冬 【水仙】 白と黄の和して同ぜず水仙花

全然堂歳時記 冬の部

【水仙】すいせん

 

さおな水仙畑花を待つ

  改、花を待つ水仙畑真つ青な/2018.2.14

  改、一面の水仙畑まだ真青/2018.2.14

 

ぐに伸びて水仙はなはまだ

 

すらり立つ給水塔きゅうすいとうも水仙も

 

荒れ狂ふ水仙のあるみさきかな
  風が吹きすさび、
  海が荒れているのですが、
  それらを無視して水仙だけの描写としました

  実際に見たことはないんですが、
  水仙は海沿いの斜面に咲くイメージがあります
  水仙の特性とか調べる時間はないのですが、
  一応、画像検索:
  →崖の水仙/ggl画像

 

海荒れて水仙の首飛びさうな

 

希臘ギリシャにも神々多し水仙花すいせんか
  水仙→ナルシス(ナルキッソス)→ギリシャ、のありがちな連想

  ナルシスのなみだ水仙切られけり/2018.2.16
  うーん、なんたるおセンチ(古語!)

  水仙=すいせん、は4音
  水仙花=すいせんか、とすると5音なので、
  下五に収まりやすくなります

 

白と黄は菊にもあれど水仙花
  むろん、
  古句を踏まえています
  黄菊白菊その外の名はなくもがな 服部嵐雪らんせつ

  今回、調べてみたら、枯れバージョンも、
  黄菊白菊皆枯草の姿かな  正岡子規しき

  吾輩の菊なら、
  白菊と黄菊と咲いて日本かな  夏目漱石そうせき

  咲く前なら、
  白菊も黄菊もつぼみ青々と  ハードエッジ

 

白と黄のしてどうぜず水仙花
  先ほどは、
  地理でギリシャが出たので、
  こっちは歴史で「和同開珎わどうかいちん
  と、思いましたが
  「和して同ぜず」と、
  「和同開珎」は
  関係ないみたいです

  もともと、
  本邦初の銅の産出を祝って、
  「和銅」と改元し、
  ようし、銅貨も作ろうか、
  の流れの「和同」らしいです
  →「和して同ぜず」/コトバンク
  →「和同開珎」/コトバンク

 

すぱすぱと水仙を切るはさみかな
  先行句:
  切味なら、
  よく切れる鋏おそろし水仙花 高橋淡路女

  錆びたなら、
  水仙剪る錆びし鋏を花に詫び 桂信子

  色々な花を切るときの手応えの違い、
  そんな事を考えました
  茎の硬さ、太さ、水分、季節など
  経験値が乏しいのですが、
  少なくとも、
  菊と水仙では随分と違います

  水仙は「すぱすぱ」ではないかと

  「すぱすぱ」の例句は1でした/「55DB」

 

水仙を切つてぽたぽたしてゐたる
  凛々しい花なのに、
  切った途端、
  あんなに涙もろくなるとは、、、

  「ぽたぽた」旧作
  ぽたぽたと金魚を注ぐ金魚鉢/2014

 

水仙の切られしあとも雪に消ゆ

 

と書いて賀状がじょうなりけり水仙花

 

硝子戸がらすどの中の正月水仙花
  むろん、
  夏目漱石『硝子戸の中』を踏まえています

  今、この書名をググってみて、
  飛んでもないことに気が付きました

  私は、何十年と、この書名を
  ガラス戸のなか!と読んでいたのですが、
  正確には、ガラス戸のうち!でした
  人生、どこで転ぶか分りません
  →夏目漱石『硝子戸の中』/青空文庫

 

水仙や部屋に吊りたるれタオル

 

水仙をけて古りゆくものばかり
  「古りゆく」名句:
  いたづらに古りゆく身かな針供養はりくよう  高橋淡路女あわじじょ

  箱庭の人に古りゆく月日かな  高濱虚子たかはま きょし

  年々に古りゆく恋や歌かるた  久保田万太郎

  さらに、和歌もあります
  花さそふ嵐の庭の雪ならで
    ふりゆくものはわが身なりけり  入道前太政大臣

  花の色はうつりにけりないたずらに
    わが身よにふるながめせしまに  小野小町

  先行作品の存在を、
  なんとも、やりにくい、面倒臭い、
  と感じるか、
  伝統に抱かれて嬉しいな、
  と思うか、です

 

以上です