春 【菜の花】 菜の花にあらざる花も黄なりけり

全然堂歳時記 春の部

【菜の花】なのはな

子季語:花菜はなな菜花なばな菜種なたねの花、油菜あぶらな
熟語:花菜風、花菜雨、花菜明り、菜の花月夜、花菜畑、花菜道、菜の花色
フレーズ:菜の花や、花菜咲く、菜の花の中、花菜かな
人気成分:(一両)電車!、安房、雨、月、山、海、岬、道、母、黄

 

◎葉書俳句

全然堂歳時記 春 【菜の花】

 

 

◎テキスト

菜の花の一尺いっしゃくにして花の数 ハードエッジ

一尺:
一尺の木に花さかる木槿むくげかな 正岡子規  しき

面白おもしろや一尺の木も櫨紅葉はぜもみじ 正岡子規

花の数:
年老いし椿大樹の花の数 高濱虚子たかはま きょし

椿の花の数の電球つけて一軒 阿部完市    かんいち

山茱萸さんしゅゆの花の数ほどしずくため 今井つる女

秋蝶あきちょうのふるる小さな花の数 ハードエッジ

コスモスの倒れ倒れし花の数 高野素十    すじゅう

水仙や胞衣ほういを出たる花の数 炭太祇たん たいぎ

臘梅ろうばいつぼみの数が花の数 倉田紘文    こうぶん

 

菜の花のあけがたの黄のつめたけれ ハードエッジ

冷たけれ:
春宵しゅんしょうの卵サンドの冷たけれ ハードエッジ

浜の砂まだ冷たけれ桜貝 中村汀女   ていじょ

洗ひ髪垂れし背筋の冷たけれ 品川鈴子

てのひらの花びらもちの冷たけれ 長谷川櫂はせがわ かい

 

 

菜の花に空は明るくなりにけり ハードエッジ

空と明:
明らみて一方暗し梅雨つゆの空 高濱虚子たかはま きょし

ゆふがたの空の明るき豆ごはん 金子敦    あつし

忘れゐし空の明るさ松手入まつていれ 稲畑汀子いなはた ていこ

初空や日の本くる櫻色さくらいろ 正岡子規  しき

 

 

菜の花は黄を着飾きかざりて日当りて ハードエッジ

日当り:
薄氷うすらいは日当る場所を得たりけり ハードエッジ

日当りてさびしかりけり捨雛すてひいな 山口青邨    せいそん

日当りて向ふへ長し鳴子縄なるこなわ 高野素十    すじゅう

桐一葉きりひとは日当りながら落ちにけり 高濱虚子たかはま きょし

冬ぬくし日当りよくて手狭てぜまくて 高濱虚子

日当れば火桶ひおけもいらず冬籠ふゆごもり 星野立子

日当りを風のいたぶる掛大根かけだいこ ハードエッジ

日当たりの良いところには良い枯葉 若杉朋哉わかすぎ ともや

 

 

花菜畑はななばたとは一面の花粉色かふんいろ ハードエッジ

「花」の音訓両読み、、、誤読を誘う?

一面:
いちめんの菜の花といふ明るさよ 行方克巳なめかた かつみ

いちめんのなのはな、、、と言えば、山村暮鳥    ぼちょう
  →村山暮鳥/青空文庫

 

 

菜の花にあらざる花も黄なりけり ハードエッジ

夏の花の「黄なりけり」:
向日葵ひまわり百人力ひゃくにんりきの黄なりけり 加藤静夫

 

 

菜の花に何のえにしか黄なるちょう ハードエッジ

秋ならば、
真黄なる蝶現れし秋たゞ中 高濱虚子たかはま きょし

 

 

菜の花に地べたの空気甘からむ ハードエッジ

地べた:
蒲公英たんぽぽに地べたの冷ゆるなりけり ハードエッジ

夕立にささくれ立ちし地べたかな ハードエッジ

石段のはじめは地べた秋祭 三橋敏雄

正月の地べたを使ふ遊びかな 茨木和生いばらき かずお

 

 

