春 【雛祭3】 ケーキあり紅茶も淹れて雛飾ろ

全然堂歳時記 春の部
【雛祭3】ひなまつり

全然堂歳時記=現在、本号を含め74記事=春夏秋冬–年末年始=25-9-17-16–3-4
/2023.3.3

子季語:雛飾る、雛人形、雛調度、雛道具、雛屏風、雛壇、紙雛、立雛、内裏雛、享保雛、官女雛、五人囃、初雛、古雛、雛の燭、雛の宴、雛の宿、雛の家、雛の客など

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◎葉書俳句

◎テキスト

ケーキあり紅茶もれて雛飾ろ ハードエッジ

当方のデータベースに、
「雛飾(かざ)」は126句
内訳は、
「雛飾る(かざる)」は98句
「雛飾り(かざり)」は23句
「雛飾ら(かざら)」は3句
「雛飾」は2句
つまり、
「雛飾ろ」は本邦初?
「る」と「ろ」は似ているので、
さらっと、読めば「雛飾る」
よくよく見ると「雛飾ろ」という仕掛け俳句
とはいえ、
普通は飾り終えてから一服するのでは?
という反論も考えられるが、、、却下
なお、もう一句、先例の無き「雛飾れ」俳句を宣伝

早う雛飾れといふにうちはうち ハードエッジ

淹れ:
花咲けば花に茶を淹れ老夫婦 遠藤梧逸
婿殿の淹れてくださる新茶かな 高田正子
彼一語我一語新茶淹れながら 高濱虚子
しぐるゝや羊羹切つて茶を淹れる 吉屋信子

色紙いろがみで折り色紙しきしにもき雛飾る ハードエッジ

言葉遊び:
参考サイト:同じ漢字(熟語)なのに違う読み方がある言葉一覧 232種類

色紙:
苗代や短冊形と色紙形 正岡子規
茶の間にも桃の色紙や雛の宿 高橋淡路女
五月雨や色紙へぎたる壁の跡 松尾芭蕉
墨すつてをり七夕の色紙あり 星野立子
まだ書かぬ七夕色紙重ねあり 高濱虚子
色紙で作る鎖や星祭 ハードエッジ
色紙は折られて花に雪の夜 長谷川櫂

毛氈もうせんはおひさまの色おひなさま ハードエッジ

同じく言葉遊び

おひさま:
お日さまが遠くに消えてお月さま ハードエッジ
北風やお日さまといふよきことば 行方克巳

雛壇ひなだんに金の屏風びょうぶの赤々と ハードエッジ

赤々:
赤々と落命の落椿かな ハードエッジ
赤々と線香花火の蕾かな ハードエッジ
赤々と金魚の夢は何ならむ ハードエッジ
南無秋の彼岸の入日赤々と 宮部寸七翁
赤々と月の出を待つ夕焼かな ハードエッジ
夜業終へ福神漬の赤々と 山口昭男
赤々と日暮の空の寒さかな ハードエッジ
大寒や蟹の鋏の赤々と ハードエッジ
火の中にみな赤々と焚火かな ハードエッジ
黒々と山赤々と初日の出 大串若竹

享保雛きょうほびな天井てんじょうの灯をいぶかしむ ハードエッジ

訝しむ:
鳴く虫の緑なること訝しむ ハードエッジ

就中なかんずくひいなの部屋の春燈はるともし ハードエッジ

就中:
なかんづく切腹の間の涼しさよ 鷹羽狩行
就中竹藪の揺れ青嵐 ハードエッジ
就中学窓の灯や露の中 飯田蛇笏
なかんづく鷹匠町の松手入れ 鷹羽狩行
遺品寒々なかんづく借用書 鷹羽狩行
なかんづく果樹園の錠冬ざるる 鷹羽狩行
なかんづく髪に鳴る鈴七五三 ハードエッジ
なかんづく祖父のほとりの淑気かな 鷹羽狩行

雛壇ひなだんの前に広げしおままごと ハードエッジ

ままごと:
ままごとの飯もおさいも土筆かな 星野立子
ままごとや今日は桜の花の下 ハードエッジ
まゝごとの姉妹の静か菊日和 石井とし夫
ままごとにかあさんがゐて草の花 福神規子
ままごとのお金はもみぢ兄いもと 井本農一
ままごとの茣蓙そのままに霜に明く 永井龍男
まゝごとの木の葉の皿が反る日和 吉屋信子
何度でも切られてままごとの人参 西生ゆかり

