春 【雛祭4】 うす紙をはがすときめき雛飾る

全然堂歳時記 春の部
【雛祭4】ひなまつり

全然堂歳時記=現在、本号を含め111記事=春夏秋冬–年末年始=30-25-23-21–5-7
/2025.3.1

子季語:雛飾、雛人形、雛調度、雛道具、雛屏風、雛壇、紙雛、立雛、内裏雛、享保雛、官女雛、五人囃、古雛、雛の燭、雛の宴、雛の宿、雛の客
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わが俳句データベースには「雛祭」の句が1900句/自作除外 ほどあり、
真似して作句するには充分過ぎるものの、
類句チェックにも時間を要したのでした
なお、自作の推敲も含めた全句数は500句超
推敲の元となる原句数は100句少々でした
そこから全然堂歳時記に採用したのが78句なので、
作句効率は高め、なのか寛選なのか、、、 (^_^;;;

◎葉書俳句

◎テキスト

うす紙をはがすときめき雛飾ひなかざる ハードエッジ

うす紙:
うす紙のふくらむところ雛の鼻 辻桃子
薄紙につつみて薔薇の蕾かな 長谷川櫂
薄紙にくるむベーコン漱石忌 千野千佳

雛飾ひなかざ双子ふたごといへど姉いもと ハードエッジ

双子:
春風や韻を踏みたる双子の名 日原傳
手にとりし雛のあられの双子かな 上野泰
遠足の別々にゐる双子かな 岡田由季
入学の双子リボンの色かへて 吉村恵子
双子なら同じ死顔桃の花 照井翠

南方に台風生るる双子らし ハードエッジ

寒卵割れば双子の目出度さよ 高濱虚子

子猫より小さな雛を飾りけり ハードエッジ

飾りけり:
春の雪最後の授業飾りけり 稲畑汀子
雛あられちよつと揺すりて飾りけり 山尾玉藻
春のほか知らぬ雛を飾りけり 鶴田玲子
舌すこしのぞける雛飾りけり 綾部仁喜
紐解いて蓋開けて雛飾りけり ハードエッジ
日曜の早起きに雛飾りけり ハードエッジ
もう鳴かぬ亀の化石を飾りけり 日原傳

乱好む太刀にあらずと飾りけり 阿波野青畝

橙のただひと色を飾りけり 原石鼎

雛飾ひなかざるポニーテールや銀髪ぎんぱつの ハードエッジ

銀髪:
鬣の如き銀髪雪女郎 ハードエッジ
銀髪や赤いコートをひるがへし ハードエッジ

初髪の銀髪いよよ尊けれ ハードエッジ
黒髪も銀髪も美し初芝居 ハードエッジ

雛飾ひなかざ役職やくしょく別の段々に ハードエッジ

段々:
眉のやうな丘に段々春の宮 川崎展宏

峠から見る段々の青田かな 正岡子規
冷酒のおりる段々咽にあり 川崎展宏

家高低稲段々に山の裾 正岡子規

前奏ぜんそうの長さ「うれしいひなまつり」 ハードエッジ

『うれしい ひなまつり』作詞:サトウハチロー/作曲:河村光陽/YouTube

ひなまつりお内裏だいりさまとお雛さま ハードエッジ

上記の童謡の歌詞そのまま

大奥に飾りしといふ古雛ふるひいな ハードエッジ

大奥:
大奥は花の香に噎せ菊人形 鷹羽狩行

妹は乳飲めばる雛のえん ハードエッジ

飲めば:
われら一夜大いに飲めば寒明けぬ 石田波郷
浅蜊呟きゐたり酔後の水飲めば 細川加賀
茸汁これほど飲めば僧になる 大牧広
風邪薬朝晩飲めばよくなりぬ ハードエッジ

