ペアリング39 死螢に照らしをかける螢かな 永田耕衣

ペアリング39

◎金色塗布

金泥(きんでい)を塗(ぬ)られしごとき春の風邪(かぜ)  大木あまり

初夢の金粉(きんぷん)を塗りまぶしたる  高濱虚子(たかはま きょし)

 

 

◎驚かす

凧(たこ)揚(あ)げて歌ふ雲雀(ひばり)を驚かす  ハードエッジ

種蒔(たねま)けば芽が出て妻をおどろかす  長谷川双魚(    そうぎょ)

茄子(なす)の花こぼれて蜘蛛(くも)をおどろかす  飴山實(あめやま みのる)

初雪が触(ふ)れて水面(みなも)を驚かす  ハードエッジ

水鳥の夢驚かす驟雨(しゅうう)哉(かな)  寺田寅彦(   とらひこ)

 

 

◎セロハン

セロファンの中の幸(しあわ)せかすみ草  椎名智恵子(しいな    )

チューリップ包むセロハン墓に鳴る  仲村青彦

セロファンの音にぎやかに贈る薔薇(ばら)  西原天気(さいばら てんき)

花束のセロファンくもる墓参(ぼさん)かな  大木あまり

花束のセロハンの音雪催(ゆきもよい)  金子敦(    あつし)

 

 

◎照明

一つ籠(こ)になきがら照らす螢かな  渡辺水巴(   すいは)

死螢に照らしをかける螢かな  永田耕衣(   こうい)

消えてゐる方の流燈(りゅうとう)照らされぬ  後藤夜半(   やはん)

 

 

◎くつろぎのすすめ

母の日の母にだらだらしてもらふ  正木ゆう子

ははそはの母にすすむる寝正月(ねしょうがつ)  高野素十(   すじゅう)

我も折れていはるるままに寝正月  富安風生(とみやす ふうせい)

目出度(めでた)さや老いて互に寝正月  高濱虚子

 

 

◎原っぱ

原つぱも喇叭(らっぱ)も消えて秋の暮  ハードエッジ

原つぱも不敗(ふはい)の独楽(こま)も疾(と)うに無し  正木ゆう子

 

 

◎良き眠り

花野来て夜は純白(じゅんぱく)の夜具(やぐ)の中  岡本眸(    ひとみ)

ふはふはの粉雪(こゆき)のごとき毛布かな  ハードエッジ

 

 

◎寒さと重さ

くれなゐの色を見てゐる寒さかな  細見綾子(   あやこ)

くれなゐといふ重さあり寒椿(かんつばき)  鍵和田[ゆう]子

 

 

◎雪折の雪

雪折(ゆきおれ)の雪の消えたるところかな   岸本尚毅(   なおき)

雪折のささくれに雪新しき   ハードエッジ

 

 

◎モーゼの杖

蓮根掘(はすねほり)モーゼの杖(つえ)を掴(つか)み出す  鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

牛蒡(ごぼう)引くモーゼの杖に及ばねど  ハードエッジ

 

 

以上です