来ることの嬉しき燕来たりけり 石田郷子
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男
草刈の籠の目を洩る桔梗かな 夏目漱石
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
来ることの嬉しき燕来たりけり 石田郷子
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男
草刈の籠の目を洩る桔梗かな 夏目漱石
菫束ぬ寄りあひ易き花にして 中村草田男
ガラス戸の遠き夜火事に触れにけり 村上鞆彦
如月や身を切る風に身を切らせ 鈴木真砂女
生産地シールはピンク春キャベツ ハードエッジ
白狐もとより踊上手なり ハードエッジ
まだ馴れぬこの世の寒さ乳を欲る 鷹羽狩行
夫かなしくすし通ひに日焼して 岡本眸
秋の暮大魚の骨を海が引く 西東三鬼
賀状書くわが旧姓のおとうとへ 内田美紗
何事も無かつたやうに花は葉に ハードエッジ
栗飯のまつたき栗にめぐりあふ 日野草城
嚔して驚いてゐる赤ん坊 ハードエッジ
開きたるままの画集や蝶の昼 ハードエッジ
サラリーマンあと十年か更衣 小川軽舟
現れて消えて祭の何やかや 岸本尚毅
掌にのせて子猫の品定め 富安風生
老人の跣の指のまばらかな 阿波野青畝
味噌汁におとすいやしさ寒卵 草間時彦
東京タワー海より見ゆる夏料理 ハードエッジ
牡蠣すするわが塩味もこれくらゐ 正木ゆう子
灯の鋲の東京タワー年の暮 鷹羽狩行
歯に当ててぱりりと音や桜餅 ハードエッジ
月涼し地球の影を映しては 内田美紗
雪に咲く白き椿の金の蕊 ハードエッジ
如月や貝の中なる貝の肉 ハードエッジ
かせぎ居り春の歌舞伎座たのしみに 伊藤たか子
線路まで伸びて夜なべの灯なりけり 菖蒲あや
苗代に落ち一塊の畦の土 高野素十
貰ひ来る茶碗の中の金魚かな 内藤鳴雪
もの置けばそこに生れぬ秋の蔭 高濱虚子
凧揚げて歌ふ雲雀を驚かす ハードエッジ
原つぱも喇叭も消えて秋の暮 ハードエッジ
ふはふはの粉雪のごとき毛布かな ハードエッジ
一粒の青き地球の露けしや ハードエッジ
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
また一つ風の中より除夜の鐘 岸本尚毅
四万六千日の暑さとはなりにけり 久保田万太郎
日当りて向ふへ長し鳴子縄 高野素十
雪催ふ琴になる木となれぬ木と 神尾久美子
徂く春に何も持たせてやれぬこと 中原道夫
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな 松尾芭蕉
数へ日の三時は日向四時の影 永井龍男
自転車の妻に驚く鰯雲 斎藤夏風
初雪の驚き消ゆる水面かな ハードエッジ
斧入れて香に驚くや冬木立 与謝蕪村
麦秋の乳房悔なく萎びたり 橋閒石
萎みたる胡瓜の花の茶色かな ハードエッジ
芋二つしなびて冬の空があり 岸本尚毅
城攻めの騒ぎよ蓮の葉も花も 鷹羽狩行
萩の風何か急かるる何ならむ 水原秋櫻子
ふる雨や浮寝の鳥を水輪攻め ハードエッジ
遊船を連絡船が抜いてゆく 中本真人
猫じやらしすくすく抜けて楽しいぞ ハードエッジ
薬塗るやうに冬日を背に当つる 岡本眸
城若葉ホテルは濠を隔てたる ハードエッジ
郭公や母と谺をへだて住む 今瀬剛一
人減りし村に氷柱の数減らず 高木嘉久
風生と死の話して涼しさよ 高濱虚子
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實
朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ 日野草城
寒夕焼終れりすべて終りしごと 細見綾子
もてあそぶ火のうつくしき時雨かな 日野草城
戀の字の糸のもつるる試筆かな 鷹羽狩行
獅子舞や蝶もつれあふごとくにも 長谷川櫂
美しき冷えをうぐひす餅といふ 岡本眸
美しき水の一村つばくらめ ハードエッジ
美しきものにも汗の引くおもひ 後藤比奈夫
給油所の流し水吸ふ黒揚羽 村川節子
寸酌を「給油」と呼びし不死男の忌 鷹羽狩行
どしや降りの寂しさ海中油田の火 伊藤淳子
鯉の色水輪ににじむ花の雨 長谷川櫂
牡丹を大きな水輪かと思ふ 田中裕明
朝顔は水輪のごとし次ぎ次ぎに 渡辺水巴
白シャツを脱いで真黒日焼の子 ハードエッジ
熱く白く飯炊き上げぬ日焼子に 櫛原希伊子
日焼子のしづかに寺の書道塾 日向亮司