角川俳句賞2020 落選作-b 山一つ氷つてゐたる昼の酒

追記:割烹着/2021.1.18

角川俳句賞2020
プランB「明日を信じて」50句

落選作

◎葉書俳句

角川俳句賞2020 落選葉書

 

角川俳句賞2020 落選葉書

 

◎テキスト

春

寧楽(なら)と書けば唐天竺(からてんじく)や春霞(はるがすみ) ハードエッジ

  天竺の俳句:
  天竺の仏は何を衣(ころも)かへ 正岡子規(  しき)

 

 

本降(ほんぶ)りに暗(くら)みたりけり春の雪 ハードエッジ

  本降り秀句:
  ものの芽をうるほしゐしが本降りに 林翔(はやし しょう)

  本降りとなるも神輿(みこし)を揉(も)みやめず 小澤實(おざわ みのる)

  暗みたり秀句:
  くべ足して暗みたりけり花篝(はなかがり) 西村和子

 

 

耕(たがや)して鍬(くわ)ねつとりと重たけれ ハードエッジ

  鍬の秀句:
  田打鍬一人洗ふや一人待ち 高野素十(    すじゅう)

  涅槃会(ねはんえ)や蚯蚓(みみず)ちぎれし鍬の先 正岡子規(  しき)

  鍬二丁使ひ分けして筍(たけのこ)掘る 右城暮石(うしろ ぼせき)

  一と鍬に畦(あぜ)を欠きたり落し水 高濱年尾(たかはま としお)

  鍬の跡ざつくりとあり衣被(きぬかつぎ) 長谷川櫂(はせがわ かい)

  掛稲(かけいね)や洗ひ上げたる鍬の数 加舎白雄(かや しらお)

  あめつちの地のあるかぎり鍬始(くわはじめ) 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

 

 

ビル裏に配管の巣や燕(つばめ)来る ハードエッジ

  改案:
  ビル裏に配管くねる燕来る ハードエッジ

  配管俳句:
  製油所の銀の配管春の海 大西主計(   かずえ)
    /角川俳句賞2020落選展より

  月涼し配管老いし雑居ビル 小川軽舟(    けいしゅう)

  配管の寒さがビルをはしりけり 鴇田智哉(ときた ともや)

  夢の世のコンビナートの聖夜かな ハードエッジ

  銀管のコンビナートのクリスマス ハードエッジ

 

 

涅槃絵図(ねはんえず)涙ながらに褪(あ)せゆくも ハードエッジ

  涅槃と涙:

  ほろほろと龍(りゅう)の涙や涅槃像(ねはんぞう) 正岡子規(  しき)

  涅槃会(ねはんえ)や花も涙をそゝぐやと 山口素堂(   そどう)

  泣いてゐる涙は描かず涅槃の図 中本真人(   まさと)

  慟哭(どうこく)の涙は描かず涅槃像 三村純也

  百獣(ひゃくじゅう)のなみだあかるし涅槃像 室積徂春(むろづみ そしゅん)

  鳥獣(ちょうじゅう)にはじめて泪(なみだ)涅槃絵図 井沢正江

 

 

仏生会(ぶっしょうえ)桜餅(さくらもち)など良からずや ハードエッジ

  仏と桜餅:
  御仏(みほとけ)にこれも供(そな)へぬさくらもち 高濱虚子

  仏壇は金色(こんじき)の闇桜餅 ハードエッジ

  神仏に願ひをかけて桜餅 ハードエッジ

  仏と桜:
  堂前の大山桜灌仏会(かんぶつえ) 星野立子

  鎌倉に大仏と虚子(きょし)桜貝 ハードエッジ

  人混まぬ朝の大仏初桜 石井とし夫

  大仏殿(だいぶつでん)いでて桜にあたたまる 西東三鬼(さいとう さんき)

  大仏の顔よごれたり山桜 正岡子規(  しき)

