ペアリング64 封切れば溢れんとするかるたかな 松藤夏山

ペアリング64

◎電車を見る

春の都電光りて中のつま見えず 岡本眸    ひとみ

踏切に見上ぐる電車クリスマス 小川軽舟    けいしゅう

 

 

◎箪笥の外へ

帯箪笥おびたんすはみ出て長き春の帯 長谷川かなじょ

箪笥からはみだす姉のはらわたも春 西川徹郎    てつろう

緋縮緬ひちりめんみ出す箪笥とはの秋 三橋敏雄

 

 

◎タンスの上

裏店うらだなやたんすの上の雛祭ひなまつり 高井几董   きとう

小箪笥に雛ぽちとある叔母おばへり 久米三汀く め さんてい

豆雛が箪笥の上に忘られて 臼田亞浪うすだ あろう

下駄げた買うて箪笥の上や年の暮 永井荷風   かふう

 

 

◎ふくれ、あふれる

雛箪笥あくやふくらみでる縮緬 澁谷道しぶや みち

封切ればあふれんとするかるたかな 松藤夏山まつふじ かざん

 

 

◎書物の上

しづかなり聖書の上のサングラス 加藤静夫

時刻表・地図その上にパナマ帽 片山由美子

 

 

◎大きな建物

蛍火ほたるびや山のやうなる百姓家 富安風生とみやす ふうせい

日当ればいわおのごとき霜の宿 田中裕明    ひろあき

 

 

◎欠落

そのひとの亡けれど冬のあたたかに 田中裕明

初寄席はつよせ枝雀しじゃくをらねど笑ふなり 岸本尚毅   なおき

 

 

◎若草山

末枯うらがれの若草山となりにけり 正岡子規  しき

若草の若草山となりにけり 三村純也

 

 

◎眠る幸、眠る哀れ

まづしきものに眠るさちあり雪つもる 成瀬櫻桃子なるせ おうとうし

生きものに眠るあはれやりゅうの玉 岡本眸

 

 

◎色と模様

一軒家より色が出て春着はるぎの児 阿波野青畝あわの せいほ

ひざに来て模様に満ちて春着の子 中村草田男   くさたお

 

 

以上です