秋 【夜食】 かたはらに夜食代りのチョコレート

全然堂歳時記 秋の部
【夜食】やしょく

全然堂歳時記=現在、本号を含め57記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-16-10–2-1
/2022.9.11

◎葉書俳句

◎テキスト

買ひに行く夜食弁当月丸し ハードエッジ

【買ひに行】
春風や花買ひに行くだけの用 稲畑汀子いなはた ていこ
いちご買ひに行くや葬儀そうぎの委員として 右城暮石うしろ ぼせき
ひかけていと買ひにゆく秋の雨 高橋淡路女   あわじじょ
じやんけんに負けて夜食を買ひに行く ハードエッジ
セーターを着てセーターを買ひに行く ハードエッジ
売文ばいぶんの筆買ひに行く師走しわすかな 永井荷風   かふう

社員食堂夜食の前の静けさに ハードエッジ

【静けさに】
人去りて植田は水の静けさに ハードエッジ
黒雲も夕立ゆだちの前の静けさに ハードエッジ
しづけさにれ山荘の夜の秋 稲畑汀子いなはた ていこ
夜のうみの静けさにぐボートあり 藤松遊子ふじまつ ゆうし
待つものの静けさにゐて蟻地獄ありじごく 桂信子
あとかたもなき静けさに巣立ちたる 谷口和子
流星りゅうせいを待つ屋上のしづけさに 石田邦子
静けさにへて水澄みずす田螺たにしかな 与謝蕪村よさ ぶそん
小学校老人の日の静けさに ハードエッジ
埋火うずみびのいつしか雪のしづけさに ハードエッジ
しづけさに加はるねてゐし炭も 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
しおの静けさに寝る蒲団ふとんかな 増田龍雨ますだ りゅうう
夜の落葉降るしづけさに眠るべし 安住敦あずみ あつし

食堂の一角いっかくともる夜食かな ハードエッジ

【一角】
土用波どようなみ一角くず総崩そうくずれ 本井英もとい えい
一角にはしを付けたる冷奴ひややっこ ハードエッジ
一角に稲妻いなずま光る星月夜ほしづきよ 高濱虚子たかはま きょし
構内こうないの一角夜業おそざくら 中村汀女    ていじょ
その一角が大文字だいもんじ消えしやみ 田中裕明    ひろあき
わが寝屋ねややみの一角白破魔矢はまや 橋本多佳子  たかこ

どかどかと夜食らひにきたりけり ハードエッジ

改訂版:
どかどかと夜食に来り「こんばんは」 ハードエッジ 2022.9.11

かつこむは丼飯どんぶりめしの夜食なり ハードエッジ

【丼飯】
はだかにて丼飯をらふなり ハードエッジ
紫陽花あじさいや丼飯に生卵なまたまご ハードエッジ

はしの夜食もさじの夜食もかしましき ハードエッジ

姦し:
かしましや江戸見たかりの帰り様 小林一茶   いっさ
花も月も見しらぬせみのかしましき 正岡子規  しき
かしましきやぶすずめ百舌もずたける 上村占魚うえむら せんぎょ

夜食の句うかぶ夜食のはしとまる ハードエッジ

【浮ぶ句】
春眠しゅんみんの続きに浮ぶ句ありけり ハードエッジ
糸をれ浮ぶ句を待つ夜長よながかな ハードエッジ
起きて寝てふと新年の句が浮ぶ ハードエッジ

ペラペラと夜食弁当片付ける ハードエッジ

ぺらぺら:
ぺらぺらの団扇うちわを配る男かな 髙柳克弘たかやなぎ かつひろ

ドガとその踊子おどりこたちの夜食の絵 ハードエッジ

踊子:
づかづかと来て踊子にささやける 高野素十たかの すじゅう
踊子となりて疲るること知らず 今橋眞理子
踊子の踊を真似まねてゐる子かな 抜井諒一ぬくい りょういち
踊子の見分けのつかぬ厚化粧あつげしょう 中本真人なかもと まさと
踊子の一人ふえしはきつねなり 小川軽舟    けいしゅう
踊子の足休むとき手をつて 綾部仁喜あやべ じんき
踊子の一人は私服警官しふくけいかんか ハードエッジ
踊子の汗にくずれし薄化粧うすげしょう ハードエッジ
踊子のたたずむ雨の軒端のきばかな 行方克巳なめかた かつみ
きりれ踊子も家路いえじなる 石原舟月    しゅうげつ
踊子よあすははたけの草ぬかん 向井去来    きょらい
踊子の帰りぬ夜やきりぎりす 内藤丈草ないとう じょうそう
輪を抜け来し踊子の汗にほふなり 茂里正治しげり まさはる
出番待つドガの踊子十二月 利普苑りーふぇんるな
ロートレクの踊子手袋黒く長く 山口青邨    せいそん

かたはらに夜食がわりのチョコレート ハードエッジ

【チョコレート】
チョコレート割ればとがれる二月かな 金子敦かねこ あつし
春雪しゅんせつ洋酒ようしゅの当てのチョコレート ハードエッジ
鞦韆しゅうせんに腰かけて食ふチョコレート ハードエッジ
遠足に解けて悲しやチョコレート ハードエッジ
いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子
少女美し薔薇ばらもチョコレートも売れる 安住敦あずみ あつし
新涼しんりょうや銀の中からチョコレート ハードエッジ
つゆの世や黒さまざまにチョコレート 野口る理