  仏間(ぶつま)までさくらの風を通しけり 櫛原希伊子(くしはら きいこ)

  白湯(さゆ)うまし山の仏とさくらみて 矢島渚男(    なぎさお)

 

目の玉は二つのままに蝌蚪(かと)蛙(かえる) ハードエッジ

  お玉杓子と蛙の句:
  いきいきとおたまじやくしに蛙の目 古川朋子(   ともこ)

  蛙の目の名句:
  蛙の目越えて漣(さざなみ)又漣 川端茅舎(    ぼうしゃ)

 

ざくざくと浅蜊(あさり)が浜と申さばや ハードエッジ

  ざくざく俳句:
  一掻(ひとか)きの砂に浅利(あさり)のざくざくと 大谷弘至(おおたに ひろし)

  切り口のざくざく増えて韮(にら)にほふ 津川絵理子

  ぎつしりとざくざくと星星月夜(ほしづきよ) 正木ゆう子

  のりたまをざくざく振つて豊(とよ)の秋 金子敦(     あつし)

  ざくざくと踏めば我ある霜柱(しもばしら) 林原耒井(はやしばら らいせい)

  ざくざくと銀杏(いちょう)落葉の黄金色(こがねいろ) ハードエッジ

  申さばや俳句:
  柿若葉妙齢(みょうれい)とこそ申さばや 石塚友二(   ともじ)

  箱根山薄(すすき)八里と申さばや 正岡子規(  しき)

 

 

土手(どて)ゆけば子猫の見ゆるバルコニー ハードエッジ

  土手の四季:
  土手につく花見疲れの片手かな 久保より江

  若草や土手にくひつく牛のむれ 正岡子規(  しき)

  梅雨(つゆ)の川みるみる土手を削りをる ハードエッジ

  焼夷弾(しょういだん)逃(のが)れし土手や花火見る 川村みよき

  どんぐりの落つるや土手の裏表(うらおもて) 正岡子規

  土手を外(そ)れ枯野の犬となりゆけり 山口誓子(   せいし)

  孤児(こじ)ら遊び土手の枯草擦(す)り切れし 津田清子

 

生家跡(せいかあと)には一面の春の草 ハードエッジ

  秋なら、
  秋雨(あきさめ)に草芽吹(めぶ)きたる更地(さらち)かな ハードエッジ

  生家の秀句:
  生家売るは棄教(ききょう)のごとし鳥雲(とりくも)に 伊藤伊那男(  いなお)

  アルバムの生家に残してきた月夜 対馬康子(つしま やすこ)

  廃屋(はいおく)は誰かの生家烏瓜(からすうり) 和田耕三郎

  生家すなはち終(つい)の栖家(すみか)や鏡餅(かがみもち) 下村ひろし

  手毬唄(てまりうた)あとかたもなき生家より 友岡子郷

 

ほのかなる匂ひの花の首飾(くびかざ)り ハードエッジ

  花の首飾り、とくれば、

  花の匂いの名句:
  うすめても花の匂ひの葛湯(くずゆ)かな 渡辺水巴(   すいは)

 

 

夏

古茶(こちゃ)といふ音の響(ひび)きも古茶らしく ハードエッジ

  新茶古茶の秀句:
  新茶出て古茶となるなり自(おのずか)ら 高野素十(    すじゅう)

  古茶はたき出して新茶を詰めにけり 大塚次郎

  人々と新茶ひとりの今を古茶 皆吉爽雨(みなよし そうう)

  ひとり居は刻(とき)もゆるやか新茶古茶 井沢正江

 

 

電柱が出水(でみず)の町に灯を点(とも)す ハードエッジ

  小4の時の引越:
  町方町(まちかたまち)/静岡県沼津市から出水(でみず)/和歌山市へ
  半年ほど住みましたが、
  幸い、実際の出水には会わず

  電柱の四季:
  電柱は刺(さ)さるレガッタは進む ハードエッジ

  代掻(しろかき)の泥電柱の裾(すそ)よごす 高濱年尾(たかはま としお)