着飾りてエプロン白く雛料理 ハードエッジ

エプロン:
胡瓜もむエプロン白き妻の幸 西島麦南
エプロンは冬の水仕に濡れやすき 波多野爽波

ひとり子の母と飾りし雛祭 ハードエッジ

ひとり子:
ひとり子のひとりあそびの凧やぶれ 成瀬正俊
ひとり子のひとり歌ふや雛の灯 ハードエッジ

雛様に珈琲コーヒー苦し我が飲む ハードエッジ

寒山かんざん拾得じっとくよ雛祭 ハードエッジ

寒山拾得:
寒山の鼻拾得の耳夕焼ける 石寒太
寒山か拾得か蚊にされしは 夏目漱石
拾得は焚き寒山は掃く落葉 芥川龍之介
捨焚火寒山拾得来て育て 河野静雲
寒山と拾得とよるおちば掻 森川許六

長靴ながぐつ泥濘でいねいし雛の客 ハードエッジ

泥濘:
寺までの泥濘つづく花の雨 ハードエッジ
涅槃寺までの泥濘地獄かな 池田秀水
泥濘に落ち安らぎの椿かな 鷹羽狩行
泥濘に飛石二つ落椿 西山泊雲
泥濘の凍てゝかたさや蹄あと 西山泊雲
泥濘を掴み上げたる鶴の足 小澤佳世子
泥濘や雪折笹を踏みしだき 鈴木花蓑
泥濘に児を負ひ除隊兵その妻 伊丹三樹彦

雛壇ひなだんに背を向けてる写真かな ハードエッジ

背を向け:
金魚掬うどの子も親に背を向けて 十亀わら
秋晴に背を向け家事にいそしむ日 山田弘子
ある時は背を向けたる日向ぼこ ハードエッジ

雛の夜に赤く大きな金目鯛きんめだい ハードエッジ

赤く大きな:
腹当や赤く大きな紋所 高濱虚子

雛の間のしょくが倒れて恐ろしや ハードエッジ

倒れて:
うつぶせに倒れて春を愉しまむ 中尾寿美子
滝という川の倒れているところ 丸田洋渡
倒れても首振つてゐる扇風機 北大路翼
丈をなす草は倒れて秋の雨 五十嵐播水
倒れては遠逃げすなり木の実独楽 皆吉爽雨
縁側にどうと倒れて日向ぼこ 京極杞陽
蟷螂の横に倒れて死にゐたり 原石鼎
はるかまで倒れて蘆の枯れすすむ 日原傳

この雛を共に飾りし昔かな ハードエッジ

昔かな:
うららかにきのふはとほきむかしかな 久保田万太郎
遅き日のつもりて遠きむかしかな 与謝蕪村
亀鳴いて浦島翁の昔かな ハードエッジ
桜貝拾ひしことも昔かな 高濱年尾
リラ咲くと書きなつかしき昔かな 星野立子
粽結ふ母も柱もむかしかな 宮下白泉
何もかも線香花火の昔かな 岡本眸
夜なべすと灯の芯切りし昔かな 細見綾子
菊の香のつんと神代の昔かな ハードエッジ
白息のあたたかかりし昔かな 今井杏太郎
初髪に桃割れありし昔かな ハードエッジ

雛飾る人の老いゆく不思議かな ハードエッジ

老いゆく:
あらあらと母の老いゆく春の雪 ハードエッジ
老いゆくは淋しきものよ雛祭 高濱年尾
老いゆくは吾のみならず飛花落花 菖蒲あや
老いゆくを知れとて長き夜はあるか 大野林火
八月の思ひうすれて老いゆくか 川崎展宏
敗戦日生きて老いゆく私たち 池田澄子
老いゆくや吐く息白きときのまも 西島麦南
厚目貼母ひたすらに老いゆくか 橋本榮治
老いゆくをさぶしむ歌の賀状かな 下村梅子

