角川俳句賞2022 落選作 プランB 進むレジ進まぬレジや葱を手に

角川俳句賞 2022 落選作
プランB「ベンゼン環」50句

落選作

◎葉書俳句

 

◎テキスト

春

メリーゴーラウンド春光(しゅんこう)を紡(つむ)ぎ出す ハードエッジ

改訂版:
メリーゴーラウンド春光を撒(ま)き散らし ハードエッジ 2022.9.16

回転木馬:
春星へ回転木馬輪をほどく 対馬康子(つしま やすこ)
夏痩(なつや)せてメリーゴーランドと沈む 大石雄鬼(   ゆうき)
閉園(へいえん)の油臭のメリーゴーラウンド 三橋敏雄(みつはし としお)

日めくりのまだ分厚(ぶあつ)くて春の雪 ハードエッジ

日めくり:
日めくりの減るも涼しきひとつにて 正木(まさき)ゆう子
日めくりの明日が透けて鰯雲(いわしぐも) 瀬間陽子
日めくりも寂(さび)しくなりぬおでん酒 ハードエッジ
大いなる日めくり紙漉女(かみすきめ)の上に 辻桃子
日めくりの昨日枯葉のごとく捨(す)つ 神長裕子

春雪(しゅんせつ)の仮(か)りそめに組む花筏(はないかだ) ハードエッジ

かりそめ:
淡雪(あわゆき)やかりそめにさす女傘(おんながさ) 日野草城(    そうじょう)
かりそめの蜜(みつ)にふくるる蜂(はち)の腹 ハードエッジ
かりそめの街とは言はじ夕櫻(ゆうざくら) 中村汀女(    ていじょ)
ひととせはかりそめならず藍浴衣(あいゆかた) 西村和子
かりそめの露(つゆ)にも影のありにけり 倉田紘文(    こうぶん)
かりそめに衣たるモデルの夜食かな 日野草城(    そうじょう)
七夕(たなばた)や別れに永久(とわ)とかりそめと 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
かりそめにかけし干菜(ほしな)のいつまでも 高濱虚子(たかはま きょし)
かりそめの赤目の哀(あわ)れ雪兎(ゆきうさぎ) ハードエッジ
かりそめの襷(たすき)かけたる春著(はるぎ)かな 久保田万太郎
ふる雪のかりそめならず年用意(としようい) 久保田万太郎

ひんがしの山の雪解(ゆきど)け日本海 ハードエッジ

日本海:
籾殻(もみがら)のひとり燃えゐて日本海 神蔵器(かみくら うつわ)
日本海の寒さの沁(し)みし蟹(かに)甘し 宮津昭彦(みやつ あきひこ)
短日(たんじつ)の日本海鳴る下校かな 大峯(おおみね)あきら
 ※短日(みじかび)かも
冬の虹(にじ)消えて残りし日本海 菖蒲(しょうぶ)あや
ねんねこや生(あ)れし日よりの日本海 岡本眸(    ひとみ)
いくらでも雪捨てられて日本海 ハードエッジ
日本海に太平洋に千代の春 ハードエッジ

ふらここや靴(くつ)を飛ばして足長き ハードエッジ

足長:
足長の飛蝗(ばった)なれども髭(ひげ)短か ハードエッジ

春燈(しゅんとう)の消えて闇夜(やみよ)の影法師(かげぼうし) ハードエッジ

影法師:
土筆(つくし)摘(つ)んで立ち上りわが影法師 星野立子
芽ぐみたる枝賑(にぎ)はしや影法師 富安風生(とみやす ふうせい)
児の墓に秋日の母の影法師 浜井武之助
影法師月に並んで静かなり 夏目漱石(なつめ そうせき)
影法師刈田(かりた)に沈み畦(あぜ)にうき 高濱虚子(たかはま きょし)
刈(かり)あとやひとり案山子(かかし)の影法師 正岡子規(  しき)
虫聞くや庭木にとゞく影法師 高野素十(    すじゅう)
ひいき目に見てさへ寒し影法師 小林一茶(   いっさ)
冬の日や馬上に氷る影法師 松尾芭蕉(    ばしょう)
あをざめてゐし雪の上の影法師 西村和子
影法師の吾(われ)があはれや懐手(ふところで) 高濱虚子(たかはま きょし)