  電柱に電球一つ星祭(ほしまつり) 永島靖子

  船宿の名が電柱に日短(ひ-みじか) 岸本尚毅(   なおき)

  雪晴れて電柱すでに乾(かわ)きをり 京極杞陽(きょうごく きよう)

  電線がつなぐ電柱枯るる中 西東三鬼(さいとう さんき)

 

白玉(しらたま)の熱きを冷(さ)ます氷水 ハードエッジ

  白玉の秀句:
  白玉や子のなき夫(つま)をひとり占(じ)め 岡本眸(    みとみ)

  白玉や子等の喜ぶことをせむ 西村和子

  白玉や母子誕生の月おなじ 安住敦(あずみ あつし)

  姉妹(あねいもと)白玉つくるほどになりぬ 渡辺水巴(   すいは)

  白玉自作:
  白玉や白く小さくけがれなく ハードエッジ

 

 

ポンと抜くビール家ではプシュと開け ハードエッジ

  瓶か缶か

 

 

ゆるゆると起きてシャワーを昼餉(ひるげ)前 ハードエッジ

  ゆるゆるの四季:
  ゆるゆるとされど全ての土筆(つくし)摘(つ)む 櫂未知子(かい みちこ)

  ロッカーの鍵(かぎ)のゆるゆる海の家 金子敦(     あつし)

  ゆるゆると湯のあふれをる紅葉(もみじ)かな ハードエッジ

  片栗粉(かたくりこ)ゆるゆる溶(と)いて春を待つ 金子敦

 

 

万緑(ばんりょく)の中に危ない橋かかる ハードエッジ

  万緑の名句、秀句:
  万緑の中や吾子(あこ)の歯生え初(そ)むる 中村草田男(   くさたお)

  万緑にラムネ奔騰(ほんとう)させ若し 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

    ※「沸騰(ふっとう)」とするサイトもあるけど、、、

  万緑や温泉(でゆ)あるゆゑの山の駅 石山佇牛

  万緑や寺格を誇(ほこ)る大薬缶(やかん) 斉田仁(さいだ じん)

  万緑や木の香失(う)せたる仏たち 伊藤通明

  万緑や死は一弾(いちだん)を以て足(た)る 上田五千石(    ごせんごく)

 

 

秋冬の愁(うれ)ひはなけれ蝉(せみ)の声 ハードエッジ

  愁いなき句:
  愁なきに似て薔薇(ばら)に水やつてをり 安住敦(あずみ あつし)

  うれひなし汝(な)が剥(む)く柿のいと赤く 久保田万太郎

 

割箸(わりばし)の先に毛虫がくねくねと ハードエッジ

  割箸の自作:
  砂浜にナイフ・割箸・桜貝 ハードエッジ

  割箸が置かれ冷奴(ひややっこ)が置かれ ハードエッジ

  割箸の白木を割つて神の留守(るす) ハードエッジ

 

埒(らち)もなく旅の疲れの籐寝椅子(とうねいす) ハードエッジ

  籐寝椅子秀句:
  この船のながき船路の籐寝椅子 山口波津女(   はつじょ)

  両舷(りょうげん)の景(けい)相似(あいに)たり籐寝椅子 山口波津女

  籐寝椅子その俤(おもかげ)のよこたはる 長谷川櫂

 

吾輩(わがはい)は西日に立てる赤い箱 ハードエッジ

 

明るさの明日を信じて火取虫(ひとりむし) ハードエッジ

  明日の秀句:
  明日も会ふやうな顔して卒業す 大塚次郎

  ひばりひばり明日は焼かるる野と思へ 櫂未知子(かい      )

  手花火に明日帰るべき母子も居り 永井龍男(   たつお)

  明日食べむ瓜(うり)あり既(すで)に今日楽し 相生垣瓜人(あいおいがき かじん)

