ペア96 日のありしところに月や山ざくら 鷹羽狩行

追記:桜鯛/2022.5.8

ペア96

◎春の先生

啓蟄けいちつや教へ子どもにまつはられ 富安風生とみやす ふうせい
遠足の女教師の手にれたがる 山口誓子   せいし

◎山なき

春の水山なき国を流れけり 与謝蕪村よさ ぶそん
ベルギーは山なき国やチューリップ 高濱虚子たかはま きょし
武蔵下総むさししもふさ山なき国の小春こはるかな 夏目漱石なつめ そうせき

◎籠の目

春水や蛇籠じゃかごの目より源五郎げんごろう 高野素十    すじゅう
かごの目にうなぎ詰まりて夜の長き 岸本尚毅   なおき
草刈の籠の目を桔梗ききょうかな 夏目漱石なつめ そうせき
籠の目にからまり残る貝割菜かいわりな 富安風生とみやす ふうせい

◎水道と蛇口

春風に蛇口じゃぐちの水のよろめける 抜井諒一ぬくい りょういち
水道の水のはげしさ桜鯛さくらだい 日野草城    そうじょう
水道の水ね上がり夏来る 茅根知子ちのね ともこ

 

◎女客

春雷しゅんらい女主おんなあるじ女客おんなきゃく 星野立子
待宵まつよいや女主に女客 与謝蕪村よさ ぶそん

◎強きもの

はりといふ強きものある涅槃寺ねはんでら 大牧広
強きもの力あるもの雲のみね ハードエッジ
くぎといふこの強きもの輪飾わかざりす 殿村菟絲子とのむら としこ

◎嬉しい鳥

来ることのうれしきつばめ来たりけり 石田郷子    きょうこ
小鳥来る音うれしさよ板庇いたびさし 与謝蕪村よさ ぶそん

◎日→月

日のありしところに月や山ざくら 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
日輪を送りて月の牡丹かな 渡辺水巴   すいは
日のありしところに月や崩れ簗 小原啄葉おばら たくよう
日を追うて歩む月あり冬の空 松本たかし
冬滝の真上日のあと月通る 桂信子
日についでめぐれる月や水仙花 高濱虚子たかはま きょし

◎防御

香水の香ぞ鉄壁てっぺきをなせりける 中村草田男   くさたお
純白じゅんぱくのマスクをたてとして会へり 野見山ひふみ

◎急行通過

急行のとまらぬ金魚田きんぎょだの駅よ 阿波野青畝あわの せいほ
急行の停らぬ駅や秋祭 赤星水竹居あかぼし すいちくきょ
鶴川つるかわは急行とまらず桂郎忌けいろうき 草間時彦

以上です