追加:お面/2020.3.28、御鼻の先/2019.10.18、お化け3句/2019.10.11、お百姓/2019.7.25、おかつぱ/2019.7.3、お濠端/2019.6.15、お日/2019.6.11、お代り/2018.10.18、お風呂/2018.10.12、お稲荷さん/2018.10.9、揚雲雀/2018.10.1、泥鰌鍋・竜の玉/2018.9.29、桜月夜/2018.9.15、石鹸玉・ゆたんぽ・針箱/2018.9.11、枇杷・菖蒲祭/2018.9.8、前掛/2018.9.7、お堂/2018.7.25、お山/2018.7.14、お天守/2018.4.2、お土産/2018.2.28、お砂場/2018.2.2、お玉/2018.1.30、お地蔵/2018.1.29、おさい/2018.1.6、1句追加/2017.11.25、加筆再構成/2017.11.22
俳句類題 接頭語【お】
接頭語の「お」が含まれる俳句です
季語にも、
お彼岸、お山焼、お水取、お花見、お涅槃、お花畑、お盆、お正月、お降り、お年玉、
等がありますが、
今回は季語以外の、お付の俳句を集めてみました
◎お父さんと、お母さんです
春の雪ねえお父さんお母さん 芳野ヒロユキ
絶妙の「ねえ」です
何かを話そうと言うのでなく、
そこにいることに、いてくれることに安心した「ねえ」
表記は「ねぇ」だと思っていました
この字面のクビレが如何にも、呼びかける「ねぇ」らしいと、、、
が、念の為、
句集『ペンギンと桜』を見直したら、
「ねえ」でした
(下端に参考画像)
「ねえ」絡みで、横道にそれます
夜霧ああそこより「ねえ」と歌謡曲 高柳重信
歌謡曲の本質
さらに、
俳句と名乗ってはいるものの、大幅字余りの「ねえ」俳句
人足の子だからかまわねえのか子供と子供とどこが違うんだえ、え、え 橋本夢道(むどう)
※人足=にんそく
「え、え、え」までが一つの俳句です
迫力です
橋本夢道さんは、こうした自由律俳句の人(字余り傾向)なんですが、
1937年、銀座の甘味処「月ヶ瀬」創業に参画し、
キャッチコピーとして、
みつまめをギリシャの神は知らざりき 橋本夢道
という、惚れ惚れするような定型俳句を作ってます
さて、再びお付俳句です
母の日のおかあさんてばおかあさん 高澤良一
日常会話の端役に過ぎない「てば」を、主役に抜擢
「てば」の持味を、活かしきった作品と言えます
母親冥利
今生の汗が消えゆくお母さん 古賀まり子
※今生=こんじょう
枇杷剥くや「大きくなつたらおかあさん」 山下千津子
外套を脱げば一家のお母さん 八木忠栄
※外套=がいとう
よそ行きのお母さんから、
一家の真ん中にいるお母さんへ
逆バージョンに、こんな句があります
割烹着脱げば晴着や針供養 池上浩山人(こうさんじん)
※割烹着=かっぽうぎ、針供養=はりくよう
前掛を取れば外着や針供養 西村和子
おかあさんどいてと君子蘭通る 池田澄子
お通りです
ちなみに、
手元の55万句に「母」は9600余句、
その内、「お母さん」は、わずか8句でした
(「おかあさん」は6句)
◎その他の人々と体です
おともだちあまりゐないの桃の花 坊城俊樹
親の感想ではなく、
本人の独白という物凄さ
桃の花が救いです
はつ夏の空からお嫁さんのピアノ 池田澄子
大邸宅!青い空に緑の庭園
そこに、
漆黒のピアノがクレーンで運ばれて来た、と読みました
イメージとしてはグランド・ピアノ
それはお嫁さんの後ろに控えた「他家」の存在です
長年、そう思い込んでましたが、
ピアノをピアノの音、とする読み方もあるようです
なるほどねえ
→増殖する俳句歳時記、清水哲男さん解説
箱庭に置くおぢいさんおばあさん 火箱游歩(ひばこ・ゆうほ)
そこで幸せに暮しましたとさ、
なのか、
姥捨山なのか、、、
等と考えていて、、、即興
箱庭や姥捨山に捨てられて ハードエッジ 2017.7.14 14:34
改案、箱庭の姥捨山に捨ててやろ ハードエッジ 2017.11.15
ややこしいお人ははづし泥鰌鍋 内田美紗
おかつぱの黒髪に花盆踊 ハードエッジ
音もなく歩くお方や城の秋 岸本尚毅(なおき)
戦でも、大奥でも、観光名所でもないお城
生きてるんでしょうか、この方は
ちなみに、
55万句中、「お方」はただの3句でした
荒れもせで二百十日のお百姓 高濱虚子
お嬢さんお入んなさい寒夕焼 ハードエッジ
※お嬢さん=おじょうさん、寒夕焼=かんゆやけ
御仏の御鼻の先へつらら哉 小林一茶
ミック・ジャガーの小さなおしり竜の玉 内田美紗
◎生き物みたいな
お雛さま永久はさびしと微笑みぬ 中塚健太
※永久=とわ、微笑み=ほほえみ
そんな事情があったとは
幼くてお玉と呼ばれ蛙の子 ハードエッジ
お面らの笑みて祭を売れ残る 坊城俊樹
「お面ら」ですよ「お面ら」!!!