何の菜(な)か宿の菜飯(なめし)の色違(いろちが)ひ ハードエッジ

色違:
しやぼん玉兄弟髪の色違ふ 西村和子
春燈(しゅんとう)の色違ひたる二間(ふたま)かな 正木ゆう子
一枚の青田の青の色違ふ 山本一歩(   いっぽ)
牡丹(ぼうたん)の色違へども蘂(しべ)の金 川崎慶子

切先(きっさき)の鋭(するど)きを地に挿木(さしき)かな ハードエッジ

切先:
沸(わ)きし湯に切先青き菖蒲(しょうぶ)かな 中村汀女(    ていじょ)
肩に置く髪の切先冬に入る 正木ゆう子
寒稽古(かんげいこ)師(し)に切先を向けにけり 加藤静夫
牡蠣鍋(かきなべ)の葱(ねぎ)の切つ先そろひけり 水原秋櫻子(みずはら しゅうおうし)
門松(かどまつ)の竹の切鋒(きっさき)何斬(き)るメス 楠本憲吉(くすもと けんきち)

妻に子に我に臍(へそ)あり万愚節(ばんぐせつ) ハードエッジ

臍:
鉄棒にぶらさがる子の春の臍 千野千佳(ちの ちか)
あんぱんの葡萄(ぶどう)の臍や春惜(はるお)しむ 三好達治(みよし たつじ)
臍もなき大和島根に春の富士 川崎展宏(    てんこう)
風船は涙のかたち臍もある ハードエッジ
鑿彫(なたぼ)りの誕生佛(たんじょうぶつ)の乳と臍 辻桃子
見つけたり蛙(かえる)に臍のなきことを 横井也有(   やゆう)
大木の臍の高さに巣箱かな 石原百合子
永らへし臍もべそかく大暑(たいしょ)かな 攝津幸彦(せっつ ゆきひこ)
臍出して雷様の大暴(おおあば)れ ハードエッジ
行水(ぎょうずい)の雷(かみなり)臍を驚かす 正岡子規(  しき)
水着着てマネキンに臍らしきもの ハードエッジ
ダイバー消え水面(みなも)に臍のごときもの 小久保佳世子(こくぼ かよこ)
臍昏(くら)し桜桃(おうとう)の種うづめたき 古田秀
秋風や汝(なんじ)の臍に何植ゑん 藤田哲史(ふじた さとし)
木の実のごとき臍もちき死なしめき 森澄雄(  すみお)
嚏(くしゃみ)の巣臍の右とも左とも 宇多喜代子(うだ きよこ)
初湯出て臍もまたたくことをせし 野中亮介(のなか りょうすけ)

名札は胸に苗札(なえふだ)は赤土に ハードエッジ

名札:
春かなし下駄箱(げたばこ)の名札みな剥(は)がされ ハードエッジ
植木市(うえきいち)当て字ばかりの名札付く 右城暮石(うしろ ぼせき)
小さき蝶(ちょう)大き名札を付けられて ハードエッジ
産科(さんか)とふ名札はたのし春隣(はるとなり) 中村汀女(    ていじょ)
待春(たいしゅん/まつはる)の名札ばかりに百花園(ひゃっかえん) 中戸川朝人(なかとがわ ちょうじん)
門弟(もんてい)の名札そろふや鏡餅(かがみもち) 中村吉右衛門(きちえもん)

古株(ふるかぶ)に日の目を見せて根分(ねわけ)かな ハードエッジ

日の目:
人参(にんじん)や日の目を見ずに日の色に ハードエッジ

遠足の園児(えんじ)と聞けばそれだけで ハードエッジ

園児:
園児来ぬ日よふらここの淋(さび)しき日 後藤比奈夫
入園児母の刺繍(ししゅう)にうづめられ 福永耕二
菜の花に園児は見えず保母(ほぼ)二人 ハードエッジ
百日紅(さるすべり)園児ねむりの刻(とき)来(きた)る 飯田龍太
バス来たと園児らのこゑ天高し 金子敦
もどかしき園児の玉入れ運動会 高澤良一
赤鬼(あかおに)が好きな園児や鬼は外 ハードエッジ

