和語俳句 【さ】 白木蓮の散るべく風にさからへる 中村汀女

追記:彷徨ふ/2018.2.16、捧ぐ/2018.2.5、分割/2017.12.13、萎ぶ/2017.12.12、諭す/2017.11.21、誘ふ、慕ふ/2017.9.15
◎和語俳句、さ行の「さ」です
→「し」
→「す」
→「せ」
→「そ」

◎苛む=さいなむ

初蝶を苛む風となりにけり  西宮舞

稲妻の斬りさいなめる真夜の岳  福田蓼汀(りょうてい)

 

◎遮る=さえぎる

大夏木日を遮りて余りある  高濱虚子(たかはま・きょし)

秋の日を幹重なりて遮りぬ  高濱虚子

いつぽんの幹のさへぎる冬日なり  長谷川素逝(そせい)

 

 

◎遡る=さかのぼる

遡る花の小川のボートかな  正岡子規(しき)

遡る草刈舟のつづくなり  松村蒼石(そうせき)

 

 

◎逆らふ=さからう

白木蓮の散るべく風にさからへる  中村汀女(ていじょ)
  ※白木蓮=はくれん

やはらかに金魚は網にさからひぬ  中村汀女

さからはず十薬をさへ茂らしむ  富安風生(ふうせい)

冬ざくら死に逆らはぬ鳥けもの  木内彰志(きうち・しょうし)

 

 

 

◎蔑む=さげすむ

蔑めり激しからざる雷などを  山田みづえ

死に遅れたる蟷螂を蔑めり  上田五千石(ごせんごく)
  ※蟷螂=とうろう=カマキリ

 

 

◎捧ぐ=ささぐ

山百合を捧げて泳ぎ来る子あり  富安風生
  捧げるの熟語に「捧げ銃」の号令があります
  また、
  百合には「鉄砲百合」という種類があります
  その辺の連想が微かにあるのも一興

  一本の山百合は、
  「純白の」と書きたいところですが、
  (純白なのは、むしろ、鉄砲百合)
  ちょっとアバタのあるワイルドな百合です

  少年に似合う、というよりも、
  少年には不釣り合いな、
  濃厚な甘い匂いの、百合の王様が山百合です
  (日本特産)

  そんなアンバランスな対比に
  さらに、
  ダイナミックな泳ぎが加わりつつも、
  全体は水の冷たさ、静けさに包まれているのです/2018.2.5
  →山百合/GGL画像
  →鉄砲百合/GGL画像

  泳げない子ならば、
  山百合の天に近きを折り呉るる  櫛原希伊子(くしはら・きいこ)

捧げ来しは実梅を叩き落とす棒  辻桃子
  秋になれば、同様に、
  よろよろと棹がのぼりて柿挟む  高濱虚子

 

 

◎誘ふ=さそう

→誘ふ=いざなう

誘ひあひ彼岸詣の老姉妹  星野立子
  ※彼岸詣=ひがんもうで
  「姉妹」といえば、たいてい幼子を思いますが、
  幼子も年を取ります
  そして、
  年取っても、姉妹は姉妹です

  「55DB」には「姉妹」が140句ほど
  内、「老姉妹」は6句だけですが、
  いい句があります

  蜜豆で別れる慣ひ老姉妹 石丸泰子

  老いてこそ姉妹美し谷崎忌 三木敬子

遠足へ未明の声の誘ひ合ふ  中村草田男(くさたお)

ころはよし祇園囃子に誘はれて  後藤立夫

雪さそふものとこそ聞け手毬歌  久保田万太郎
  ※手毬唄=てまりうた

 

 

◎諭す=さとす

猫の子にかがみて諭す京言葉  中戸川朝人

白日傘幼き兄を諭しゐる  大串章

少年を娼婦諭せる焚火かな  竹岡一郎

悴める掌を包みやり諭しけり  西村和子

大根にしみ入るやうに諭しけり  佐藤郁良(かおる)

賀状みな命惜めと諭しをり  岡本眸(ひとみ)

 

 

◎彷徨ふ=さまよう

さまよへる行方不明者春の山  矢島渚男なぎさお

芦刈のそこらさまよふ一人かな  高野素十すじゅう

月雪をさまよふ花の絵双六  ハードエッジ

 

 

 

◎騒ぐ=さわぐ

金魚田の雨となりたる騒ぎかな  片山由美子

討入りの日や下町に小火騒ぎ  鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)
  ※小火=ぼや

 

以上です
お読み頂きありがとうございました