和語俳句 【た】 秋立つや音を違へて稲と草 岸本尚毅

小匙・猛る/2022.7.27、1句追加/2018.1.29、分割/2017.12.7、12.15
違ふ/2017.10.3、貫く、連る、辿る/2017.9.14、伝ふ/2017.9.13、2017.9.6-8

◎和語俳句、た行の「た」です
  →「ち」
  →「つ」
  →「て」
  →「と」

◎違ふ=たがう

  →違ふ=ちがう

亀鳴くや事と違ひし志  安住敦(あつし)

葉ざくらや白さ違へて塩・砂糖  片山由美子

夏帽のリボンたがへて姉妹  千原叡子(えいこ)

秋立つや音を違へて稲と草  岸本尚毅(なおき)

名を変へて刻を違へて月上る  ハードエッジ

 

 

◎集る=たかる

個人的には難読漢字でした
あつまる、とも読めるため
俳句では平仮名表記が多いようです

  →集む=あつむ
  →集ふ=つどう

売つてゐるすべてのものに蠅たかる  辻桃子

入れかはり立ちかはり蠅たかりけり  高柳克弘

蟻たかるその一塊が鳴きにけり  佐々木六戈(ろっか)
  ※一塊=いっかい

たかりをる小匙こさじ一杯分の蟻 ハードエッジ

 

◎滾る=たぎる

壺焼の角のみどりのたぎりをり  大木あまり
  ※壺焼=つぼやき

かりがねや生死はいつも湯が滾り  藤田湘子(しょうし)

瀧つ瀬は滾りて白き紅葉川  川崎展宏(てんこう)

 

◎猛る=たける

濁世じょくせより乱世らんせがよけれ野火のび猛る 鈴木鷹夫

気化熱きかねつうばへと団扇うちわ猛らせて ハードエッジ

 

◎嗜む=たしなむ

酒ならばたしなむと言へ鱧の皮  吉田汀史(ていし)
※鱧=はも

はんけちのたしなみきよき薄暑かな  久保田万太郎
※薄暑=はくしょ

新涼やたしなまねども洋酒の香  中村汀女(ていじょ)
※新涼=しんりょう

しぐるるや僧も嗜む実母散  川端茅舎(ぼうしゃ)
※実母散=じつぼさん=江戸時代からの婦人薬→GGL、実母散画像

 

 

◎窘む=たしなむ

独楽の子をたしなめ羽子の子をかばふ  富安風生(ふうせい)

 

 

◎携ふ=たずさう

携へて若草踏まん疾く来れ  佐藤春夫
  ※疾く=とく

携へし避暑案内や汽車の中  正岡子規(しき)

スケートの濡れ刃携へ人妻よ  鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう)

山行きの荷を携へて屠蘇の座に  岩垣子鹿(しろく)
  ※屠蘇=とそ

 

 

 

◎漂ふ=ただよう

初蝶のただよふと見てともゑなす  篠田悌二郎

漂へるごとくに露の捨箒  富安風生
※箒=ほうき

末枯に漂ひをりし蜘蛛の糸  波多野爽波(そうは)
※末枯=うらがれ、蜘蛛=くも

漂へる枕の如き浮寝鳥  ハードエッジ

 

 

 

◎奉る=たてまつる

細やかに刻んで雛に奉る  ハードエッジ
※刻んで=きざんで

一神事五月の風を奉る  高木石子

温泉の神に燈をたてまつる裸かな  飯田蛇笏(だこつ)
※温泉=ゆ

新涼や仏にともし奉る  高濱虚子

仏にも寒九の水をたてまつる  森澄雄
※寒九=かんく

山の神にうたたてまつれ手毬の子  木村蕪城
※手毬=てまり

 

 

 

◎辿る=たどる

片陰の狭き小さきをたどり来し  辻桃子

紙魚の跡たどりて紙魚に逢はんとす  後藤夜半
※紙魚=しみ

奥宮へ辿りつきたる七五三  清崎敏郎(としお)

 

 

◎賜る=たまわる

漉きし紙漉きし手をもて賜りぬ  永島靖子
※漉きし=すきし

達筆のわが名たまはる年賀状  ハードエッジ

極刑を賜りしかば厚化粧  江里昭彦

 

 

◎抱く=だく

  →抱く=いだく
  →抱ふ=かかう

ゆく春やおもたき琵琶の抱きごころ  与謝蕪村(よさ・ぶそん)
  ※琵琶=びわ

子を抱くや踏絵の中のその母も  ハードエッジ
  ※踏絵=ふみえ

母に抱かれてわれまつさきに囀れり  八田木枯
  ※囀れり=さえずれり

囀をこぼさじと抱く大樹かな  星野立子
  ※囀=さえずり

抱く吾子も梅雨の重みといふべしや  飯田龍太
  ※吾子=あこ、梅雨=つゆ

人形のだれにも抱かれ草の花  大木あまり

着ぶくれて抱けとばかりに諸手あげ  西村和子
  ※諸手=もろて

雌狐の尾が雄狐の首を抱く  橋本鶏二
  ※雌狐=めぎつね

伊勢海老や写真の祖父の父を抱く  藤村克明
  ※伊勢海老=いせえび

十五歳抱かれて花粉吹き散らす  寺山修司

 

その他のた行:

  →「ち」
  →「つ」
  →「て」
  →「と」

以上です
お読み頂きありがとうございました