和語俳句 【あ】 春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎

追記:薬局の灯/2020.8.30、集む/2018.2.22
更新:疑ふ/2017.9.22、歩む/2017.9.19、2017.9.8 溢る 2017.8.31 商ふ、誤つ、驚く
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◎和語俳句、あ行の「あ」です

その他のあ行:
  →「い」
  →「う」
  →「え」
  →「お」

◎商ふ=あきなう

山藤や硫黄商ふ山の小屋  芥川龍之介
  ※硫黄=いおう

あきなひや蠅取リボン蠅を待つ  ねじめ正也

昼寝せる妻も叱らず小商ひ  高濱虚子(たかはま・きょし)

薬局の灯の商へる避暑名残ひしょなごり 行方克巳なめかた かつみ

商ひの裏口に焚く門火かな  福神規子
  ※門火=かどび

干大根折り曲げて見せ商へり  斉藤志津子

商ひも恋もたのみて宵戎  島谷征良(しまたに・せいろう)
  ※宵戎=よいえびす

 

 

◎諦む=あきらむ

諦めぬ力たとへばチューリップ  北大路翼きたおおじ つばさ

花開くこと諦めし薔薇の棘  ハードエッジ
  ※薔薇=ばら、棘=とげ

人参は丈をあきらめ色に出づ  藤田湘子(しょうし)
  ※人参=にんじん

 

 

◎欺く=あざむく

冬の水一枝の影も欺かず  中村草田男(くさたお)
  ※一枝=いっし

木の葉髪文芸永く欺きぬ  中村草田男
  ※木の葉髪=このはがみ=木の葉が散るころの抜毛

 

 

◎集む=あつむ

  →集る=たかる
  →集ふ=つどう

ハンドバツク寄せ集めあり春の芝  高濱虚子たかはま きょし

五月雨さみだれを集めて早し最上川もがみがわ  松尾芭蕉まつお ばしょう

五月雨を集め水力すいりょく発電所はつでんしょ  ハードエッジ

追剥おいはぎのやうに夜濯よすすぎもの集め  須川洋子

金魚ひ切手を集めたることも  ハードエッジ

生創なまきずはえを集めて馬帰る  西東三鬼さいとう さんき

あつまつておろおろとあるつゆの玉  ハードエッジ

豆腐屋とうふや寄附きふを集めに秋祭  阿部みどり女

林檎りんご樹下じゅかめる林檎の集められ  山口誓子せいし

各地より我名あつまる年賀状  ハードエッジ

 

 

◎侮る=あなどる

春の風邪あなどり遊ぶ女かな  三宅清三郎

色変へぬ松を窃かに侮れり  相生垣瓜人(あいおいがき・かじん)
  ※窃か=ひそか

虫螻蛄と侮られつつ生を享く  高濱虚子
  ※虫螻蛄=むしけら、享く=うく

 

 

◎暴る=あばる

臍出して雷様の大暴れ  ハードエッジ
  ※臍=へそ

火の点きしごとく暴るる蜥蜴の尾  中本真人
  ※蜥蜴=とかげ

 

 

◎溢る=あふる

温泉のとはにあふれて春尽きず  高濱虚子

制服の少女あふれて鹿の奈良  加藤三七子

障子に日溢れて永遠に母の留守  鈴木鷹夫
  ※障子=しょうじ、永遠=とわ、留守=るす

 

 

◎焙る=あぶる=炙る

塩の香のまづ立つ干鱈あぶりけり  草間時彦
  ※干鱈=ひだら

焙られて目刺の口が吐く煙  鈴木鷹夫

海苔あぶりながら話のつゞきかな  久保田万太郎
  ※海苔=のり

肉を炙り聖夜の脂滴らす  ハードエッジ
  ※滴らす=したたらす

 

 

◎誤つ=あやまつ

誤りて人に生れし暑さかな  会津八一(やいち)

 

 

◎歩む=あゆむ

春ひとり槍投げて槍に歩み寄る  能村登四郎(としろう)

歩み来し人麦踏みをはじめけり  高野素十(すじゅう)

しんしんと寒さがたのし歩みゆく  星野立子

 

 

◎抗ふ=あらがう

蝸牛をつまむ微かに抗ふを  山田みづえ
  ※蝸牛=かぎゅう、まいまい、かたつむり、微か=かすか

美しく日焼けて父母に抗へり  庵達雄

露草のもう太陽に抗へぬ  ふけとしこ
  ※露草=つゆくさ

 

その他のあ行:
  →「い」
  →「う」
  →「え」
  →「お」

以上です

お読み頂きありがとうございました