  明日よりは稲刈となる祭かな 瀧澤伊代次(たきざわ いよじ)

  まんじゆしやげ明日なき牛の眸(め)に燃ゆる 木田千女(きだ せんじょ)

  幾千代(いくちよ)も散るは美し明日は三越 攝津幸彦(せっつ   )

  自作の明日:
  冷蔵庫バタンと閉めてまた明日 ハードエッジ

  明日はもう市民プールの最終日 ハードエッジ

  明月(めいげつ)はけふ明日(みょうにち)はあしたなり ハードエッジ

 

 

秋

遠花火(とおはなび)虫けらどもは闇(やみ)の中 ハードエッジ

  闇の中の自作:
  闇の中風の中なる枯野かな ハードエッジ

  外套(がいとう)の闇の中なる体かな ハードエッジ

  灯を消して柚子(ゆず)も柚子湯も闇の中 ハードエッジ

  暗闇の中の波音年新た ハードエッジ

 

 

切株(きりかぶ)を囲む走り根露(つゆ)けしや ハードエッジ

  切株の秀句:
  切り株の内より腐(くさ)る日永(ひなが)かな すずきみのる

  切株のぐるりよりふく木の芽哉(かな) 正岡子規(  しき)

  生々と切株にほふ雲の峰(みね) 橋本多佳子

  切株の年輪よぎる蜥蜴(とかげ)かな 野村喜舟(    きしゅう)

  切株がひとつ秋風聞けとこそ 山田弘子

  色鳥や切株はもう年とらぬ 中村明子

  行く秋の切株にある余熱かな 佐藤郁良(   いくら)

  切株に冬日二段の鋸(のこ)の跡 大串章

  切株に坐つて待てば春や来む 鈴木榮子

  自作の切株の四季:
  切り立ての切株に降る春の雨 ハードエッジ

  薄氷(うすらい)や切株の上を滑り落つ ハードエッジ

  切株の落花(らっか)再び吹かれ行く ハードエッジ

  苔寺(こけでら)の苔の切株梅雨(つゆ)深し ハードエッジ

  切株の息の根あはれ秋の風 ハードエッジ

  切りたての切株に積む柿の山 ハードエッジ

  切株に廻れよ廻れ木の実独楽(こま) ハードエッジ

  切株に雪の帽子を被(かぶ)せやる ハードエッジ

 

 

呪文(じゅもん)の如(ごと)くチヨコレイトや露地(ろじ)の秋 ハードエッジ

  呪文の秀句:
  とびとびに呪文のごとき曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 柏柳明子(かしわやなぎ      )

  呪文とけ冬日の亀が歩き出す 桂信子

 

 

引かれ行く牛の貫禄(かんろく)秋桜(あきざくら) ハードエッジ

  先行句:
  秋風や屠(ほふ)られに行く牛の尻 夏目漱石(なつめ そうせき)

  冷されて牛の貫禄しづかなり 秋元不死男(  ふじお)

 

 

鵙(もず)鳴くや泣き出しさうな空の色 ハードエッジ

  泣き出す俳句:
  迷ひ子の泣き出す春の日ぐれかな 大伴大江丸(おおともの おおえまる)

  かくれんぼの鬼が泣き出す夕焼(ゆやけ)かな 金子敦(     あつし)

  しまひにはみんな泣き出し水鉄砲 鶴岡加苗

  闇の夜や子供泣き出す蛍(ほたる)舟 野澤凡兆(のざわ ぼんちょう)

  童部(わらんべ)の独り泣き出て秋の暮 森川許六(    きょりく)

  寝呆(ねぼ)けし子夜なべの土間へ来て泣きだす 大熊輝一

  柿もいで鬼が泣き出しさうな空 藤岡筑邨(    ちくそん)

  鳴く+泣く:
  亀(かめ)鳴くは己(おのれ)の拙(せつ)を泣くごとし 石原八束(   やつか)

