追記:柏餅/2018.2.17
◎和語俳句、さ行の「そ」です
→「さ」
→「し」
→「す」
→「せ」
◎削ぐ=そぐ
炎天や耳を削がれし気球たち 磯貝碧蹄館(へきていかん)
新馬鈴薯の皮削ぐに良き爪の伸び ハードエッジ
※新馬鈴薯=しんじゃが
露の世に削ぎ残したる言葉かな 馬場駿吉
燭台の蝋削ぐことも盆支度 金子敦(あつし)
※燭台=しょくだい、蝋=ろう、盆支度=ぼんじたく
干大根鼻削ぎにくる山の風 太田土男
我はただ餅の黴削ぐむかし者 藤田湘子(しょうし)
◎損ぬ=そこぬ
種芋になりそこねしが泥の上 楠川あや
翅たたみそこねし金亀子なりけり 安住敦(あつし)
※翅=はね、金亀虫=こがねむし
辣韮をつまみそこねし西鶴忌 榎本好宏
※辣韮=らっきょう、西鶴忌=さいかくき
猪を撃ち損ねし非難一身に 目黒一栄
※猪=しし/いのしし、撃ち=うち
鬼柚子をもらひそこねし手ぶらかな 川崎展宏(てんこう)
※柚子=ゆず
枯蔓のつかみそこねし物の距離 木下夕爾(ゆうじ)
※枯蔓=かれつる
◎供ふ=そなう
涅槃像ブロッコリーを供へある 岸本尚毅(なおき)
涅槃像=ねはんぞう
立子の墓アスパラガスを供へある 辻桃子
豆飯を供へ故人となられたる 高野素十(すじゅう)
あきくさをごつたにつかね供へけり 久保田万太郎
南瓜煮てこれも仏に供へけり 高濱虚子(たかはま・きょし)
※南瓜=かぼちゃ
◎峙つ=そばだつ
夜焚火に金色の崖峙てり 水原秋櫻子(しゅうおうし)
※夜焚火=よたきび
山茶花は零れ冬菜は峙ちて ハードエッジ
※山茶花=さざんか、零れ=こぼれ
◎聳ゆ=そびゆ
雲の峰雷を封じて聳えけり 夏目漱石(そうせき)
※雲の峰=くものみね、雷=らい、封じて=ふうじて
向日葵にビルは裏側もて聳ゆ 古舘曹人(ふるたち・そうじん)
※向日葵=ひまわり
本来の向日葵は他の夏草を見下ろしています
いや、
人の背丈さえ越えています
ひまはりのたかだか咲ける憎きかな 久保田万太郎
しかし、
ビルを相手では敵うはずもありません
しかも、
ガチンコではなく、裏側勝負です
ちょっと向日葵に同情したくもなります
◎戦ぐ=そよぐ
→戦ふ=たたかう/未開設
あしゆびをそよがせ涅槃したまへり 恩田侑布子(ゆうこ)
※涅槃=ねはん
松風の中を青田のそよぎかな 内藤丈草(じょうそう)
虫送すみたる稲のそよぎかな 三村純也
※虫送=むしおくり
◎揃ふ=そろう
蜆汁はや子も揃ふことまれに 中村汀女(ていじょ)
※蜆汁=しじみじる
大皿に向きを揃へて柏餅 小圷健水
餡子の餅には、
草餅、鶯餅、桜餅などがありますが、
大皿に、しかも向きを揃えるには柏餅しかありません
それでどうした、って事ですが、
綺麗に並んだ柏餅を見て
ほおっ!と感じた思いを
文字で、もう少しはっきり味わえます
さらに、
俳句として文字化したので、
いつでも、想像上で、
小さな、
いや、
大皿の見事さを楽しむことが出来ます
祭稚児抱き下ろさるゝ足そろへ 大橋桜坡子(おうはし)
※稚児=ちご
青梅の臀うつくしくそろひけり 室生犀星(むろう・さいせい)
※臀=しり
赤い羽根お礼の声も揃ひたる 中本真人
寂寞と湯婆に足をそろへけり 渡辺水巴(すいは)
※寂寞=じゃくまく、湯婆=たんぽ
その他のさ行:
以上です