油屋のあるじらしきが花菜畑はななばた ハードエッジ

主の自作:
花篝はなかがり主の如く立てりけり ハードエッジ

わなわなと主を待てる蜥蜴とかげの尾 ハードエッジ

主とは一日のえにし紙懐炉かみかいろ ハードエッジ

忘年会のくつが主を待つてゐる ハードエッジ

明々と主を待てる初日記 ハードエッジ

 

 

小さき中洲なかすに花菜さかせてぎ出でな ハードエッジ

ひょうたん島でさえ、「波をじゃぶじゃぶかき分けて」なので、
中洲程度なら訳もなく、、、

漕ぎ出でな、と言えば、
熟田津にぎたづに舟乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな 額田王ぬかたのおおきみ
 ※熟田津=にきたつ、にきたづ 等もあり

漕ぎ出:
一幅いっぷくのふらここに乗り漕ぎ出でな ハードエッジ

えり挿しの漕ぎ出してすぐかすみけり 鷲谷七菜子

この良夜海にらむと漕ぎ出づる 佐野まもる

たま送る舟とやなほも漕ぎ出づる 木村蕪城

 

 

菜の花に桜の花に風が吹く ハードエッジ

風が吹く:
花盛り雨が降らねば風が吹く 中村史邦    ふみくに

何風といふか涼しき風が吹く 高野素十    すじゅう

生ぬるき風が吹くなり生麦酒なまビール ハードエッジ

旅先の夜店の中を風が吹く 猿橋統流子さるはし とうりゅうし

螢籠ほたるかご海べのからき風が吹き 友岡子郷    しきょう

蜘蛛くもに風が吹くなり薔薇ばらの垣 寺田寅彦    とらひこ

落ちてゐる早苗束さなえたばにも風が吹く 高野素十

秋風が吹くと申すぞ吹かねども 正岡子規  しき

風が吹く仏来給ふけはひあり 高濱虚子たかはま きょし

干大根日かげればすぐ風が吹く 大峯おおみねあきら

元旦や暗き空より風が吹く 青木月斗   げっと

 

 

菜の花がゆれて桜は大ゆれに ハードエッジ

大ゆれ:
大ゆれに梅雨つゆに入るなるやなぎかな 岸田稚魚   ちぎょ

枯木大揺れ煙突煙横倒し 高濱年尾たかはま としお

残る葉を散らしつ枯木大揺れに ハードエッジ

 

 

曇天どんてんに黄色ぶ厚く花菜畑はななばた ハードエッジ

参考句:
菜の花の黄が曇天を押し返す 望月末夫

分厚の自作:
啓蟄けいちつや分厚く硬くびんの底 ハードエッジ

チョコレートの分厚き五月きたりけり ハードエッジ

立冬や分厚く甘く卵焼 ハードエッジ

藁屋根わらやねごとく分厚く雪積もる ハードエッジ

欠伸あくびして手袋の手の分厚さよ ハードエッジ

山茶花さざんかが散つて分厚き氷かな ハードエッジ

 

 

明るしや花菜畑はななばたけもその雨も ハードエッジ

参考句:
菜の花に明るき雨となりゆけり 高村令子

明るしや:
花の雨竹のはやしのあかるしや 久保田万太郎

木に草に雨明るしや蝸牛かたつむり 長谷川櫂はせがわ かい

 

 

菜の花の中に朽ちゆく戦闘機 ハードエッジ

朽ちゆく自作:
古寺の朽ち行くままにさえずれり ハードエッジ

若草や川に朽ちゆく杭の列 ハードエッジ

鳥籠とりかごの庭に朽ちゆく虫の声 ハードエッジ

 

 

菜の花の花を終へたる薄みどり ハードエッジ

菜の花のうすみどり:
菜の花や阿吽あうんこけもうすみどり 安東次男

うすみどりの名句:
こときれてなほ邯鄲かんたんのうすみどり 富安風生とみやす ふうせい

 

 

◎推敲過程/テキスト

全然堂歳時記 春 【菜の花】

 

 

◎推敲過程/葉書書き込み画像

4月以降にアップ予定

以上です