  童(わらべ)泣きじやくるかに蝉(せみ)鳴き終り 福田蓼汀(    りょうてい)

  蚯蚓(みみず)鳴くなんぞ人泣くをとがむるや 山口青邨(    せいそん)

 

 

畦(あぜ)をゆく白き軽トラ雁(かり)渡る ハードエッジ

  改案:
  畦をゆく白き軽トラ雁の声 ハードエッジ

  トラックの俳句:
  大方は白の軽トラ植木市 ハードエッジ

  トラックに男やまもり御祭礼(ごさいれい) 本井英(    えい)

  食パンを運ぶトラック爽(さわ)やかに ハードエッジ

  トラックに婚の荷高き豊(とよ)の秋 池田秀水

  トラックが馬を乗せ行く枯野かな ハードエッジ

  トラックが枯野越え来て女おろす 寺山修司

  歳晩(さいばん)やトラック滴(したた)るまで洗ふ 山口誓子

  トラックの帰りは軽し日脚(ひあし)伸(の)ぶ ハードエッジ

 

 

秋の灯の赤き点滅(てんめつ)塔(とう)高し ハードエッジ

  塔の俳句:
  鳥帰るところどころに寺の塔 森澄雄

  鉄塔は囲ひのなかに花は葉に 古川朋子(    ともこ)

  鉄塔の二百十日の高さかな 村田篠(    しの)

  一対の塔木枯(こがらし)を奏(かな)で合ふ 藤田湘子(    しょうし)

  凩(こがらし)や人類に塔まだまだ建つ 丸田洋渡(   よっと)

  悴(かじか)みて見上ぐる塔の高さかな 片山由美子

  灯の鋲(びょう)の東京タワー年の暮 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

  すらり立つ給水塔も水仙(すいせん)も ハードエッジ

 

 

団栗(どんぐり)を転がしてみる机かな ハードエッジ

  転がし俳句:
  涼しさに転がしておく木魚(もくぎょ)かな 長谷川櫂(     かい)

  秋風の転がして行く骸(むくろ)かな ハードエッジ

  餅搗(もちつき)の臼(うす)ころがして洗ひをり 辻桃子

  転がして鉄の重さの雪達磨(ゆきだるま) ハードエッジ

 

 

流星(りゅうせい)や奇跡(きせき)はある日突然(とつぜん)に ハードエッジ

 

真つ暗な紅葉(もみじ)の宿に月もなし ハードエッジ

  月もなし:
  黒雲の晴れて見たれば月もなし 正岡子規

  犬吠(ほ)えて上野の森の月もなし 正岡子規

  先行句:
  月に寝て夜半(よわ)きく雨や紅葉宿 高野素十(    すじゅう)

  月の宿の四季:
  春月や宿とるまでの小買物 芝不器男( ふきお)

  月見ゆる瀧(たき)見ゆる宿をえらびけり 正岡子規

  風鐸(ふうたく)が床に置かれて月の宿 阿部みどり女(じょ)

  中庭の木のてらてらと月の宿 ハードエッジ

  月の宿二階のとなり同士かな 車谷弘(くるまたに ひろし)

  奈良に来て冬の月夜の宿をとる 星野立子

 

行く秋や海に広がる河の果(は)て ハードエッジ

  広がるの四季:
  温泉の素の広がる朧(おぼろ)かな ハードエッジ

  火は見えで黒く広がる焼野(やけの)かな 高濱虚子

  雨音の屋根に広がる三尺寝(さんじゃくね) 齋藤朝比古(さいとう あさひこ)

  秋風や地下へ広がる丸の内 加藤静夫

  町並の裏に広がる葱畑(ねぎばたけ) ハードエッジ

  黒髪のわつと広がる初湯かな ますぶち椿子

 

 

冬

金賞の菊の余生(よせい)と日向(ひなた)ぼこ ハードエッジ

  先行句:
  金賞の菊の余生よ勝手口 伊藤石英(    せきえい)

