秋 【林檎】 白妙の林檎の歯型見せに来る

全然堂歳時記 秋の部
【林檎】りんご

全然堂歳時記=現在、本号を含め60記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-17-10–2-1
/2022.11.5

◎葉書俳句

全然堂歳時記 秋 りんご【林檎】

◎テキスト

旅ゆけば秋田青森りんご晴れ ハードエッジ

旅ゆけば:
旅行けば駿河するがの海に金目鯛きんめだい ハードエッジ
旅行けば駿河するがの国に蜜柑山みかんやま ハードエッジ

青森に林檎を買ひし夜汽車よぎしゃかな ハードエッジ

夜汽車:
夜汽車にも春はあけぼの顔洗ふ 鈴木鷹夫
やりすごす夜汽車の春のをつらね 木下夕爾
露地裏ろじうらを夜汽車と思ふ金魚かな 攝津幸彦
目をとぢて秋の夜汽車はすれちがふ 中村汀女
ホテルから夜汽車の見ゆる星祭 ハードエッジ
鉄橋を夜汽車が通りさけの番 草間時彦
御殿場ごてんば鹿しかの驚く夜汽車かな 正岡子規
夜汽車の灯彼方かなたに見ゆる枯野かれのかな ハードエッジ
われけばわが背にても咳く夜汽車 茂里正治
去年今年こぞことし夜汽車の中をすたすたと ハードエッジ

王・金・紅の林檎売場や富士もある ハードエッジ

売場:
春の色ずらり口紅くちべに売場なり ハードエッジ
宝くじ売場のすみ蚊遣豚かやりぶた 中嶋憲武なかじま のりたけ
冷房の下着売場の白世界 草間時彦くさま ときひこ
鳥渡とりわたる場外馬券売場かな 金子敦かねこ あつし
無花果いちじくの売場はたかが十日ほど ハードエッジ
凍港とうこうや楽器売場のごと光り 櫂未知子かい みちこ
短日たんじつや子どもの走る家具売場 涼野海音すずの うみね
煤逃すすにげに家電売場の明るさよ さるぼぼ
松過まつすぎの日記売場のほのかなる ハードエッジ
繭玉まゆだま呉服ごふく売場にしだれけり 今泉貞鳳いまいずみ ていほう
屋上の墓石ぼせき売場を飛ぶ電波 夏石番矢なついし ばんや

とりどりに林檎なで肩いかり肩 ハードエッジ

なで肩:
ながき日の撫で肩のまま撫で仏 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
撫肩の人は競泳きょうえい早さうな ハードエッジ
撫で肩の山や眠りも安らかに 林翔はやし しょう
大仏の撫で肩越しに山眠る 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

紅玉こうぎょくは昔の林檎とは言へど ハードエッジ

とは言へど:
とはいへど楽しきことも二月尽にがつじん 堀切克洋ほりきり かつひろ
とは言へどこれが頼りのわが素足すあし ハードエッジ
残暑ざんしょとは云へど湿度しつどの快き ハードエッジ
とはいへど涙もろしや老の春 高濱虚子たかはま きょし

紅玉こうぎょくこたふ林檎の好きな人 ハードエッジ

答ふ:
初蝶はつちょう何色と問ふ黄と答ふ 高濱虚子たかはま きょし
湯上りの浴衣ゆかたを着つゝつまに答ふ 星野立子

可愛かわいやとリンゴの唄の流行はやりし頃 ハードエッジ

流行り:
遠足後「バックオーライ」流行りけり ハードエッジ
浅蜊縞あさりじま流行りのしまもありぬべし 高澤良一たかざわ よしかず
手花火てはなびのはやりて祭近づきぬ 野村泊月のむら はくげつ
風邪かぜはやりはじめの町のぬるき風 大西朋おおにし とも

林檎箱にも今昔こんじゃくの思ひあり ハードエッジ

今昔:
枯山の月今昔を照らしゐる 飯田龍太いいだ りゅうた

PCに林檎かじるもえにしかな ハードエッジ

縁かな:
初燕はつつばめ飛び立つまでの縁かな 桂信子
花びらの雨にあたるも縁かな ハードエッジ
短夜みじかよとりたまふも縁かな 石橋秀野いしばし ひでの
形代かたしろかさなりゆくも縁かな 大橋敦子   あつこ