復活(ふっかつ)のなき安(やす)らぎの涅槃像(ねはんぞう) ハードエッジ

復活/季語以外:
飛花落花(ひからっか)敗者(はいしゃ)復活戦(ふっかつせん)も果(は)て ハードエッジ

蝶(ちょう)になる夢を忘れし蜆(しじみ)やも ハードエッジ

なる夢:
紅梅(こうばい)の白梅(はくばい)となる夢の底 秋元不死男(あきもと ふじお)
昼寝の象鼻長くなる夢を見る 瀬戸優理子
蚕豆(そらまめ)は玉になる夢忘れしや ハードエッジ
鶏頭(けいとう)の木になる夢を捨てきれず 大串章(おおぐし あきら)
魚になる夢に目覚めてなほ寒し 辻美奈子
美しき蝶(ちょう)になる夢春を待つ ハードエッジ

辞書に並ぶ「ミサ」と「ミサイル」恋の猫 ハードエッジ

辞書:
暖かや辞書第一ページに「愛」 安住敦(あずみ あつし)
四隅(よすみ)より辞書は滅(ほろ)びぬ花ミモザ 太田うさぎ
斯許(かばか)りの辞書のな行に夏・日本 ハードエッジ
見開きの辞書の昼寝や風も出て ハードエッジ
辞書の名の苑(その)や泉(いずみ)や春を待つ 藤村克明

あくびなら子猫も負けてをらざりし ハードエッジ

あくび:
永き日や欠伸(あくび)うつして別れ行く 夏目漱石(なつめ そうせき)
口まげしそれがあくびや蝶(ちょう)の昼 清崎敏郎(きよさき としお)
寝て起(おき)て大欠(おおあくび)して猫の恋 小林一茶(   いっさ)
春はまだ熊(くま)の欠伸(あくび)と蕗(ふき)の薹(とう) ハードエッジ
花嫁(はなよめ)の小さなあくび聖五月(せいごがつ) 鎌田保子(かまた やすこ)
埓(らち)もなや蚊遣(かやり)の妻の大あくび 日野草城(    そうじょう)
岸に釣る人の欠伸や舟遊(ふなあそび) 高濱虚子(たかはま きょし)
ひつそりと遠火事(とおかじ)あくびする赤子 西東三鬼(さいとう さんき)
枯(かれ)深し欠伸を包むたなごころ 岡本眸(    ひとみ)
やはらかな赤子のあくび年明くる ハードエッジ

切つてあるハムやチーズや朝桜(あさざくら) ハードエッジ

ハム:
多喜二忌(たきじき)や糸きりきりとハムの腕 秋元不死男(あきもと ふじお)
紫陽花(あじさい)やハムを土台の目玉焼 ハードエッジ
どんと置く骨抜ハムや冬深し ハードエッジ
ハムの切口の渦(うず)巻くクリスマス 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
ウインドのハムにもリボンクリスマス 西村和子

ゴジラいま地球の味方花吹雪(はなふぶき) ハードエッジ

味方:
敵味方入り乱れたるシャワーかな 齋藤朝比古(さいとう あさひこ)
みづすまし味方といふは散り易(やす)き 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
敵味方ともに香りて菊人形 林昭太郎(  しょうたろう)
とんぼ連れて味方あつまる山の国 阿部完市(あべ かんいち)
膝掛(ひざかけ)をして味方得し思ひかな 片山由美子
ふりがなを付けると味方らしくなる 月波与生(つきなみ よじょう)

花吹雪(はなふぶき)本気を出して来りけり ハードエッジ

本気:
百足虫(むかで)打つ妻の本気を垣間(かいま)見る 市堀玉宗(いちぼり ぎょくしゅう)
逃げられて本気になりし泥鰌掘(どじょうほ)り 大久保白村(      はくそん)

