（　　　ゆうむ）

 

 

新年

しんしんと年の始めのめでたさよ　ハードエッジ

しんしん：
しんしんと脱水の音月涼し　ハードエッジ

しんしんと寒さがたのし歩みゆく　星野立子

雪しんしん出湯（でゆ）こんこんと尽（つ）くるなし　松本たかし

 

初富士（はつふじ）をものの五分で通過して　ハードエッジ

通過：
火の色の特急通過駅氷る　ハードエッジ

 

歌留多（かるた）より大きく薄く年賀状　ハードエッジ

 

 

冬

ふる雪や未来は少しづつ過去に　ハードエッジ

過去未来：

生（なま）ビール過去も未来もほろ苦く　ハードエッジ

火を噴（ふ）くは過去か未来か山眠る　ハードエッジ

 

 

手袋で好きな絵本を撫（な）でてをる　ハードエッジ

撫で：
包丁を取りて打撫で桜鯛　松本たかし

行楽の日焼は撫でて消ゆるほど　山口誓子（　　　せいし）

激流（げきりゅう）を鮎（あゆ）の竿（さお）にて撫でてをり　阿波野青畝（あわの せいほ）

短日の車を撫でる羽箒（はねぼうき）　斉田仁（さいだ じん）

襟巻（えりまき）となりし狐（きつね）を撫でてやる　ハードエッジ

撫でて在る目のたま久し大旦（おおあした）　三橋敏雄（みつはし としお）

 

冬眠の黒き田螺（たにし）が泥の中　ハードエッジ

 

 

春を待つものの静けさ百花園（ひゃっかえん）　ハードエッジ

先行句：
待春の名札ばかりに百花園　中戸川朝人（なかとがわ ちょうじん）

 

春

秒針のひたひた廻（まわ）る大試験（だいしけん）　ハードエッジ

秒針：
涼しさや赤き秒針夜も廻る　ハードエッジ

身にしむや秒針進むとて跳（はね）る　菅裸馬（すが らば）

秒針の音なく進む原爆忌　赤尾恵以（あかお えい）

秒針のきざみて倦（う）まず文化の日　久保田万太郎

 

◎初案30句

文法エラー：「どうしよう」→「どうしやう」

 

 

 

◎推敲過程 データ

俳壇賞2020

 

 

◎推敲過程 プリントに手書き

俳壇賞2020

 

◎落選葉書一覧

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以上です