雛壇ひなだんめし階段状の闇 ハードエッジ

秘めし:
針箱や日輪秘めし花の種 有馬朗人
一輪の牡丹の秘めし信かな 久保田万太郎
純白を秘めし白粉花の種 ハードエッジ

頭だけ替へる剃刀かみそり雛の夜 ハードエッジ

剃刀:
研ぎ上げし剃刀にほふ花ぐもり 日野草城
剃刀を頬に滑らせ雲の峰 ハードエッジ
髪剃や一夜に錆びて五月雨 野澤凡兆
剃刀は香水瓶のすぐそこに ハードエッジ
剃刀に蠅来て止まる情事かな 寺山修司
髭のびて剃刀さびぬ秋のくれ 正岡子規
秋風や剃刀に鳴く鞣し皮 横澤放川
剃刀をさつとあてられ今日の月 川崎展宏
剃刀のその切れ味の桂郎忌 川崎展宏
剃刀の髪が湯に散る遠木枯 鈴木鷹夫

街も家も雛も一夜の焼夷弾しょういだん ハードエッジ

東京大空襲/Wikipedia
1945年(昭和20年)3月10日
焼夷弾を使った無差別攻撃
死者は女子供、幼児、赤ん坊を含む10万人以上

◎推敲過程/テキスト/pdf

全2枚/102句

全然堂歳時記 春 【雛祭3】テキスト推敲

◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

葉書全7枚/A4-2枚

全然堂歳時記 春 【雛祭3】葉書推敲

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

◎雛祭秀句

時-神仏-生死-天候-色-家族-身体-動植物など、
独自の[切口順]配列
漢字コード順、評価順等の他に、
このような並べ替えで読み込んでゆきます

春のほか知らぬ雛を飾りけり 鶴田玲子
雛飾りつつふと命惜しきかな 星野立子
飾られて眠らぬ雛となり給ふ 五所平之助
お雛さま永久はさびしと微笑みぬ 中塚健太
笑ふかに泣くかに雛の美しく 上野泰

ことごとくまことをうつし雛調度 本田あふひ
婚の荷をひろげるやうに雛飾る 猪俣千代子
打ちかけの碁盤やそれも雛のもの 片山由美子
飾るより留守をあづける雛となる 稲畑汀子
皆老いて雛の客とも思はれず 高木晴子

老いてこそなほなつかしや雛飾る 及川貞
女の子坐つて泣けり雛の前 加藤三七子
脇差の金銀光る男雛かな 押野裕
天井にとどけ雛の高御座 高濱虚子
一寸ゐてもう夕方や雛の家 岸本尚毅

雛壇に美しかりし夕日かな 星野立子
灯してうき立ち見ゆるひひなかな 星野立子
影といふものの色めき雛飾る 村田脩
夜を籠めて降りて雪晴雛飾る 後藤夜半
雛の間を大河の如く渡りけり 小池康生

雛守りて硝子ケースも古びけり すずきみのる
金褪せず色褪せにけり古雛 大橋敦子
鮭赤きことも嬉しく雛の宵 岸本尚毅
仕る手に笛もなし古雛 松本たかし
古雛の唇と笛とのあはひかな 奥坂まや

童唄母がうたひて雛飾る 福田蓼汀
雛の間につながつてゐる糸電話 金子敦
雛の間に古きアルバム持ちこみぬ 金子敦
雛祭り古き写真の吾と誰か 松井直子
雛かざる母に少しの国訛り 青木栄子

雛の灯や母の名一字もらひし子 岬雪夫
老妻の飾りし雛を見てやりぬ 富安風生
東西に嫁して姉妹や雛飾る 石昌子
世に古りてなほ娘なる雛祭 日野草城
闇のなか髪ふり乱す雛もあれ 桂信子

黒髪の重さを知らず紙雛 伊藤宇太子
白髪を許されずをる雛かな 大木あまり
かんばせのひびのかなしき雛かな 野村喜舟
たらちねの抓までありや雛の鼻 与謝蕪村
おん口のゝ(ちょん)と小さゝよ婢子雛 富安風生

ほほといふ口して三人官女かな 高田正子
ひざまづき飾る高さに官女雛 片山由美子
雛過ぎし畑の桃となりにけり 富安風生
雛の日の郵便局の桃の花 深見けん二
裏店やたんすの上の雛祭り 高井几董

雛壇に小さき箒ちりとりと 高田正子
歪まざるものなき雛の鏡かな 山西雅子
二人して雛にかしづく楽しさよ 夏目漱石
三人の下に五人や雛飾る 岸本尚毅
何もなきところ見てをる雛かな 奥坂まや

草の戸も住み替る代ぞ雛の家 松尾芭蕉
美しきぬるき炬燵や雛の間 高濱虚子
とりあへず雛の前に坐りけり 岩淵喜代子
置かれては少しずらされ雛飾る 鈴木総史
雛の日とてリボンつけたる女猫哉 久宝