若草に厩出(まやだ)しといふ一大事 ハードエッジ

一大事:
我生の今日の昼寝も一大事 高濱虚子(たかはま きょし)
しぐるゝやこれ俳諧(はいかい)の一大事 加藤郁乎(かとう いくや)
年の瀬や一私事(しじ)なれど一大事 安住敦(あずみ あつし)

夏

六月の朝の六時の空の青 ハードエッジ

六時:
豊年(ほうねん)の午後の六時の真つ暗な ハードエッジ
午後五時が六時の如(ごと)し日短(ひみじか) ハードエッジ
短日(たんじつ)の三時四時五時六時かな 杉田菜穂(  なほ)

右の頬(ほお)に左の頬に梅雨(つゆ)の髯(ひげ) ハードエッジ

右の頬:
蘗(ひこばえ)や愛は左右の頬打たす 有馬朗人(ありま あきと)
枯木折る若(も)し「右の頬打たれなば」 秋元不死男(あきもと ふじお)

片陰(かたかげ)が道の右から左へと ハードエッジ

右から:
右からも左からも蛙ぴよんぴよん 種田山頭火(たねだ さんとうか)

シャワー「弱」さへ日焼の肩に噛(か)み付きぬ ハードエッジ

推敲:
シャワー即(そく)日焼の肩に噛み付きぬ ハードエッジ

噛み付:
夕立やかみつくやうな鬼瓦(おにがわら) 小林一茶(   いっさ)
噛みつきし蟻(あり)が小さく小さくて 右城暮石(うしろ ぼせき)

装束(デザイン)で買ひし麦酒(ビール)のハズレかな ハードエッジ

一寸、ひねり過ぎ

買ひし:
年玉(としだま)で買ひしトランプひな祭 ハードエッジ
妻買ひし岐阜提灯(ぎふちょうちん)を妻へ吊(つ)る 小原啄葉(おばら たくよう)
今買ひし服に著替(きが)へて避暑(ひしょ)夫人 中村芳子
青森に林檎(りんご)を買ひし夜汽車(よぎしゃ)かな ハードエッジ
十二月ついでに買ひしもの重し 井上あや子

豆飯(まめめし)に莢豌豆(さやえんどう)のおみおつけ ハードエッジ

羅(うすもの)を鋼(はがね)仕立に甲羅(こうら)かな ハードエッジ

甲羅:
亀鳴けばぽかんと開く甲羅やも ハードエッジ
亀鳴くや甲羅の内の鏡張(かがみば)り ハードエッジ
雨乞(あまごい)や亀(かめ)の甲羅に二三言 小澤實
冬凪(ふゆなぎ)に潜水艦の甲羅干し 伊藤伊那男(  いなお)
蓮(はす)は枯れ亀(かめ)は甲羅を干しにけり 南うみを

蛞蝓(なめくじ)の百の重さの蟇(ひきがえる) ハードエッジ

推敲:
蛞蝓の百の重みの蟇 ハードエッジ

茄子(なす)、胡瓜(きゅうり)、牛蒡(ごぼう)、大蒜(にんにく)、萵苣(ちしゃ)も咲き ハードエッジ

も咲き:
野に山に蝶(ちょう)の舞ふ日や花も咲き ハードエッジ
去年(こぞ)も咲きことしも咲くや桜花 上島鬼貫(うえじま おにつら)
有刺鉄線(ゆうしてっせん)にも咲きて薔薇(ばら)の園 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
松葉牡丹(まつばぼたん)ちら~白も咲きそへる 鈴木花蓑(    はなみの)
人生は秋晴もあり野菊も咲き 京極杞陽(きょうごく きよう)
菊も咲きぬ新酒盗みに來ませ君 正岡子規(  しき)
日かげにも咲きつらなりて草の花 深見けん二
破魔矢(はまや)あり壺(つぼ)に一枝(いっし)の梅も咲き 岸風三楼(きし ふうさんろう)

