炎上をまぬがれたまひ出開帳 清原枴童
花びらに舌打したる蛙哉 小林一茶
獅子舞の心臓ふたつもて怒る 大石雄鬼
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
炎上をまぬがれたまひ出開帳 清原枴童
花びらに舌打したる蛙哉 小林一茶
獅子舞の心臓ふたつもて怒る 大石雄鬼
本箱に手の届かざる炬燵かな 会津八一
ざつくりと割れたるものを闇汁に 岸本尚毅
店の灯の明るさに買ふ風邪薬 日野草城
来て見れば来てよかりしよ梅椿 星野立子
ひたに入りひたひたに満ち田水たり 小川軽舟
ながながと川一筋や雪の原 野澤凡兆
春の都電光りて中の夫見えず 岡本眸
生きものに眠るあはれや龍の玉 岡本眸
初寄席に枝雀をらねど笑ふなり 岸本尚毅
開きたるままの画集や蝶の昼 ハードエッジ
サラリーマンあと十年か更衣 小川軽舟
現れて消えて祭の何やかや 岸本尚毅
でで虫のごくりともどる殻の中 大石雄鬼
潜水艦夏空を見てまた沈む ハードエッジ
遠ざかる一つの時代天の川 ハードエッジ
蛇食ふと聞けば恐ろし雉子の声 松尾芭蕉
金銀の卑しき蠅の集りをる ハードエッジ
子の尿の燦燦として山眠る 押野裕
申し訳なささうな黄を青蜜柑
菊の香のつんと神代の昔かな
一年で果つる虫草秋の風
紅梅の紅の通へる幹ならん 高濱虚子
ソーダ水深きところを吸はれをる ハードエッジ
しぐるるや駅に西口東口 安住敦
七十の母がかしづく雛かな 山田みづえ
あかつきや歩く音して籠の虫 岸本尚毅
風邪の面たはしの如くなりにけり 迷水
満開の花より白し塩むすび ハードエッジ
雨だれの向うは雨や蟻地獄 岸本尚毅
孤独死のきちんと畳んである毛布 北大路翼
空港に大夕立や響きけり ハードエッジ
素読とは大緑蔭にひびきけり 田中裕明
除夜の鐘先づはわが世にひびきけり 百合山羽公
紐解いて枝ひろがるや桃の花 長谷川櫂
あかあかと日は難面くも秋の風 松尾芭蕉
草の根の蛇の眠りにとどきけり 桂信子
遠浅の水清ければ桜貝 上田五千石
柔かく女豹がふみて岩灼くる 富安風生
泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
夕空のなほかすかにもさへづれる 岸本尚毅
行く秋の草にかくるる流れかな 加舎白雄
どんぐりを拾へば根あり冬日向 藺草慶子
かげろふと字にかくやうにかげろへる 富安風生
歌ひつつ聖夜にふらす雪つくる ハードエッジ
西ふけば東にたまる落葉かな 与謝蕪村
大榾をかへせば裏は一面火 高野素十
兵糧のごとくに書あり冬籠 後藤比奈夫
裏側は生れたてなる厚氷 ハードエッジ
春の雪ねえお父さんお母さん 芳野ヒロユキ
母の日のおかあさんてばおかあさん 高澤良一
外套を脱げば一家のお母さん 八木忠栄
凧揚げて歌ふ雲雀を驚かす ハードエッジ
原つぱも喇叭も消えて秋の暮 ハードエッジ
ふはふはの粉雪のごとき毛布かな ハードエッジ
菜の花の中や大きな水たまり 岸本尚毅
末枯の原をちこちの水たまり 高濱虚子
出初式終へて大きな水たまり 白石渕路
バケツにておもちやを洗ふチューリップ ハードエッジ
夏座敷玩具つぎつぎ見せに来る 金子敦
気に入りのおもちや召し寄せ風邪の床 西村和子
花冷も雨もホテルの窓の外 稲畑汀子
網戸から吹き込む雨となりにけり ハードエッジ
雪解の雫すれすれに干布団 高濱虚子
花びらの吹かるるままに吹かれゆく ハードエッジ
けふの月長いすすきを活けにけり 阿波野青畝
湯の町の小学校や冬休 高田風人子
一粒の青き地球の露けしや ハードエッジ
をりとりてはらりとおもきすすきかな 飯田蛇笏
また一つ風の中より除夜の鐘 岸本尚毅
朧にて寝ることさへやなつかしき 森澄雄
荒々と花びらを田に鋤き込んで 長谷川櫂
秋立つや音を違へて稲と草 岸本尚毅
ほほといふ口して三人官女かな 高田正子
現し世の砂美しや蟻地獄 ハードエッジ
漱石が来て虚子が来て大三十日 正岡子規
春めくを冬田のために惜しむなり 相生垣瓜人
照れば金日かげれば銀芒かな 下村梅子
遠山に日の当りたる枯野かな 高濱虚子
かたまつて薄き光の菫かな 渡辺水巴
白牡丹といふといへども紅ほのか 高濱虚子
羽子板の重きが嬉し突かで立つ 長谷川かな女
花の芯すでに苺のかたちなす 飴山實
籐椅子を抜ける西日となりにけり 長谷川櫂
自転車に詰める空気も年用意 ハードエッジ
四万六千日の暑さとはなりにけり 久保田万太郎
日当りて向ふへ長し鳴子縄 高野素十
雪催ふ琴になる木となれぬ木と 神尾久美子