ペア91 涼しさや石より雲の彫り出され 安里琉太

ペア91

◎天井まで

天井にとどけ雛(ひいな)の高御座(たかみくら) 高濱虚子(たかはま きょし)

天井に届く悲しみ涅槃絵図(ねはんえず) ハードエッジ

 

 

◎女の欠伸

花嫁の小さなあくび聖五月(せいごがつ) 鎌田保子

終(しま)ひ湯に欠伸(あくび)して母の日の妻よ 相馬遷子(そうま せんし)

 

 

◎真昼の暗

家暗し田植さ中を戻り来て 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

梅干して来し厨辺(くりやべ)のただ暗く 山口波津女(   はつじょ)

 

 

◎石から雲、闇から仏

涼しさや石より雲の彫(ほ)り出され 安里琉太(あさと りゅうた)

蛍火(ほたるび)は闇に仏を彫るごとし 大串章(おおぐし あきら)

 

 

◎確度

遠雷(えんらい)のいとかすかなるたしかさよ 細見綾子

うすうすとしかもさだかに天の川 清崎敏郎

 

 

◎学と祭

学校街並木も神田祭にて 水原秋櫻子(    しゅうおうし)

大学も葵祭(あおいまつり)のきのふけふ 田中裕明(    ひろあき)

 

 

◎どんな顔

床屋から出て来た貌(かお)の穴子(あなご)かな 川崎展宏(    てんこう)

てふてふの毛虫の顔をいたしけり 辻桃子

 

 

◎喪失割合

惜しみなく過半を欠きし蜥蜴(とかげ)あり 相生垣瓜人(あいおいがき かじん)

蝉(せみ)の腹八分目ほど蝕(むしば)まれ ハードエッジ

 

 

◎薄緑の生死

暁(あかつき)やうまれて蝉(せみ)のうすみどり 篠田悌二郎(しのだ ていじろう)

こときれてなほ邯鄲(かんたん)のうすみどり 富安風生(とみやす ふうせい)

 

 

◎国宝の寺

国宝の氷の寺となりにけり 川崎展宏(    てんこう)

国宝の寺おほらかに隙間風(すきまかぜ) 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

 

 

以上です