少しづつ書いてつらつら氷柱の夜
怖い夢見しや氷柱の曲りしは
へし折つて鬼の引きずる大氷柱
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
少しづつ書いてつらつら氷柱の夜
怖い夢見しや氷柱の曲りしは
へし折つて鬼の引きずる大氷柱
欄干は風の通ひ路掛大根
家々に掛大根の月夜かな
紅梅の蕾ほつほつ掛大根
秋風も秋風らしく秋なかば
アベベなく円谷もなし秋の風
秋風に心尽しの秋刀魚焼く
秋雨に草芽吹きたる更地かな
秋雨や線路は頭のみ光り
秋雨や小学生の五六人
上流は神々の山天の川
天の川古き時計の捨て所
モナリザの瞳の中の天の川
音もなく時は流れて流れ星
流星や破つて減らすカレンダー
夜なべする人の居眠り流れ星
けふは城あすは図書館松手入
松手入松の緑を滴らす
池に雨松の手入も済みたるよ
柿くへば鐘の正岡子規忌なり
柿食うて柿好き子規の忌を修す
死神を何の糸瓜と子規忌かな
火柱は秋刀魚の神の降臨か
秋風に心尽しの秋刀魚焼く
黒に焦げ琥珀に焼けて秋刀魚かな
草の花やがて草の実草の種
細道の人に踏まるな草の花
星ひとつ空を零るる草の花
三色に白粉花の赤白黄
おしろいの花も蕾も種も見ゆ
白粉花の蕾はみどり種は黒
コピーして赤はグレーに昭和の日 山田露結
畳まれてひたと吸ひつく屏風かな 長谷川櫂
湯豆腐や死後に褒められようと思ふ 藤田湘子
ランドセルに吊るす四月の定期券 清水良郎
麦秋のソースじやぶりとアジフライ 辻桃子
冬の水一枝の影も欺かず 中村草田男