甘藍(かんらん)の外葉(そとば)大いに反(そ)り返る ハードエッジ

 

秋

水たまり秋の欠片(かけら)を浮べたる ハードエッジ

欠片:
春昼(しゅんちゅう)に月の欠片の如(ごと)きもの ハードエッジ
うすらひのかけら光りぬ竹箒(たけぼうき) 南うみを
猫にやる愛のチョコレートの欠片 ハードエッジ
地虫(じむし)出づ吸ひ取り紙に字のかけら 西原天気
塊(かたまり)も欠片も真白(ましろ)夏の空 ハードエッジ
いづくにも虹(にじ)のかけらを拾(ひろ)ひ得(え)ず 山口誓子(   せいし)
かはらけの欠片の躍(おど)る噴井(ふけい)かな 押野裕(おしの ひろし)
蟻(あり)運ぶ蝶(ちょう)の模様(もよう)のかけらかな 髙柳克弘(たかやなぎ かつひろ)
音を生みけり凍滝(いてだき)の一とかけら 行方克巳(なめかた かつみ)
火のかけら皆生きてゐる榾火(ほたび)かな 岸本尚毅(   なおき)
枯木より氷のかけら落ちてきし 長谷川櫂(はせがわ かい)
木に残る枯葉の欠片らしきもの ハードエッジ

爽(さわ)やかに引きし補助線(ほじょせん)仮説(かせつ)成(な)る ハードエッジ

補助:
柿の秋バスに補助席ありしころ ハードエッジ

空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ

空缶:
空缶の水沸(わ)いてをり野火(のび)の果(は)て 北村保

天(あま)の川より一滴(いってき)の耳かざり ハードエッジ

耳飾:
遠雷(えんらい)やはづして光る耳かざり 木下夕爾(きのした ゆうじ)
葉桜(はざくら)やちりりと銀のイヤリング ハードエッジ
花売に寒し真珠(しんじゅ)の耳飾 夏目漱石(なつめ そうせき)

かつかつ書くベンゼン環(かん)の夜学(やがく)かな ハードエッジ

かつかつ:
面(おも)やつれしてかつかつと夜食かな 高濱虚子
原爆許すまじ蟹(かに)かつかつと瓦礫(がれき)あゆむ 金子兜太
かつかつと聖夜(せいや)の皿にナイフの音 ハードエッジ
寒鴉(かんがらす)かつかつ嘴(はし)を鳴らしけり 杜雨

休暇(きゅうか)明(あ)け包帯(ほうたい)の子がもう一人 ハードエッジ

包帯:
包帯でつなぐ命の接木(つぎき)かな ハードエッジ

菊の香(か)に乾(かわ)けば消ゆる水たまり ハードエッジ

水+消ゆる:
蝌蚪(かと)小さし浮かびて消ゆる水泡(みなわ)よりも 中村草田男(   くさたお)
水掛けて消ゆる罪あり初詣(はつもうで) 江川由紀子

瓢箪(ひょうたん)になれず糸瓜(へちま)のぶら下(さが)る ハードエッジ

ぶら下:
涼しさや縁(えん)より足をぶらさげる 各務支考(かがみ しこう)
湖に足ぶらさげて涼みかな 正岡子規(  しき)
ぶら下るとんぼの羽根や蜘蛛(くも)は留守(るす) 寺田寅彦(    とらひこ)
老鶏(ろうけい)の蟇(ひき)ぶらさげて歩くかな 飯田蛇笏(いいだ だこつ)
ぶらさげて青大将(あおだいしょう)の長さ見す 成瀬正俊(なるせ まさとし)
昼飯をぶらさげて居るかゞし哉(かな) 小林一茶(   いっさ)
稲運びあきし子稲架(はざ)にぶらさがる 高野素十(    すじゅう)
へうたんとなつて天下にぶら下る ハードエッジ

冬

みしみしと土龍(もぐら)に響(ひび)く霜柱(しもばしら) ハードエッジ

みしみし:
夜桜のみしみし搖(ゆ)るゝまへうしろ 川崎展宏(    てんこう)
四五人のみしみし歩く障子(しょうじ)かな 岸本尚毅(   なおき)

