俳壇賞2017
落選作
「百万ボルト」30句 ハードエッジ
ぬかるみも春立つ色に踏まれつつ
春浅き富士に木花咲耶姫
暖かや先を急がぬ教習車
種子袋四角目覚時計丸
紫雲英田を土俵としたる男の子
陽炎やミニスカートがまた流行る
春昼の積木崩しの悲鳴らし
うつとりと雲雀聞きつつ椿落つ
母の日の知らぬは母の誕生日
丼を重ねて重し濃紫陽花
蟻地獄日々の手入の行き届き
一寸手を振つてやりたや撒水車
裸子の水に飛び込む水しぶき
秋晴が見えて日陰も伸びて来て
架空なる送電線や蚯蚓鳴く
花びらの流るる如く天の川
弁当や松美しき松手入
ある時は小豆色なる秋夕焼
銀杏散る夜毎に遅き月の下
初雪の名のみ残りし日暮かな
今年また家の建ちたる大枯野
電圧は百万ボルト雪の山
年の瀬を用心せよと消防車
山々を驚かしたる除夜の鐘
初夢を見てゐる我の笑ふかも
声にして歌ふが如く歌留多読む
月雪をさまよふ花の絵双六
凍鶴に食はるるものも氷りをる
戴冠の雪の薔薇となりにけり
探梅の人も蕾も疎らなる
以上です