ペアリング14 水の底突けば固しや水澄める 岸本尚毅

削除:2句/2019.4.13
追加:薔薇/2020.5.4、跫音/2020.3.9、犬ふぐり/2020.1.31、銀杏黄葉/2019.11.28、清水2句/2019.6.19、山笑ふ・鳥帰る・子猫/2019.4.13、桜貝/2018.9.22、帰ろう4句 額の花/2018.7.12

ペアリング14

◎帰ろかな

帰るべき山かすみをり帰らむか   小澤みのる

帰らなんいざ草のいおりは春の風  芥川龍之介あくたがわ りゅうのすけ

山笑ふ我がふるさとに帰らむか  ハードエッジ

帰らんと我はいづくへ鳥帰る  森澄雄

帰りたし子猫のやうにくわへられ  照井翠てるい みどり

草履ぞうりの尻折りて帰らん山桜  松尾芭蕉まつお ばしょう

さて秋のつばめのやうに帰らうか  西村麒麟きりん

おまけ1:北島三郎『帰ろかな』永六輔+中村八大/TAP the SONG

おまけ2北島三郎『帰ろかな』/UT

 

 

◎沈降速度

春昼しゅんちゅうの水底へ皿ゆらゆらと  金子あつし

冬深し小石はゆらぎつつ沈む  高柳克弘

 

 

◎水の深度

美しき春水しゅんすいにして深からず  成瀬櫻桃子おうとうし

青あをと見えて底ある清水かな  加賀千代女かが の ちよじょ

水底のよくよく見ゆる清水かな  ハードエッジ

水の底けばかたしや水澄みずすめる  岸本尚毅なおき

  水底でないかたさ:
  いちやうもみぢ踏みても路のかたさなる  藤田哲史

 

 

◎金の貫通

縞鯵しまあじ黄金こがねひとすぢまなこまで  相子智恵

金絲魚いとよりの金が尾鰭おひれの先までも  小澤實

 

 

◎楽の混雑

薔薇ばらの芽のこぞりて指揮者しきしゃ待つごとし  宮脇白夜

一面に合唱団がっしょうだんのごと芽吹く  ハードエッジ

犬ふぐり少年合唱団のやう 山本歩禅   ほぜん

き起るがくごとくに薔薇ばらるる 西村和子

 

 

◎高輝度

つきささるやうな照明パンジーに  岸本尚毅

雪の夜の明りの強き工事かな  山口優夢ゆうむ

 

 

◎象の関与

行く春を乗せたるぞうの歩みかな  ハードエッジ

跫音あしおともなく象歩む晩夏かな  友岡子郷    しきょう

上野には象を残して神の旅  西村麒麟

 

 

◎移動可能性

西日さしそこ動かせぬものばかり  波多野爽波そうは

大寒のここはなんにも置かぬ部屋  桂信子

 

 

◎濃度・深度・温度

アイスコーヒー上より薄くなりゆける  上田信治

ソーダ水深きところを吸はれをる  ハードエッジ

飲むたびに冷める珈琲コーヒー額の花  鶴岡加苗つるおか かなえ
  →額の花=ガクアジサイ/ggl画像

 

 

◎限界突破

空青すぎて桜貝こはれさう  黛まどか

鷺草さぎそうの飛べばけがるる白ならむ  片山由美子

これ以上みなば水の傷つかむ  上田五千石

 

以上です