厨房に貝が歩くよ雛祭 秋元不死男
春のほか知らぬ雛を飾りけり 鶴田玲子
一寸ゐてもう夕方や雛の家 岸本尚毅
雛壇に美しかりし夕日かな 星野立子
草の戸も住み替る代ぞ雛の家 松尾芭蕉

雛飾りつつふと命惜しきかな 星野立子
飾られて眠らぬ雛となり給ふ 五所平之助
お雛さま永久はさびしと微笑みぬ 中塚健太
笑ふかに泣くかに雛の美しく 上野泰
ほほといふ口して三人官女かな 高田正子

ことごとくまことをうつし雛調度 本田あふひ
婚の荷をひろげるやうに雛飾る 猪俣千代子
打ちかけの碁盤やそれも雛のもの 片山由美子
飾るより留守をあづける雛となる 稲畑汀子
皆老いて雛の客とも思はれず 高木晴子

老いてこそなほなつかしや雛飾る 及川貞
女の子坐つて泣けり雛の前 加藤三七子
脇差の金銀光る男雛かな 押野裕
天井にとどけ雛の高御座 高濱虚子
灯してうき立ち見ゆるひひなかな 星野立子

影といふものの色めき雛飾る 村田脩
歪まざるものなき雛の鏡かな 山西雅子
夜を籠めて降りて雪晴雛飾る 後藤夜半
雛の間を大河の如く渡りけり 小池康生
雛守りて硝子ケースも古びけり すずきみのる

金褪せず色褪せにけり古雛 大橋敦子
鮭赤きことも嬉しく雛の宵 岸本尚毅
仕る手に笛もなし古雛 松本たかし
古雛の唇と笛とのあはひかな 奥坂まや
童唄母がうたひて雛飾る 福田蓼汀

雛の間につながつてゐる糸電話 金子敦
雛の間に古きアルバム持ちこみぬ 金子敦
雛祭り古き写真の吾と誰か 松井直子
雛かざる母に少しの国訛り 青木栄子
雛の灯や母の名一字もらひし子 岬雪夫

老妻の飾りし雛を見てやりぬ 富安風生
東西に嫁して姉妹や雛飾る 石昌子
世に古りてなほ娘なる雛祭 日野草城
闇のなか髪ふり乱す雛もあれ 桂信子
黒髪の重さを知らず紙雛 伊藤宇太子

白髪を許されずをる雛かな 大木あまり
かんばせのひびのかなしき雛かな 野村喜舟
たらちねの抓までありや雛の鼻 与謝蕪村
おん口のゝ(ちょん)と小さゝよ婢子雛 富安風生
ひざまづき飾る高さに官女雛 片山由美子

雛過ぎし畑の桃となりにけり 富安風生
雛の日の郵便局の桃の花 深見けん二
裏店やたんすの上の雛祭り 高井几董
雛壇に小さき箒ちりとりと 高田正子
二人して雛にかしづく楽しさよ 夏目漱石

三人の下に五人や雛飾る 岸本尚毅
何もなきところ見てをる雛かな 奥坂まや
美しきぬるき炬燵や雛の間 高濱虚子
とりあへず雛の前に坐りけり 岩淵喜代子
置かれては少しずらされ雛飾る 鈴木総史

雛の日とてリボンつけたる女猫哉 久宝
厨房に貝が歩くよ雛祭 秋元不死男

◎未練句/補遺

思ひ出の次から次へ雛飾る ハードエッジ
雛壇に沈みし月の大いなる ハードエッジ
雛壇のうしろに月を沈めたる ハードエッジ
爪楊枝よりも短し雛の笛 ハードエッジ
雛壇に小さき写真飾りある ハードエッジ

大奥に飾りしといふ古雛 ハードエッジ
姉妹やも三人官女相似たり ハードエッジ
白髪のポニーテールや雛の家 ハードエッジ
雛調度プラスチックはなかりけり ハードエッジ
子猫より小さな雛を飾りけり ハードエッジ

雛壇の隣りに泳ぐ金魚かな ハードエッジ

前奏の長くうれしいひなまつり ハードエッジ
雛壇に名もなく並ぶ寂しさよ ハードエッジ
弟のゴジラも侍る雛の灯 ハードエッジ
座布団の猫を退かせて雛の客 ハードエッジ

以上です