  現役のころは、
  金賞の字がまだ濡(ぬ)れて菊花展(きっかてん) 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

 

 

膝(ひざ)に来る冬の日差(ひざし)や猫も来て ハードエッジ

  猫を出せばいいってもんじゃありませんが、、、

  冬の猫:
  猫が知る冬日もつとも濃きところ 伊藤伊那男(  いなお)

  親猫はずつしり重し冬ごもり 日野草城(    そうじょう)

  神さまのやうにまつ白冬の猫 平井照敏(    しょうびん)

  つつがなく白紙にもどる冬の猫 永末恵子

 

 

おしやべりの子に耳貸して毛糸編(けいとあ)み ハードエッジ

  先行句:
  耳貸して毛糸編む手の小止(こや)みなく 麻田椎花(   すいか)

  耳を貸す秀句:
  耳までも貸してしまへり目借時(めかりどき) 能村研三(のむら けんぞう)

 

 

山一つ氷つてゐたる昼の酒 ハードエッジ

  まさか、類句があろうとは!
  国一つ氷つてゐたり空青く 大谷弘至(おおたに ひろし)

  氷っている俳句:
  流し雛(びな)雪が氷つてゐたりけり 岸本尚毅(   なおき)

  人知れずじつと氷つてゐたりけり ハードエッジ

  水音の周り氷つてしまひけり 山本一歩

  足跡の氷つてゐたり雑木山(ぞうきやま) 長谷川櫂(はせがわ かい)

  きらきらと氷つてゐたり雪兎(ゆきうさぎ) 長谷川櫂

 

みづからをなきものにする焚火(たきび)かな ハードエッジ

  自作のなきものの四季:
  雛流(ひななが)し色あるものもなきものも ハードエッジ

  誘蛾燈(ゆうがとう)翅(はね)なきものはよじ登る ハードエッジ

  焦目(こげめ)なきものは秋刀魚(さんま)にあらざりき ハードエッジ

  手袋を罪なきものが踏んでゆく ハードエッジ

  落葉焚(おちばたき)生(せい)なきものの赤く燃ゆ ハードエッジ

 

 

無残(むざん)やな風邪(かぜ)の母から引き離され ハードエッジ

  無残やな:
  無残やな蜘蛛(くも)に喰はれし螢(ほたる)あり 会津八一(あいづ  やいち)

  無残やな熟柿(じゅくし)の上に熟柿落つ ハードエッジ

 

 

白紙へと戻る術(すべ)なき古日記(ふるにっき) ハードエッジ

  白紙の自作:
  B面は白紙卒業証書かな ハードエッジ

  鉛筆で木枯(こがらし)と書く白紙かな ハードエッジ

  一枚の白紙の上に描く枯木 ハードエッジ

 

 

行く年のその足音を聞かんとす ハードエッジ

  聞かんとすの秀句:
  冬の日の海に没(い)る音をきかんとす 森澄雄

  聞かんとすの自作:
  花びらの千切(ちぎ)るる音を聞かんとす ハードエッジ

  金魚玉(きんぎょだま)時の流れを聞かんとす ハードエッジ

  売れ残る虫の哀(あわ)れを聞かんとす ハードエッジ

  凍滝(いてだき)のその轟音(ごうおん)を聞かんとす ハードエッジ

 

 

新年

友らみな老いて目出度(めでた)し年賀状 ハードエッジ

  目出度しの俳句:
  薪(まき)足して火の粉めでたし薪能(たきぎのう) 猪俣千代子(いのまた     )

  贋物(にせもの)のいく代めでたし虫払(むしばらい) 高井几董(   きとう)

  御田植(おたうえ)の太鼓(たいこ)の泥もめでたしや 高野素十(    すじゅう)

  燈籠(とうろう)にならでめでたし生身魂(いきみたま) 各務支考(かがみ しこう)

  かる~と上る目出度し餅(もち)の杵(きね) 高濱虚子(たかはま きょし)