つまんでもみたきほつぺた雛祭 ハードエッジ

よく笑ふ弟も入れ雛のえん ハードエッジ

よく笑:
ゆく春やよく笑ひよく喋る劇 大場白水郎
よく笑う海女の年齢不詳なる 宇多喜代子

ふぐり無き涼しさによく笑ふなり 加藤静夫
よく笑ふ停学の友ソーダ水 杉本零
よく笑ひよく泣きビニールプールかな 佐川盟子
よくわらふ赤子に螢飛ぶさうな 田中裕明

箸の夜食も匙の夜食もよく笑ふ ハードエッジ

冬の旅楸邨門下よく笑ふ 猪俣千代子
よく笑ふ妻ゐて勤労感謝の日 加古宗也

よく笑ふ女礼者や草の庵 高濱虚子

座布団ざぶとんの猫を退かせて雛の客 ハードエッジ

雛の客:
順番に赤子を抱く雛の客 抜井諒一
恐竜の名を諳んじて雛の客 日原傳
皆老いて雛の客とも思はれず 高木晴子
僧三人雛の客とて来りけり 武原はん女
白酒や夜は夜で老の雛の客 山川能舞
長靴で泥濘を来し雛の客 ハードエッジ

ひなあられ庭の緋鯉ひごいに投げてやる ハードエッジ

緋鯉:
春ときに緋鯉の狎れのうとましき 飯田龍太
種俵緋鯉の水につけてあり 星野立子

緋鯉真鯉卯の花腐しうれしくて 阿波野青畝

松さびて緋鯉も居らず秋の水 正岡子規

大寒の緋鯉がをれば真鯉をる ハードエッジ
緋の色の緋鯉を沈め寒の水 ハードエッジ

緋鯉真鯉身を差し交し去年今年 森澄雄

雛壇ひなだんに牛の鳴き声御所車ごしょぐるま ハードエッジ

御所:
移り香や御所より下る春の宵 正岡子規
雛壇や還御待ちある御所車 野村喜舟
櫻咲き御所から鳥も来るといふ 大野林火
御所よりの落花と思ふ手にうけて 山口青邨

汗かかぬやうに歩きて御所の中 波多野爽波
御所にして夏座敷また夏座敷 岸本尚毅
加茂衆の御所に紛るる祭かな 黒柳召波

何の木といふことなしに御所紅葉 阿波野青畝

しくるゝやいつこの御所の牛車 正岡子規

雛の日にらんを忘れず矢大臣やだいじん ハードエッジ

雛の日:
カレンダーめくりあらはる雛の日 高濱虚子
日脚伸び伸びて雛の日に至る 波多野爽波
雛の日の郵便局の桃の花 深見けん二
雛の日とてリボンつけたる女猫哉 久宝
雛の日をすぎし絵雛は瞑るごと 井沢正江
雛の日を揃はずいよよ老姉妹 岡田和子
鯉が食う雛の日すぎし雛あられ 和知喜八

雛壇ひなだん左右さう老若ろうにゃく矢大臣やだいじん ハードエッジ

矢大臣:
矢大臣の顔修繕や神無月 西山泊雲
口開いて矢大臣よし初詣 阿波野青畝
初詣白歯よろしき矢大臣 松藤夏山

雛壇ひなだんの赤きにめるお白酒しろざけ ハードエッジ

酌める:
肌脱ぎて酌める師弟でありしかな 上田五千石

雛箪笥ひなだんすの底に小さくたくみの名 ハードエッジ

雛箪笥:
二棹はほしき雛の箪笥かな 後藤比奈夫
雛箪笥あくやふくらみでる縮緬 澁谷道

朱鷺色ときいろくは楽しや雛祭 ハードエッジ

朱鷺色:
アンデスの塩は朱鷺色雲の峰 金子敦

雛の日の生放送なまほうそう合唱部がっしょうぶ ハードエッジ

放送:
麓より有線放送初桜 さかい幹生

放送は子供神輿の来る知らせ 斉藤友栄
畏くも玉音放送花かぼちゃ 高澤良一

刈田昏れ角力放送持ちあるく 秋元不死男
本部席の放送部員運動会 ハードエッジ

軍楽の短波放送大寒波 ハードエッジ
冬帝の寒波放送かも知れず ハードエッジ
外つ国の短波放送寒波来る ハードエッジ

NHK第一放送除夜の鐘 ハードエッジ

五秒まへ放送室に淑気満つ 川崎展宏

◎初案18句

ひなあられ庭の緋鯉に投げてやる ハードエッジ
仔猫より小さき雛を飾りけり ハードエッジ
溶き皿に溶く色々や卒業す ハードエッジ
三人の二人は双子七五三 ハードエッジ
大奥に飾りしといふ古雛 ハードエッジ