院生いんせい大学芋だいがくいもの夜食かな ハードエッジ

ダンサーに夜食のすしとどきたり ハードエッジ

【ダンサー】
ダンサーの裸の上のかわごろも 高濱虚子たかはま きょし

さけ少し乗せて夜食の鮭茶漬さけちゃづけ ハードエッジ

【茶漬】
酒に良し茶漬にも良し干鰈ほしがれい ハードエッジ
お茶漬をさらさら桜月夜かな 鈴木鷹夫   たかお
炎天えんてんへ打つて出るべく茶漬飯ちゃづけめし 川崎展宏    てんこう
柚味噌ゆずみそにさらさらまゐる茶漬かな 高濱虚子たかはま きょし
茶漬して仏飯ぶっぱんほぐす夜のかり 那須乙郎なす いつろう

煮魚にざかなの甘つたるきを夜食かな ハードエッジ

虫ののいつしか消ゆる夜食かな ハードエッジ

【いつしか】
主婦せわしいつしか春の風邪かぜなほり 稲畑汀子いなはた ていこ
涼しくていつしか横に並びけり 西村麒麟    きりん
蚊帳かやの中いつしかこたえなくなりぬ 宇多喜代子うだ きよこ
金魚玉きんぎょだまいつしか妻も平凡へいぼんに 田畑美穂女たばた みほじょ
いつしか耳澄ましてをりぬはすの花 鈴木鷹夫   たかお
ついのものいつしか欠くるひめはじめ 上田五千石   ごせんごく

急患きゅうかんに夜食なかばで呼び出され ハードエッジ

【呼び出】
わがうちの死者を呼び出す曝書ばくしょかな 橋本榮治   えいじ
書斎しょさいより呼びいだされて晦日蕎麦みそかそば 遠藤梧逸えんどう ごいつ

盗人ぬすびとの軽くませし夜食かな ハードエッジ

盗人:
盗人の昼寝の上や揚雲雀あげひばり 正岡子規  しき
葉桜はざくらや盗人もなし番もなし 三宅嘯山みやけ しょうざん
盗人ひそ二百十日にひゃくとおかえんの下 寺田寅彦    とらひこ
盗人に古墳こふんあやふし稲光いなびかり ハードエッジ
盗人の首領かしら歌よむけふの月 与謝蕪村よさ ぶそん
水鳥や盗人かえる夜明方 正岡子規  しき

反証はんしょう仮説かせつあやふし夜食ゆ ハードエッジ

【冷ゆ】
押花のすみれ見てゐて過去が冷ゆ 鈴木鷹夫   たかお
レーニン沈め酢酸さくさんカリウム溶液ようえき冷ゆ 町田無鹿   むじか
この世から君は去りにきこの世冷ゆ 関成美せき しげみ
便座冷ゆわが青春の歌舞伎町かぶきちょう 北大路翼きたおおじ つばさ
石は死を人は思ひを閉ぢて冷ゆ 小檜山繁子こひやま しげこ
盆唄ぼんうたもここは相馬そうま夜風よかぜ冷ゆ 大野林火   りんか

眠たさの夜食つまみつ乳飲ます ハードエッジ

眠たさ:
春暁しゅんぎょうをまだ胎内たいないの眠たさに 野澤節子のざわ せつこ
豆飯まめめしはねむたさのはし落す 塩谷はつ枝
ねむたさの稚児ちごの手ぬくし雪こんこん 橋本多佳子  たかこ
眠たさの編目あみめ編目や毛糸けいと編み ハードエッジ
眠たさのもう寝るだけの柚子湯ゆずゆなり ハードエッジ
初旅はつたびの終着駅の眠たさよ ハードエッジ

あきらめて夜食もとらずねにけり ハードエッジ

寝ね:
湯たんぽに足届かせて寝ねにけり 篠原温亭しのはら おんてい
毛襯衣けシャツ着て寝ねよといはれ寝ねにけり 加藤楸邨    しゅうそん

◎推敲過程/テキスト/pdf

全195句

全然堂歳時記 秋 【夜食】 テキスト推敲

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

全16枚

全然堂歳時記 秋 【夜食】葉書推敲

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

◎今回のtwitter投稿

20句揃ったところで
twitterに5句づつ順次発表 ←字数制限 全角140文字
通常は4/4で終了し、葉書俳句の画像付のツイートになる筈が
直前の推敲やら、さらに差替やらで
初めて、4/4を越えて5/4をツイートすることに

この分数5/4は、1より大きくて
つまり、名前は、、、「仮分数かぶんすう」!!
と、n十年ぶりに思い出す

が、漢字変換中に「過分数」も出てきて ←Google日本語入力
あれ、こっちだったかな?
意味的には「過分数」が良さそうだが、
頼りない記憶では「仮分数」

ググったら、分りやすい記事

なお、4/4も仮分数、だそうです
ならば、整数になるのを「絶対仮分数」とか、、、

以上です