春 【雛祭】 新聞も三月三日ひなまつり

全然堂歳時記 春の部

【雛祭】ひなまつり

子季語:雛飾る、雛人形、雛壇、雛段、官女雛、五人囃子、雛道具、雛調度、内裏雛、古雛、初雛、雛の燭、雛の宴、雛の宿、雛の客

 

◎葉書俳句

 

 

◎テキスト

早う雛飾ひなかざれといふにうちはうち ハードエッジ

 

紐解ひもといて蓋開ふたあけて雛飾りけり ハードエッジ

紐解いて:
紐解いて洗ふズックや鳥雲とりくもに 広渡敬雄ひろわたり たかお

紐解いて枝ひろがるや桃の花 長谷川櫂はせがわ かい

蓋開け:
蓋あけし如く極暑ごくしょきたりけり 星野立子

いろいろの蓋あいてゐるキャンプかな 齋藤朝比古さいとう あさひこ

蓋あけて月の光のオルゴール ハードエッジ

鉄の蓋開ければ蛇口じゃぐちななかまど 上田信治

蓋開けしままにこごえる戦車かな 二村典子

火事跡に蓋開いてゐる魔法瓶まほうびん 林昭太郎

蓋あけて宝づくしの雑煮椀ぞうにわん 能村登四郎のむら としろう

 

 

雛壇ひなだん急勾配きゅうこうばいと思ひつつ ハードエッジ

参考句:
雛壇のすそすわりてあおぎけり 松藤夏山まつふじ かざん

勾配:
裏口は土手の勾配ゑのこぐさ 岡本眸    ひとみ

 

 

母と娘のとりでごとし雛飾る ハードエッジ

砦:
山国は山を砦に冬を待つ 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

新聞も三月三日ひなまつり ハードエッジ

新聞:
新聞をこのごろ読まずとう寝椅子ねいす ハードエッジ

新聞を大きくひらき葡萄ぶどう食ふ 石田波郷    はきょう

ヴェランダの古新聞に雪つもる 行方克巳なめかた かつみ

冬河に新聞全紙しんぶんぜんしひたり浮く 山口誓子   せいし

ねころんで新聞を見る炬燵哉こたつかな 寺田寅彦    とらひこ

新聞を門で受け取る初日哉 正岡子規  しき

新聞紙すつくと立ちて飛ぶ場末 三橋敏雄

 

 

ほほゑみにれて冷たきひいなかな ハードエッジ

微笑み:
苗札なえふだにへちまと書きてほほゑみぬ 鈴木鷹夫

お雛さま永久とわはさびしと微笑みぬ 中塚健太

微笑んで放下ほうげの時を待つ熟柿じゅくし ハードエッジ

鮟鱇あんこうのこのほほゑみの顔を見よ 今井杏太郎    きょうたろう

 

 

雛道具ひなどうぐ時の流れの忘れもの ハードエッジ

忘れ物:
こんなにも春雨傘はるさめがさの忘れ物 ハードエッジ

忘れ物出てきたやうに雪解村ゆきげむら 阿部静雄

あくる日の忘れ物めく螢籠ほたるかご 片山由美子

あかあかと屏風びょうぶすその忘れもの 波多野爽波はたの そうは

忘れ物持たされてゐる雪だるま 金子敦    あつし

 

 

雛の灯に子の宝物たからものありつたけ ハードエッジ

宝物:
行く春や土に隠せば宝物 山田露結   ろけつ

山寺の宝物ほうもつ見るや花の雨 高濱虚子たかはま きょし

昼寝せり宝物館の床下に 右城暮石うしろ ぼせき

ちまきそなふ宝物館のよろいにも 品川鈴子

ありたけ:
牧開くとて持ち馬のありつたけ 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

ゴールデンウィークありつたけのアクセサリー 西山ゆりこ

ありつたけれてやるてふ夕立ゆだちかな ハードエッジ

ありたけのうつわ並べて水遊び 高澤良一たかざわ よしかず

ありたけのをふるひ出す芒哉すすきかな 小林一茶   いっさ

ありつたけ凧糸たこいと伸べて後顧こうこなし 内藤吐天   とてん

ぜいたくのありたけつくす春著はるぎかな 久保田万太郎

 

 

着飾りて小さな人のひな祭 ハードエッジ

着飾る自作:
菜の花は黄を着飾りて日当りて ハードエッジ

七五三着飾るに良き寒さなり ハードエッジ

着飾りて詩歌しいかの国の歌留多会かるたかい ハードエッジ

 