よく笑ふ弟のゐる雛祭 ハードエッジ
座布団は空を飛ばねど雛の客 ハードエッジ
前奏の長きが嬉し雛の歌 ハードエッジ
雛飾るポニーテールや白髪の ハードエッジ
赤ん坊のやはらかな肉ひな祭 ハードエッジ

ひなまつりお内裏さまとお姫さま ハードエッジ
雛様をお守り申す矢大臣 ハードエッジ
うす紙をはがす喜び雛飾る ハードエッジ
雛箪笥引けば引かるるめでたさよ ハードエッジ
雛壇の赤きに酌めるお白酒 ハードエッジ

雛壇に役職の名で並びけり ハードエッジ
雛の世の牛の歩みの牛車 ハードエッジ
雛の日の社員食堂楽までも ハードエッジ

 

◎推敲句一覧/pdf

全110句/2枚

全然堂歳時記 春 【雛祭4】推敲 テキスト

 

今回はほとんどPC上/桐v10で行ったので、
紙上の推敲は省略

◎A4推敲 原稿/pdf

◎A4推敲 加筆/pdf

◎葉書推敲 原稿/pdf

◎葉書推敲 加筆/pdf

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

◎雛祭秀句

春のほか知らぬ雛を飾りけり 鶴田玲子
一寸ゐてもう夕方や雛の家 岸本尚毅
雛壇に美しかりし夕日かな 星野立子
草の戸も住み替る代ぞ雛の家 松尾芭蕉
雛飾りつつふと命惜しきかな 星野立子

飾られて眠らぬ雛となり給ふ 五所平之助
お雛さま永久はさびしと微笑みぬ 中塚健太
笑ふかに泣くかに雛の美しく 上野泰
ほほといふ口して三人官女かな 高田正子
ことごとくまことをうつし雛調度 本田あふひ

婚の荷をひろげるやうに雛飾る 猪俣千代子
打ちかけの碁盤やそれも雛のもの 片山由美子
皆老いて雛の客とも思はれず 高木晴子
老いてこそなほなつかしや雛飾る 及川貞
女の子坐つて泣けり雛の前 加藤三七子

天井にとどけ雛の高御座 高濱虚子
カレンダーめくりあらはる雛の日 高濱虚子
灯してうき立ち見ゆるひひなかな 星野立子
影といふものの色めき雛飾る 村田脩
歪まざるものなき雛の鏡かな 山西雅子

夜を籠めて降りて雪晴雛飾る 後藤夜半
雛守りて硝子ケースも古びけり すずきみのる
金褪せず色褪せにけり古雛 大橋敦子
かんばせのひびのかなしき雛かな 野村喜舟
仕る手に笛もなし古雛 松本たかし

雛祭り古き写真の吾と誰か 松井直子
雛かざる母に少しの国訛り 青木栄子
雛の灯や母の名一字もらひし子 岬雪夫
老妻の飾りし雛を見てやりぬ 富安風生
東西に嫁して姉妹や雛飾る 石昌子

雛の日を揃はずいよよ老姉妹 岡田和子
世に古りてなほ娘なる雛祭 日野草城
闇のなか髪ふり乱す雛もあれ 桂信子
雛の顔鼻無きがごとつるつると 高濱虚子
うす紙のふくらむところ雛の鼻 辻桃子

たらちねの抓までありや雛の鼻 与謝蕪村
おん口のゝ(ちょん)と小さゝよ婢子雛 富安風生
手をとつて折らせし紙の雛かな 長谷川櫂
雛過ぎし畑の桃となりにけり 富安風生
雛の日の郵便局の桃の花 深見けん二

裏店やたんすの上の雛祭り 高井几董
雛壇に小さき箒ちりとりと 高田正子
二人して雛にかしづく楽しさよ 夏目漱石
三人の下に五人や雛飾る 岸本尚毅
美しきぬるき炬燵や雛の間 高濱虚子

置かれては少しずらされ雛飾る 鈴木総史
雛の日とてリボンつけたる女猫哉 久宝
厨房に貝が歩くよ雛祭 秋元不死男
雛このさらはれさうな軽さかな 津川絵理子

「雛祭の俳句と切口」/note もご参照ください

◎未練句/補遺/在庫処理

雛壇に小さき写真飾りある ハードエッジ
雛の日の社員食堂楽流す ハードエッジ
その昔母と飾りし雛かな ハードエッジ

以上です