  墨(すみ)はじく金地(きんじ)めでたし筆始(ふではじめ) 下村ひろし

  目出度し自作:
  花の名が海に目出度し桜鯛(さくらだい) ハードエッジ

  爺婆(じじばば)の白髪(しらが)めでたし七五三 ハードエッジ

  藍(あい)すがし茜(あかね)めでたし初日の出 ハードエッジ

  女(め)の神も乗せて目出度し宝船 ハードエッジ

  帆(ほ)にうけて朝日めでたし宝船 ハードエッジ

 

初富士の大浴場を響(ひび)かせて ハードエッジ

  具体的には、
  からからと初湯の桶(おけ)をならしつつ 高濱虚子(たかはま きょし)

  響かせて自作:
  響かせて鉄橋高し雪解川(ゆきげがわ) ハードエッジ

  金棒(かなぼう)を地に響かせて冬立つ日 ハードエッジ

  落葉掻(おちばか)き砂利(じゃり)響かせてゐたりけり ハードエッジ

 

 

歌留多(かるた)取る水仕で冷えし手が早し ハードエッジ

  参考句:
  歌留多よむことの上手な割烹着(かっぽうぎ) 石田郷子

  水仕の自作:
  囀(さえずり)や水仕の音も色々に ハードエッジ

  小手先(こてさき)の水仕なれども冷たかり ハードエッジ

  指にまだ水仕の冷えや毛糸編む ハードエッジ

  新玉(あらたま)の水仕すみたる手を洗ふ ハードエッジ

 

 

卓(たく)の水仙(すいせん)縁側(えんがわ)の福寿草(ふくじゅそう) ハードエッジ

  縁側の秀句:
  縁側欲し春愁(しゅんしゅう)の足垂(た)らすべく 中原道夫

  海の縁側さくら貝さくら貝 水内慶太(みのうち けいた)

  縁側へ居間へ仏間へ西瓜(すいか)かな 齋藤朝比古(さいとう あさひこ)

  縁側の日にゑひにけりお元日 村上鬼城(    きじょう)

 

 

冬

結局は初案(しょあん)に戻る炬燵(こたつ)かな ハードエッジ

  その途中は、
  句を玉と暖めてをる炬燵かな 高濱虚子(たかはま きょし)

  炬燵かなの秀句:
  餅花(もちばな)の高々とある炬燵かな 高濱虚子

  本箱に手の届かざる炬燵かな 会津八一

  猫老いて鼠(ねずみ)も捕(と)らず炬燵かな 村上鬼城(    きじょう)

  自作の炬燵かな:
  楽しくて体にも良き炬燵かな ハードエッジ

  若き日の日記を読める炬燵かな ハードエッジ

  板の上に顎(あご)を乗せたる炬燵かな ハードエッジ

  その人の炬燵でありし炬燵かな ハードエッジ

 

 

木のあはれ草のあはれを雪に消す ハードエッジ

  雪に消える自作:
  赤き実や雪に点(とも)りて雪に消ゆ ハードエッジ

  水仙の切られし跡も雪に消ゆ ハードエッジ

 

 

火事跡の黒き柱や雪女郎(ゆきじょろう) ハードエッジ

  火事跡の秀句:
  火事跡に鮮しき朝の午乳壜(びん) 高島茂

  火事跡のバケツの縁(ふち)につもる雪 皆吉司(みなよし つかさ)

  火事跡の貼紙(はりがみ)にある遠い町 林菊枝

 

 

春

梅匂ふ医者の卵の徹夜明(てつやあ)け ハードエッジ

  梅匂ふの自作:
  紅白は神の依代(よりしろ)梅匂ふ ハードエッジ

 

 

暖かくなればと思ふことばかり ハードエッジ

 

◎初案50句

※大方は季節順ですが、少し例外あり ご容赦

 

 

◎推敲過程 データ

 

◎推敲過程 プリントに手書き

 

以上です