赤々と月の出を待つ夕焼かな
ふる雪もちる花もなき月夜なり
真夜中の月夜の日本大使館
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
赤々と月の出を待つ夕焼かな
ふる雪もちる花もなき月夜なり
真夜中の月夜の日本大使館
婚の荷でありし柿の木祖母の庭
入りし刃にシクと切られし柿の種
柿たわわ日本の村の滅びつつ
流れ星ただ一筋に光るなり
一の糸そして二の糸流れ星
流星や柱の中に錆びし釘
素麺の入りし桐箱平べつた
素麺の湯を沸かしつつ胡瓜揉み
印度人も素麺すする暑さかな
大いなるものはゆるりと初日の出
人々の歩みゆくなり初詣
歳時記の古きを開く淑気かな
初刷にがばりと富士やインクの香
アルバムにもう懐しや初写真
正月を遊び尽して目出度けれ
ここに駅つくれと吹雪く関ヶ原
昼月や蜜柑に淡き花の跡
ノックして芯を出すペン春近し
蟻の列鞭の如くに飴に伸ぶ
黒山の蟻に歓喜の声もなし
蟻の列にも殿のありぬべし
わが先祖代々の墓暖かし
足し算はもらつてばかりあたたかし
うんちして笑ふ赤ちやん暖かし
人々に見られて虹の美しや
積み上げし積木涼しく崩れたり
四本の弾力に立つ鹿の子かな
落葉みな土に帰しゆく蕗の薹
小さき葉に小さく包まれ蕗の薹
味噌汁に鶉の卵蕗の薹
鬼のごと追儺太鼓を打ち鳴らす
ぶらんこにもすべり台にも鬼は外
逃れ来て春立つ朝の鬼ヶ島
妙齢の箸が転げて春の旅
風薫る本の中からその書評
大根があれば何とか成りさうな
薫風に赤子の髪の逆立てる
爺婆の白髪めでたし七五三
黒髪の長からねども歌留多会
墨書太々夏痩と言ふ便り
髪洗ふ姫君月へ帰るべく
金魚ゆらゆら母船を待つてゐるやうな
白妙の入道雲や船の旅
ぱかと開く缶ペンケース夏の蝶
しみじみと月のなき夜の月見草
今年(2019年)発行の開発素句報
その葉書俳句、全12枚の画像
一年を炬燵の城に振り返る
聖夜劇の天使の羽根を枕辺に
眠りたる子らにホワイトクリスマス
メリークリスマス空飛ぶプレゼント
もう一度子猫になつて会ひに来よ
健気なりコンクリートも大根も
着飾りて詩歌の国の歌留多会
初富士に跳ねて目出度し金目鯛
朝湯して身を清めたる寝正月
雪を来て百花の春や初芝居
球根は時限爆弾土に秘す
紫の花が楽しみ茄子蒔く
花になき緑の粉ぞつくしんぼ
あと一つ咲けば百なる白椿
筍や客人はまだ寝てをられ
柿たわわ日本の村の滅びつつ
春の水ゆたかに城を守りをる
満開の花より白し塩むすび
食パンの三斤棒や春深し
番付で言へば大関豆御飯
傘さして雨の茅の輪を潜りけり
虹も出てとても綺麗な雨あがり
金目鯛頭一つを夕餉とす
頭が見えてやがて大きく初日の出
叩かれて釘の頭や寒明くる
石鹸玉吹くや子猫が目を丸う
モナリザの瞳に映る天の川
うす目して赤切れは物言ひたげな
柿の実の大暑に耐ふる緑色
サイダーとラムネの差異を雲に聞く
団扇絵の美人片手に夕涼み
恐竜は夕立に目を細めたり
強面の野分なれども目が綺麗
水平に目の玉ふたつ初日の出
長き夜を線香の火の沈みゆく
長き夜の胡麻を圧して胡麻油
而して頁を捲る夜長かな
ハンカチと生れて日々を清らかに
向日葵で円盤投げをしてみたし
暗闇に団扇を探る暑さかな