いたづらをせむと笑む子やさくらんぼ 鶴岡加苗
水着選ぶいつしか彼の眼となつて 黛まどか
大寒を選びしごとく逝きたまふ 鷹羽狩行
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
いたづらをせむと笑む子やさくらんぼ 鶴岡加苗
水着選ぶいつしか彼の眼となつて 黛まどか
大寒を選びしごとく逝きたまふ 鷹羽狩行
自転車の妻に驚く鰯雲 斎藤夏風
初雪の驚き消ゆる水面かな ハードエッジ
斧入れて香に驚くや冬木立 与謝蕪村
桜貝握り拳に匿へり ハードエッジ
夏草に延びてからまる牛の舌 高濱虚子
恋をしてからびし蚯蚓かもしれず しなだしん
残雪を軋ませつ摘む蕗の薹 篠田悌二郎
汽車長くきしみて止る夏山峡 細見綾子
歳月に鉾の車輪の軋むかな ハードエッジ
るりるりと天をくすぐる雲雀かな ハードエッジ
新涼の胸くつろげてありにけり 川崎展宏
蚯蚓鳴く寂しさに身をくねらせて ハードエッジ
蠅打つていさゝか穢す団扇哉 高井几董
秋雨に焚くや仏の削り屑 高桑闌更
死神を蹴る力なき蒲団かな 高濱虚子
地虫出て目をこするさま人の子なら 加藤楸邨
寝転ぶに春の証の腕まくり ハードエッジ
がりがりとこする音して鹿のゐる 岸本尚毅
初蝶を苛む風となりにけり 西宮舞
山百合を捧げて泳ぎ来る子あり 富安風生
悴める掌を包みやり諭しけり 西村和子
麦秋の乳房悔なく萎びたり 橋閒石
萎みたる胡瓜の花の茶色かな ハードエッジ
芋二つしなびて冬の空があり 岸本尚毅
雷激し浴後の髪を梳きをれば 館岡沙緻
流燈の岸辺の草を擦ることも 藺草慶子
惜しみなく地擦る束帯時代祭 西本一都
城攻めの騒ぎよ蓮の葉も花も 鷹羽狩行
萩の風何か急かるる何ならむ 水原秋櫻子
ふる雨や浮寝の鳥を水輪攻め ハードエッジ
おかはりの言葉覚えて豆の飯
白玉や水に放つといふ言葉
そはそはは愉快な言葉春を待つ
一寸ゐてもう夕方や雛の家 岸本尚毅
母の日の知らぬは母の誕生日 ハードエッジ
夏草に延びてからまる牛の舌 高濱虚子
蜆汁はや子も揃ふことまれに 中村汀女
松風の中を青田のそよぎかな 内藤丈草
山茶花は零れ冬菜は峙ちて ハードエッジ
酒ならばたしなむと言へ鱧の皮 吉田汀史
仏にも寒九の水をたてまつる 森澄雄
達筆のわが名たまはる年賀状 ハードエッジ
従姉妹とは一つ違ひや花衣 星野椿
牡丹の色違へども蘂の金 川崎慶子
すれ違ふ寒鯉に渦おこりけり 岸本尚毅
夜ごと来る狸子連れとなりにけり 中本真人
聖菓切るためにサンタをつまみ出す 松浦敬親
年玉を妻に包まうかと思ふ 後藤比奈夫
深川のかんかん照りの祭かな 大木あまり
行く秋や朝を照らせる常夜灯 岡田一実
照れば金日かげれば銀芒かな 下村梅子
水尾の端遅日の岸に届きけり 村上鞆彦
毎日の朝寝とがむる人もなし 松本たかし
蝉のこゑ届かぬところまで泳ぐ ハードエッジ
少しづつ書いてつらつら氷柱の夜
怖い夢見しや氷柱の曲りしは
へし折つて鬼の引きずる大氷柱
母たのし汐干にあそぶ子を眺め 星野立子
激流を鮎の竿にて撫でてをり 阿波野青畝
手で顔を撫づれば鼻の冷たさよ 高濱虚子
点々と田を濁らせて植ゑ進む ハードエッジ
にじみ出てやがて一つや汗の粒 如月真菜
埋火やつひには煮ゆる鍋の物 与謝蕪村
遊船を連絡船が抜いてゆく 中本真人
猫じやらしすくすく抜けて楽しいぞ ハードエッジ
薬塗るやうに冬日を背に当つる 岡本眸
待たれゐる楽しさ白玉練ることも 西村和子
太陽も捻り鉢巻ラムネ売る ハードエッジ
猪ねらふ肱にすがる小てふ哉 小林一茶
空つぽの檻も覗きて日の氷き 高澤良一
雛の間をかくれんばうの鬼覗く 行方克巳
にぎやかな妻子の初湯覗きけり 小島健
年の瀬や続く天気にはげまされ 星野立子
数ふるははぐくむに似て手毬唄 片山由美子
寒の字のとれて雀のよく弾み 横井理恵
美しき眉をひそめて朝寝かな 高濱虚子
ひるがへる葉に沈みたる牡丹かな 高野素十
ガス栓を捻ればガスやガスの冬 ハードエッジ
天瓜粉まだ土知らぬ土踏まず 古賀まり子
鉄板を踏めばごぼんと秋の暮 岸風三楼
焚火跡踏み荒されてゐたりけり ハードエッジ
城若葉ホテルは濠を隔てたる ハードエッジ
郭公や母と谺をへだて住む 今瀬剛一
人減りし村に氷柱の数減らず 高木嘉久
童女かがみ尿ほとばしる麦の秋 西東三鬼
手花火の火は水にして迸る 山口誓子
寒椿師を悼む句を褒められぬ 草間時彦