白狐(しろぎつね)撃(う)たれて倒(たお)る白きまま ハードエッジ

白狐:
闇(やみ)割れて白狐(びゃっこ)顕(あら)はる夏芝居(なつしばい) 西村和子
白狐(しろぎつね)もとより踊(おどり)上手(じょうず)なり ハードエッジ

進むレジ進まぬレジや葱(ねぎ)を手に ハードエッジ

を手に:
子を探す母風船を手にしをり 青葉三角草(あおば さんかくそう)
菜の花やスコップを手に五六人 山田露結(   ろけつ)
衣更(ころもか)へてすぐ包丁(ほうちょう)を手にしたり 山口波津女(   はつじょ)
まくなぎを手に持つもので払ひけり 高濱虚子(たかはま きょし)
悲しみの黒き装(よそお)ひ薔薇(ばら)を手に 藤木如竹
秋行くか羽ある種子(しゅし)を手にとれば 山口誓子(   せいし)
鷹匠(たかしょう)が二人一人は鷹(たか)を手に 京極杞陽(きょうごく きよう)
凧(たこ)を手に祖母(そぼ)を埋(うず)めに行く子なり 今瀬剛一(いませ ごういち)

数(かぞ)へ日にドプラー効果あるやうな ハードエッジ

効果:
揚雲雀(あげひばり)宣傳(せんでん)効果なしとせず 中原道夫

年の瀬の火事場帰りの消防車 ハードエッジ

消防車:
消防車洗つて春の平和な日 武者圭司
かげろふに消防車解体中(かいたいちゅう)も赤 西東三鬼(さいとう さんき)
消防車を日向(ひなた)に出して黴退治(かびたいじ) 田川飛旅子(たがわ ひりょし)
消防車濡(ぬ)れて戻(もど)りぬ秋の暮 本庄登志彦
大迂回(だいうかい)して山火事へ消防車 右城暮石(うしろ ぼせき)
消防車待つ間も燃ゆるわが家かな 皆吉司(みなよし つかさ)
消防車救急車パトカー散乱(さんらん)毛布の上 今井聖(いまい せい)
数へ日の鐘(かね)を疎(まば)らに消防車 ハードエッジ

厨(くりや)には油の跳(は)ねし古暦(ふるごよみ) ハードエッジ

跳ねし:
春の夜の水面(みなも)に跳ねしものや何 ハードエッジ
永き日の生簀(いけす)に倦(う)みて跳ねしもの 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)
栗鼠(りす)跳ねしあとゑくぼなす春の雪 宮津昭彦(みやつ あきひこ)
夜の魚湖面(こめん)に跳ねしテントかな 薮内小鈴(やぶうち こすず)
断崖(だんがい)を跳ねしいとどの後知らぬ 山口誓子(   せいし)
海老(えび)跳ねし厨(くりや)の音か除夜(じょや)の鐘(かね) 水原秋櫻子(    しゅうおうし)

新年

飛行機の操縦室(そうじゅうしつ)の初御空(はつみそら) ハードエッジ

操縦:
操縦桿(そうじゅうかん)引いて青野を傾(かたむ)かす 駿河岳水(するが がくすい)

買初(かいぞめ)の銀座京橋日本晴(にほんばれ) ハードエッジ

日本橋じゃなくて、日本晴れ、という引っ掛け問題 (^_^;;;

幼子(おさなご)の首筋(くびすじ)寒き春著(はるぎ)かな ハードエッジ

首筋:
薄氷(はくりょう)を踏む首筋を虚空(こくう)哉(かな) 永田耕衣(ながた こうい)
昼みれば首筋赤きほたるかな 松尾芭蕉(    ばしょう)
首筋の寒さが袖(そで)にぬけにけり 上野泰(    やすし)
聖夜(せいや)ミサ首筋やはらかく祈る 鷹羽狩行(たかは しゅぎょう)

