ペアリング60 これはもう裸といへる水着かな 大野朱香

追記:夏の雨・天井に蛾・大旱/2020.8.24

ペアリング60

◎月の出没

おぼろから出られぬ月の光かな 抜井諒一ぬくい りょういち

夕月を隠しきれざる春の雲 抜井諒一

 

 

◎大粒の雨

夜天より大粒の雨花篝はなかがり 草間時彦

こらへゐて雨も大粒空海忌くうかいき 宇佐美魚目うさみ ぎょもく

降り出しの粒の大きな夏の雨 抜井諒一

大粒の雨が来さうよはもの皮 草間時彦

うきくさに大粒の雨いたりけり 星野立子

南国の雨大粒に仏桑花ぶっそうげ 高橋悦男

大粒の雨の降り来し施餓鬼せがきかな 加藤覚範

大粒の九月の雨となりにけり ハードエッジ

 

 

◎全き飯

粒ごとの全きみどり豆ご飯 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

栗飯くりめしのまつたき栗にめぐりあふ 日野草城    そうじょう

栗飯の中に全き栗一つ 山崎ひさを

 

 

◎無かった様

何事も無かつたやうに花は葉に ハードエッジ

花火などなかつたやうな夜空かな 抜井諒一

 

 

◎張り付く

太幹にはりつきしちょうや夏の雨 西山泊雲    はくうん

大夕立天井てんじょうがはりつきて 清崎敏郎   としお

大旱おおひでり岩風呂にせみはりつきて 瀧澤伊代次たきざわ いよじ

横綱よこずなにはりついてゐる浴衣ゆかたかな 関根千方   ちかた

灯台にが張り付いてゐたりけり ハードエッジ

てのひらにはりついてゐる金魚かな 千葉皓史  こうじ

ぼうふらのはりついてゐる水の裏 しなだしん

 

 

◎髪と汗

子の髪の汗の匂ひを知りてゐる 細見綾子

児の髪のやはらかく汗かいてをり 抜井諒一

汗くさき髪のあつまる地蔵盆じぞうぼん 南うみを

 

 

◎水着の判定

服といふよりも水着に近かりし 山本素竹   そちく

これはもうはだかといへる水着かな 大野朱香   しゅか

 

 

◎手のひら白し

てのひらの真白くなりし日焼かな 抜井諒一

新涼や白きてのひらあしのうら 川端茅舎    ぼうしゃ

 

 

◎道に出で

まつすぐの道に出でけり秋の暮 高野素十    すじゅう

道に出でて六本木なり秋の暮 小川軽舟    けいしゅう

思はざる道に出でけり年の暮 田中裕明

 

 

◎くしゃみの驚き

くしやみして生れたての子驚かす 西宮舞にしみや まい

くしゃみして驚いてゐる赤ん坊 ハードエッジ

 

 

以上です