ペアリング3 緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的 竹下しづの女

追記:桜貝・遅るる母・恋敵/2018.10.5、小変/2018.8.29、1句追加/2017.11.21

ペアリング3

好対照の俳句です
お楽しみください

◎幸運

春暁のダイヤモンドでも落ちてをらぬか  波多野爽波(そうは)
  ※春暁=しゅんぎょう

別嬪の降つて来さうなゆだちかな  加藤郁乎(いくや)
  ※別嬪=べっぴん

 

 

◎初恋

石鹸玉吾子にも恋の敵ゐる  田中裕明
  ※石鹸玉=しゃぼんだま、吾子=あこ、敵=かたき

鬼灯の花やをさなにおもひびと  森澄雄
  ※鬼灯=ほおずき

かまくらの中のをさなき恋敵  後藤立夫

 

 

◎未使用

大空の端は使はず揚雲雀  岩淵喜代子
  ※揚雲雀=あげひばり

流星の使ひきれざる空の丈  鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)
  ※丈=たけ

 

 

◎幻想列車

五月闇汽罐車一台ゆくごとし  山口誓子(せいし)
  ※汽罐車=きかんしゃ

露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな  攝津幸彦(せっつ・)
  ※露地裏=ろじうら

 

 

◎待機

緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的  竹下しづの女
  ※緑蔭=りょくいん、獲て=えて、的=まと

緑陰や物書く人に紙白し  岸本尚毅(なおき)

新涼の靴音を待つ石畳  西村和子
  ※新涼=しんりょう、靴音=くつおと、石畳=いしだたみ

 

 

◎遅延安楽

子の足に遅るる母のあたたかし  阿部みどり女

泉への道後れゆく安けさよ   石田波郷(はきょう)

子に遅れ歩む楽しさ夏帽子   西村和子

 

 

◎死と涼

風生と死の話して涼しさよ  高濱虚子
  ※風生=ふうせい=富安風生/俳人

虚子もなし風生もなし涼しさよ  小澤實

 

 

◎完了

朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ  日野草城(そうじょう)
  ※遂げし=とげし

あきらめし如く鳴かなくなりし虫  西村和子

寒夕焼終れりすべて終りしごと  細見綾子
  ※寒夕焼=かんゆやけ

 

 

◎夫の墓

夫の墓濡れつつあらん春の雪  今井つる女

今頃は桜吹雪の夫の墓  飯島晴子
  ※夫=つま

夫の墓ほたるの墓となりて燃ゆ  中嶋秀子

 

 

◎消滅

幾度も都は滅ぶ春の月  大穂照久
  ※幾度=いくたび、滅ぶ=ほろぶ
  /週刊俳句、2012-11-04

戰艦も空母も消えて櫻貝  ハードエッジ

雲の峰いくつ崩れて月の山  松尾芭蕉(ばしょう)
  ※崩れて=くずれて

大寺のいくつほろびし日向ぼこ  小澤實
  ※日向ぼこ=ひなたぼこ

 

 

◎まとめの3句

緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的  竹下しづの女

露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな  攝津幸彦

朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ  日野草城

 

以上です
お読み頂きありがとうございました