林檎丸噛まるかじりをなしうらやみぬ ハードエッジ

丸噛り:
昼花火昔は梨も丸かじり 百合山羽公ゆりやま うこう

白妙しろたえの林檎の歯型はがた見せに来る ハードエッジ

歯型:
庭下駄にわげたに犬の歯型や地虫じむし出づ 高城圭子
若葉雨仔犬こいぬの歯形残るくつ 川島由紀子
青林檎あおりんごイブの歯型の明るさよ 仙田洋子
美しき栗鼠りすの歯型やーつくり 前田普羅  ふら
みとりし林檎の歯型雪しきる 加藤楸邨    しゅうそん
日向ひなたぼこ歯型のついてゐる絵本 西山ゆりこ

こんな夜は居間いまで林檎をいてやろ ハードエッジ

居間:
わが居間の十日のほどをひなす 能村登四郎のむら としろう
縁側えんがわへ居間へ仏間ぶつま西瓜すいかかな 齋藤朝比古さいとう あさひこ
母の居間父の墓前に水仙花すいせんか 星野立子

見て見てと小学四年りんごむく ハードエッジ

小学生:
春一番はるいちばん小学生はけたがる 今橋眞理子いまはし まりこ
酷暑こくしょなれば小学生も日傘ひがさかな ハードエッジ

紅白こうはくに林檎の皮のかれゆく ハードエッジ

紅白:
紅白の菓子美しや春の雪 小津安二郎おづ やすじろう
紅白の椿源平盛衰記 高濱虚子たかはま きょし
こゝに二人梅に紅白あるごとく 久保田万太郎 く ぼ た  まんたろう
おしろいの花の紅白はねちがひ 富安風生とみやす ふうせい
紅白もさみしきものよ秋桜 上野泰    やすし

紅白/自作:
日出ひいづる国の紅白玉椿たまつばき ハードエッジ
紅白の梅のにおへる神の里 ハードエッジ
紅白の源平げんぺい金銀のはえ ハードエッジ
紅白のまた黄白こうはく菊日和きくびより ハードエッジ
紅白の紅のみ甘き西瓜すいかかな ハードエッジ
白粉おしろいの花の紅白種黒く ハードエッジ
紅白に着膨きぶくれてゐるサンタなり ハードエッジ
紅白の破魔矢はまやに鳴らす金の鈴 ハードエッジ

包丁ほうちょうに林檎の種がくつ付きぬ ハードエッジ

包丁:
花冷はなびえの包丁獣脂じゅうしもてくもる 木下夕爾きのした ゆうじ
包丁を取りて打撫うちな桜鯛さくらだい 松本たかし
包丁を持つて驟雨しゅううにみとれたる 辻桃子
包丁はび写真機はびにけり 加藤静夫
ぎあげて包丁黒し秋の空 長谷川櫂はせがわ かい
包丁のつかちかき刃に生姜しょうがく 小川軽舟    けいしゅう
包丁も西瓜すいかを切つて喜べり ハードエッジ
秋茄子あきなすに入れし包丁しめらざる 川崎展宏    てんこう
渋柿しぶがきくや包丁ぬめぬめと ハードエッジ
包丁は氷の音を蕪鮓かぶらずし 長谷川櫂はせがわ かい
包丁もナイフもらず蜜柑みかんむく ハードエッジ
餅板もちいたの上に包丁のをとんとん 高野素十    すじゅう

林檎すりおろして作るジュースなり ハードエッジ

擦り下:
林檎すりおろしてくれし風邪寝かぜねかな ハードエッジ

しりとりのりんごがさそふごはんかな ハードエッジ

誘ふ:
雪解ゆきどけのしずくがさそふ眠りかな 若井新一わかい しんいち
かみなりをさそふ昼寝のいびきかな 正岡子規  しき
月さそふ風とさだむる子規忌しききかな 飯田蛇笏いいだ だこつ
探梅たんばいに誘ふつもりのなき一人 鶴岡加苗つるおか かなえ
雪さそふものとこそ聞け手毬歌てまりうた 久保田万太郎 く ぼ た  まんたろう

