ペア79 横になればすぐに眠たし宿浴衣 星野立子

追記:林檎/2020.12.16、尾のごとき/2020.11.6
推敲:春燈→春の夜/2020.11.20

ペア79

◎腸の春秋

はらわたに春したたるやかゆの味 夏目漱石    そうせき

腸に秋のしみたる熟柿じゅくしかな 各務支考かがみ しこう

 

 

◎道と坂と滝

春の町帯のごとくに坂を垂れ 富安風生とみやす ふうせい

枯木山ほそほそとたききにけり 本井英    えい

山眠り尾のごときみちれさがり 村越化石   かせき

 

 

◎本の山の四季

春の夜に眠れ未読の本の山 ハードエッジ

本の山またくずれたり猫の恋 鈴木鷹夫   たかお

灯取虫ひとりむし戦ふための本の山 西村麒麟   きりん

本の山に虫籠むしかごを置く供養くようかな ハードエッジ

小鳥来るしづかに本の山くずれ 照屋眞理子てるや まりこ

本の山すずりの海や冬こもり 正岡子規  しき

堆書の本の山より初日射す 山口青邨    せいそん

食積くいつみごとく積み上げ本の山 ハードエッジ

 

 

◎食品タグ

生産地シールはピンク春キャベツ ハードエッジ

商標の輝いてゐるバナナかな 太田うさぎ

金色のシールをがし林檎りんごむく 吉田林檎   りんご

 

 

◎この世に順応

この世にも少しれたかやよ子猫 照屋眞理子てるや まりこ

まだれぬこの世の寒さ乳をる 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

◎花のオートバイ

紅梅こうばいに片寄せてあるオートバイ 川崎展宏    てんこう

夜桜よざくらに寄せオートバイまだ熱し 奥坂まや

茶の花に押しつけてあるオートバイ 飯島晴子

 

 

◎鳴き止んで

かなかなの鳴きをはりたる門火かどびかな 森澄雄

法師蝉ほうしぜみ鳴き終りたる水明り 深見けん二

 

 

◎直ぐに眠い

横になればすぐに眠たし宿浴衣やどゆかた 星野立子

寝ころべばすぐに眠くて避暑ひしょの宿 成瀬正俊なるせ まさとし

 

 

◎踊りの人と狐

狐面きつねめんつけて踊りの輪の中に 中村苑子

人間ひとのふりして加はりぬ踊りの輪 照屋眞理子

白狐もとより踊上手なり ハードエッジ

 

 

◎衣服交換

老いぬれば夫婦別なきスエタかな 松尾いはほ

支障ししょうなし子と冬シャツをたがへ着ても 安住敦    あつし

 

以上です