星祭とはまだ書けずおほしさま ハードエッジ
天高くお稲荷さんに稲荷ずし ハードエッジ
長き夜をお化けと遊ぶ物語 ハードエッジ
菊花展お化けのやうな菊がある ハードエッジ
お化け南瓜と父の並んでいる写真 斉田仁
信心のお南瓜様の頭かな ハードエッジ
※信心=しんじん、南瓜=かぼちゃ
(鰯の頭ならぬ、、、)ハロウィンです
お地蔵の笠借り申す雪狐 ハードエッジ
昔話「笠地蔵」が下敷にあります
道に迷った狐がお地蔵さんの笠を借りてゆく感じ
→「笠地蔵」/wiki
◎天です
元日のお日はたうたうたらりかな 中島月笠
◎食品です
お茶漬をさらさら桜月夜かな 鈴木鷹夫
ままごとの飯もおさいも土筆かな 星野立子
※飯=いい、土筆=つくし
秋雨のお稲荷さんの値引かな ハードエッジ
焼藷もお汁粉も出て初句会 稲畑汀子(ていこ)
※焼藷=やきいも、汁粉=しるこ
◎建物や場所です
うららかなお部屋ありますみゆき荘 ハードエッジ
日当良好
お天守の中の暗さや花曇 森田愛子
灌仏のお寺の庭に手毬つき 阿部みどり女
※灌仏=かんぶつ、手毬=てまり
ゆく春のお寺の中に貸家かな 高橋淡路女
お城では菖蒲祭をしてゐるよ ハードエッジ
風鈴やお山といへば上野山 加藤静夫
夢の世の砂のお城と海の家 ハードエッジ
プールにもお風呂のやうにゆつくりと 北大路翼
図書館は青葉若葉のお濠端 ハードエッジ
秋風や土の上なる木のお堂 岸本尚毅
お天守へ高きに登る心もて 高濱年尾
仲秋のお城を撫でてつめたさよ 岸本尚毅
※撫でて=なでて
さわる、のでなく
なでる、のがなんとも不気味です
ゴジラ曰く「こいつは燃やし甲斐がありそうだぜ」とか、、、
お屋敷の音にこそ聞け松手入 ハードエッジ
※屋敷=やしき、松手入=まつていれ
お砂場に半ばうもれて春を待つ ハードエッジ
◎生活と礼儀です
石鹸玉宇宙旅行のお土産に ハードエッジ
菜の花やお使ひ出来る子に育ち 中村汀女(ていじょ)
おこぼれや我らが上の揚雲雀 ハードエッジ
お代りの小さき茶わんや豆ごはん ハードエッジ
赤い羽根お礼の声も揃ひたる 中本真人
駅前に並んだ小中高校生
ままごとのお金はもみぢ兄いもと 井本農一
おしろいの花のお祭り騒ぎかな ハードエッジ
小春日の母の小さなお針箱 福神規子
修奈羅峠のお金の神様肩まで雪 小澤實
※修那羅峠=しゅならとうげ/しょならとうげ
大いなる毛皮をとりておじぎかな 星野立子
寒夕焼お詫びの如く赤くある ハードエッジ
※お詫び=おわび、如く=ごとく
春著きて孔雀の如きお辞儀かな 上野泰(やすし)
※春著=はるぎ、孔雀=くじゃく、辞儀=じぎ
さびしくて他人のお葬式へゆく 石部明(川柳)
川柳の狂気
◎その他
石鹸玉お伽のくにの夢のいろ 上村占魚
湯たんぽもおとぎ話も眠たしや ハードエッジ
◎まとめの3句
春の雪ねえお父さんお母さん 芳野ヒロユキ
母の日のおかあさんてばおかあさん 高澤良一
今生の汗が消えゆくお母さん 古賀まり子
以上、お読み頂きありがとうございました/2017.7.14
参考資料:芳野ヒロユキ『ペンギンと桜』
微妙に「え」が小さいようにも見えますが、
「ねぇ」ではなさそうです