 

ひとり子のひとり歌ふやひいなの灯 ハードエッジ

雛の灯:
雛の灯や母の名一字もらひし子 岬雪夫

日をてはおこたる雛のともしかな 軽部烏頭子かるべ うとうし

 

男の子ひいなの家にきたりけり ハードエッジ

雛の家:
草の戸も住み替る代ぞひなの家 松尾芭蕉    ばしょう

一寸ちょっとゐてもう夕方や雛の家 岸本尚毅   なおき

 

 

年玉で買ひしトランプひな祭 ハードエッジ

年玉:
年玉を妻に包まうかと思ふ 後藤比奈夫  ひなお

山寺や高々つみてお年玉 飯田蛇笏   だこつ

年玉のまこと品よく小さなる 星野立子

年玉や上の一字を筆はじめ 正岡子規  しき

明けましてお年玉付年賀状 ハードエッジ

初夢といふ年玉をたまわりぬ ハードエッジ

 

 

背が伸びて細き手足や雛祭 ハードエッジ

手足:
天瓜粉てんかふんつかまんとする手足 西村和子

浴衣ゆかた着て手足あらはのゆふべかな 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

菖蒲湯しょうぶゆに長き手足を伸ばすなり ハードエッジ

帰省子きせいしほうりりだしたる手足かな 黛執まゆずみ しゅう

運動会ゴールの手足はたはたと ハードエッジ

蟷螂とうろうの手足の向きのばらばらよ 岩田由美

湯ざめして手足の固くなりにけり ハードエッジ

 

こまやかにきざんで雛にたてまつる ハードエッジ

奉る:
一神事五月の風を奉る 高木石子   せきし

温泉の神にをたてまつるはだかかな 飯田蛇笏   だこつ

御沙汰おさたあり大筍おおたけのこを奉る 高野素十    すじゅう

新涼しんりょうや仏にともし奉る 高濱虚子たかはま きょし

糸瓜忌へちまきに糸瓜の水を奉る ハードエッジ

柿の木のたわわを月に奉る ハードエッジ

御仏みほとけに春待つ花を奉る ハードエッジ

仏にも寒九かんくの水をたてまつる 森澄雄

行く年に大き焚火たきびを奉る ハードエッジ

玉川の新玉あらたまの水奉る ハードエッジ

山の神にうたたてまつれ手毬てまりの子 木村蕪城    ぶじょう

 

雛壇は赤くプリンは黄色なり ハードエッジ

プリン:
豊年やプリンの頭焦茶色こげちゃいろ ハードエッジ

 

湯あがりの子らがほかほか雛まつり ハードエッジ

湯上りの四季:
湯上がりの我はももいろ桃咲く頃 池田澄子

湯上りの庭下駄にわげた軽し夏の月 芥川龍之介あくたがわ りゅうのすけ

湯上りに夕立を見る裸かな 正岡子規  しき

湯上りの尻にべつたり菖蒲哉しょうぶかな 小林一茶   いっさ

手花火の子や湯あがりの髪ぬれて 西島麦南    ばくなん

湯上りのふぐり軽しや秋の風 今井杏太郎   きょうたろう

湯上りの指やはらかし足袋たびのなか 桂信子

の香して湯上りのはやへりけり 森澄雄

湯上りの爪立ててむく蜜柑みかんかな 西村和子

湯上り自作:
湯上りの子らでにぎわふ橋涼み ハードエッジ

湯上りの人の匂へる橋涼み ハードエッジ

湯あがりの赤子ひやすな流れ星 ハードエッジ

湯上りの蜜柑みかん忘るな柚子ゆず買うて ハードエッジ

 

 

高階こうかいに月のし入るひいなかな ハードエッジ

高階:
さえずるや市立図書館高階に ハードエッジ

高階に髪洗ひをり町に雨 岡本眸    ひとみ

夜濯よすすぎの水高階を下り行く ハードエッジ

 

ひなの間のひとひと夜の桃の花 ハードエッジ

一夜一夜:
明け易き一夜一夜の茄子漬なすびづけ 鈴木花蓑    はなみの

鹿のこえ一夜一夜に秋深し 正岡子規  しき

ぬくめ酒一夜一夜と親しめり 高木晴子

月育つ一夜一夜の虫時雨むししぐれ 深見けん二

 

 

◎推敲過程

全然堂歳時記 春 【雛祭】

 

 

以上です