ペアリング15 向日葵の百人力の黄なりけり 加藤静夫

追加:睡蓮・敗蓮・小春・冬の日・日向ぼこ/2020.2.2、はったい/2019.6.11、土筆/2019.1.9、白桃/2018.9.9、冷し酒/2018.4.13
移転:花の漏り・こぼるる花・一山・月の雨/ペア38より/2021.3.19

ペアリング15

 

◎東京近郊

東京のすこしはづれの花の駅  大谷弘至おおたに ひろし

東京の少し田舎いなかの草のもち  岸本尚毅なおき

東京もこの界隈かいわい土筆哉つくしかな  寺田寅彦    とらひこ

 

 

◎時は過ぎ行く

春雨はるさめの三時も過ぎぬ四時近き 中村汀女    ていじょ

睡蓮すいれんの水に二時の日三時の日 後藤比奈夫  ひなお

敗蓮やれはすに午後の日射も三時まで 安住敦あずみ あつし

うとうとと小春日和こはるびよりも二時三時 ハードエッジ

冬の日の三時になりぬ早や悲し 高濱虚子たかはま きょし

三時まであと十五分日向ぼこ 星野立子

枯菊に午前の曇り午後の照り  桂信子

数へ日の三時は日向ひなた四時の影 永井龍男   たつお

 

 

◎旅立の時

く春に何も持たせてやれぬこと  中原道夫

ゆく年のゆくさきのあるごとくゆく  鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

◎囲われて

新緑しんりょくのアパート妻を玻璃はり囲ひ  鷹羽狩行

おでん屋をビニール囲ひごはごはと  ハードエッジ

 

 

◎臨界近辺

しやぼん玉しばらく消えず消えにけり 高梨章

咲き満ちてこぼるる花もなかりけり 高濱虚子たかはま きょし

満開の一点つひに花のり ハードエッジ

一山のこらへきれざる花ふぶき 野澤節子のざわ せつこ

はつたいやこぼさじとしてこぼしたる 原石鼎  せきてい

こぼさずにこぼるるほどに冷し酒 西村麒麟   きりん

子燕こつばめのこぼれむばかりこぼれざる 小澤實おざわ みのる

落ちさうで落ちぬ水滴すいてきさくらんぼ 津川絵理子

月の雨こらへ切れずに大降りに 高濱虚子

どんど火のくずれむばかり崩れたり ハードエッジ

 

 

◎パワーメーター

向日葵ひまわり百人力ひゃくにんりきの黄なりけり  加藤静夫

長雨に火力かりょくおとろ曼珠沙華まんじゅしゃげ  高澤良一たかざわ よしかず

 

 

◎音響効果

芭蕉ばしょう野分してたらいに雨を聞く夜かな  松尾芭蕉
  野分=台風の雨が、屋外の盥を打ちに打つ
  と思ってましたが、
  これ、台風の雨漏りを盥に受ける、の情景らしい

  屋外と室内の対比です

  そして、漢詩の下敷があるようです

  「芭蕉発句全集」茅舎の感より引用
杜甫の作品「茅屋秋風に破らるるの歌」の「牀牀屋漏りて乾けるところなし(どの寝床も雨漏りで寝るところもないの意)」をふまえている。

荒々とあられはバケツ打ち鳴らし  ハードエッジ

 

 

◎減るか減らぬか

店の柿減らず老母へ買ひたるに  永田耕衣こうい

くらひたる白桃はくとうせにけり  永田耕衣

とほるたび抜くねこじやらし減りもせぬ  細川加賀かが

 

 

◎星はまだ

ことごとく未踏みとうなりけり冬の星  高柳克弘かつひろ

やがて来る探査機待つや春の星  柳村光寛

 

 

◎おでんとテレビ

おでんやがよく出るテレビドラマかな  吉屋信子

おでん屋のテレビに「地球最後の日」  ハードエッジ
  →「地球最後の日」/ut

以上です