しりとりはみかんで負けてりんごく ハードエッジ

負けて:
あくびなら子猫も負けてをらざりし ハードエッジ
暑き日は暑さに負けてすこやかに 上村占魚うえむら せんぎょ
夏負けてゐて家中の指図さしずかな 中村汀女    ていじょ
しょに負けてみな字忘れて仮名書きに 星野立子
珈琲コーヒーに負けてはならじ柏餅かしわもち ハードエッジ
じゃんけんで負けてほたるに生まれたの 池田澄子   すみこ
ずるずると負けて悲しき終戦日 ハードエッジ
一度負けてそれから老いし角力すもうかな 野村喜舟   きしゅう
しりとりで負けてくやしい蜜柑みかんむく ハードエッジ
双六すごろくに負けおとなしく美しく 高濱虚子たかはま きょし
負けてやるはず双六すごろく勝ちさうな ハードエッジ
長男の負けてゆゆしや絵双六えすごろく ハードエッジ

動物園のバケツで配る林檎かな ハードエッジ

動物園:
動物園前といふ駅あたたかし 三村純也みむら じゅんや
折紙の動物園へ春の客 西川火尖にしかわ かせん
かげろへる動物園へぞうとつぐ 大塚凱おおつか がい
ゴリラ等と動物園の花見する 矢島渚男やじま なぎさお
日盛ひざかりや動物園は死を見せず 髙柳克弘たかやなぎ かつひろ
無月むげつなる動物園の鳥獣とりけもの 川崎展宏    てんこう
動物園おりの中まで小鳥来る 金子敦かねこ あつし
動物園寒し両掌りょうてでもの食ふさる 右城暮石うしろ ぼせき
とぼとぼと雪の動物園を行く ハードエッジ

この牛は林檎も食うてすこやかに ハードエッジ

健やか:
湯の少女ほぞ/へそすこやかに山ざくら 飯田龍太いいだ りゅうた
暑き日は暑さに負けて健やかに 上村占魚うえむら せんぎょ
犬猫も我も健やか春を待つ ハードエッジ
胎内たいないの次女も健やか七五三 ハードエッジ
年暮るるややすこやかな香を放ち 飯田龍太いいだ りゅうた
すこやかに腹減つてきし千代の春 齋藤朝比古さいとう あさひこ
健やかに微生物む人体よ 佐藤清美

◎推敲過程/テキスト/pdf

全3枚/179句

全然堂歳時記 秋 【林檎】 テキスト推敲

◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf

全4枚

全然堂歳時記 秋 【林檎】A4推敲

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

全2枚/葉書6枚

全然堂歳時記 秋 【林檎】葉書推敲

 

◎葉書俳句表側

プリンタの目詰り一層悪化/MFC-J737DN/ブラザー ←非純正インク (^_^;;;
お見苦しい点はご容赦 m(_ _)m
「※ 角川俳句賞2022」の行は真っ赤で印刷したかったが、
ほとんど黄色に、しかも、それさえ掠れてしまう
青も掠れるので、結局、黒字に
運悪く、ノズルの詰った部分がその行の中央に来たためらしい

全然堂歳時記 秋 りんご【林檎】表

◎データベース画面/桐v10

version 10.3 build 3131(22Q4) ←昨日、11.4 アップデート

下の画像は最終稿の1つ前/11.4
当日/11.5 朝まで推敲が入ったが、もう面倒なのでこのまま (^_^;;;

桐v10 編集画面

◎林檎秀句

皿の上の林檎れをり食堂車 高濱虚子たかはま きょし
食ひかけの林檎をハンドバックに入れ 高濱虚子たかはま きょし
空は太初の青さ妻より林檎受く 中村草田男   くさたお
秋晴を真つ赤にしたり林檎園 滝沢伊代次たきざわ いよじ
林檎樹下病める林檎の集められ 山口誓子   せいし
星空へ店より林檎あふれをり 橋本多佳子
銀色の釘はさみ抜く林檎箱 波多野爽波はたの そうは
矢の飛んできさうな林檎買ひにけり 望月周もちづき しゅう
刃を入れるべく紅き林檎をぬぐひけり 木下夕爾きのした ゆうじ
りんごの唄今も哀しや林檎む 鈴木鷹夫   たかお
さびしくて林檎の皮の切れぬやう 鎌田保子かまた やすこ

短歌:
君かへす朝の舗石しきいしさくさくと雪よ林檎ののごとく降れ 北原白秋

以上です