雪山に取り囲まれて弓始(ゆみはじめ) ハードエッジ

取り囲:
日焼子に取り囲まれて赤ん坊 ハードエッジ
赤い羽根取り囲まれて付けらるる 中本真人(なかもと まさと)
水仙(すいせん)を取り囲みたる書斎(しょさい)の書(しょ) ハードエッジ

冬

大寒(だいかん)の海の魚(さかな)や食べごろの ハードエッジ

海の魚:
春光(しゅんこう)や海の魚を海へ干す ハードエッジ
散る花に覚め深海の魚に似たり 橋閒石(はし かんせき)
深海の魚が空とぶ走馬灯(そうまとう) 井沢正江(いざわ まさえ)

ティアラして雪のディズニーランドかな ハードエッジ

夏バージョン:
ティアラして夜店を帰る女の子 ハードエッジ

 

◎初案50句

メリーゴーラウンド春光みぎひだり ハードエッジ
日めくりのまだ分厚くて春の雪 ハードエッジ
ふる雪や川に筏を組むでもなく ハードエッジ
雪解川西へ北へと日本海 ハードエッジ
ぶらんこに靴を飛ばして足長き ハードエッジ
春燈や健気なものに影法師 ハードエッジ
いつもとは色違ひなる菜飯かな ハードエッジ
断面の鋭きを地に挿木かな ハードエッジ
妻に子に臍のありたる四月馬鹿 ハードエッジ
名札は胸に苗札は地に刺して ハードエッジ
古株に日の目を見せて根分かな ハードエッジ
遠足の園児思へばそれだけで ハードエッジ
復活のなき安らぎの涅槃像 ハードエッジ
蝶になる夢を見てゐる蜆かな ハードエッジ
近くある「ミサ」と「ミサイル」恋の猫 ハードエッジ
猫の欠伸子猫の欠伸我が欠伸 ハードエッジ
切つてあるハムやチーズや朝桜 ハードエッジ
目の前のこれが本気の花吹雪 ハードエッジ
ゴジラ今は地球の味方寒桜 ハードエッジ
若草に厩出しといふ一大事 ハードエッジ
六月の朝の六時の晴れ渡り ハードエッジ
髭剃りに片頬伸ばす梅雨入かな ハードエッジ
片陰や道の右から左へと ハードエッジ
湯浴みして日焼の肩を噛まれけり ハードエッジ
缶ビールの野暮なデザイン味は良し ハードエッジ
豆飯に莢豌豆の味噌汁も ハードエッジ
羅と書けども蟹の甲羅かな ハードエッジ
蛞蝓の百倍重き蟇 ハードエッジ
茄子・胡瓜・牛蒡・大蒜・萵苣も咲き ハードエッジ
甘藍の外葉大いに反り返る ハードエッジ
水たまり秋の欠片を浮べたる ハードエッジ
爽やかに総崩れなる仮説かな ハードエッジ
空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ
流星の滴る如きイヤリング ハードエッジ
かつかつとベンゼン環の夜学かな ハードエッジ
休暇明け包帯の子の人気なり ハードエッジ
夏雲の乾けば消ゆる水たまり ハードエッジ
瓢箪になれず糸瓜の垂れ下がる ハードエッジ
大寒の海の魚や食べごろの ハードエッジ
ティアラして雪のディズニーランドかな ハードエッジ
みしみしと土龍の穴に霜柱 ハードエッジ
白狐撃たれて倒る白きまま ハードエッジ
進むレジ進まぬレジや買初の ハードエッジ
数へ日にドプラー効果ありにけり ハードエッジ
年の瀬や火事場帰りの消防車 ハードエッジ
高々と飛んで機長の初仕事 ハードエッジ
買初や日本晴なる日本橋 ハードエッジ
幼子の首筋寒き春著かな ハードエッジ
雪山に神の坐す弓始 ハードエッジ
一年を柱で過ごす暦果つ ハードエッジ

◎推敲過程 テキスト

 

◎推敲過程 プリントに手書き

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

 

◎落選葉書一覧

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以上です