角川俳句賞2023 落選作 プランA 風薫る富士は日本一の山

角川俳句賞 2023
プランA「桜鯛」50句

落選作

◎葉書俳句

 

 

 

◎テキスト

明日はもう三月並の気温とや ハードエッジ

味噌汁に豆腐切り込む春の雪 ハードエッジ

うすら氷を柄杓で除けて漱ぐ ハードエッジ

柄杓:
安産の底抜け柄杓買うて春 矢島渚男
水に浮く柄杓の上の春の雪 高濱虚子
大寺の長き柄杓や甘茶仏 ハードエッジ
柄杓もて柄杓を寄する甘茶かな 岩田由美
うぐひすに踏まれてうくや竹柄杓 田川鳳朗
打水の桶に浮べる柄杓かな 篠原温亭
桶柄杓なき世に水を打つホース ハードエッジ
閼伽桶の柄杓放さず凍りけり 平井さち子
身の丈にあまりて寒の肥柄杓 安東次男
くらがりの柄杓にさはる氷かな 炭太祇
寒椿柄杓に氷すくひ捨つ 長谷川零餘子

裏庭の最後の雪も解け始む ハードエッジ

裏庭:
裏庭の柏大樹や柏餅 富安風生
裏庭でにはとり捻り秋まつり 片山由美子
裏庭を愛する小鳥来たりけり 西村和子
裏庭にピッチブレンド日短 ハードエッジ
裏庭に供養の碑あり鴨の宿 ハードエッジ

白熊を乗せて流氷大いなる ハードエッジ

朧夜の餡子作りの白砂糖 ハードエッジ

餡子:
トーストにバターと餡子乗せて春 ハードエッジ
草餅の余りし餡で餡子玉 ハードエッジ
日本に餡子の幸や小豆煮る ハードエッジ
どこまでも丸き冬日とあんこ玉 加藤楸邨
しぐれけり求肥に餡子透かせれば 箱森裕美

湯気あげて春田は息を吹き返す ハードエッジ

吹き返:
馬追の髭吹き返す夜風かな 長谷川櫂
箒さき吹き返さるる落葉かな 高野素十

その後はのどかな春の日なりけり ハードエッジ

その後:
子規と短かき日その後永き日も 高濱虚子
立春のその後の寒さ言ひ合へる 石塚友二
下萌ゆるみどりその後のみどりかな 後藤比奈夫
花仰ぐ生前の弟子その後の弟子 山崎ひさを
打水をしてその後は何をする 高野素十
夜長寝てその後の雁は知らざりき 日野草城
颱風のその後を同じ予報官 高澤良一
その後の鳥獣に鳥羽僧正忌 鈴木榮子
クリスマスケーキの箱のその後かな ハードエッジ
二歩三歩その後まつたく鶴凍てし 鈴木真砂女
冬薔薇や遣欧少年のその後 川奈正和

電波塔の天辺いよよ竜天に ハードエッジ

電波:
春立つや電波を放つ電波塔 ハードエッジ
見えぬもの重んずる日や電波の日 田川飛旅子
電波の日こよなき晴となりにけり 山田みづえ
気に入りの電波に乗つて神の旅 ハードエッジ

ぶらんこを漕ぐや没日に抗すべく ハードエッジ

抗す:
暑に抗す老の襷をかけにけり 阿部みどり女
ハンカチをきつちり八つに折り抗す 後藤綾子
目高らも流れに抗す草の花 篠田悌二郎

風船を逃せしほどの一大事 ハードエッジ

一大事:
若草に厩出しといふ一大事 ハードエッジ
我生の今日の昼寝も一大事 高濱虚子
一大事も糸瓜も糞もあらばこそ 夏目漱石
しぐるゝやこれ俳諧の一大事 加藤郁乎
霜焼の痒きことまた一大事 今井杏太郎
年の瀬や一私事なれど一大事 安住敦

潮干狩り太平洋は水びたし ハードエッジ

磯遊びさても貝殻長者なり ハードエッジ

スーパーの屋上に立つ苗木市 ハードエッジ

変換の挙式と出でし虚子忌かな ハードエッジ

※この句、実は去年の twitter 発表句だったことが、
今朝 2023.10.25 になって発覚
応募前の類句チェックが甘く、
「変換の」と「変換に」の違いですり抜けてしまった模様
→元句はこちらです

落選で命拾い
大失態、申し訳ありませんでした

昭和の日祝ふ令和の連休に ハードエッジ

連休/自作:
連休の飛び石なれど暖かし ハードエッジ
連休に確と憲法記念の日 ハードエッジ
連休のしかも炎天救急車 ハードエッジ
連休の空を旅して鯉のぼり ハードエッジ
連休の余韻のやうに母の日来 ハードエッジ

亀鳴くと秋の蚯蚓に伝へてよ ハードエッジ

春なれや桜の鯛に花の烏賊 ハードエッジ

蝶も来よ浜にひらひら干鰈 ハードエッジ

シャレ
「葉」-「艸」+虫=蝶
「葉」-「艸」+魚=鰈

草餅を食ひつつ桜餅のこと ハードエッジ

草餅+桜餅:
桜餅草餅春も半かな 正岡子規
うぶごゑを待つや草餅桜餅 鈴木鷹夫
草餅は草摘み桜餅は買ひ ハードエッジ

白あればこその紅白玉椿 ハードエッジ

紅白:
紅白の菓子美しや春の雪 小津安二郎
ふる雪や赤き椿を紅白に ハードエッジ
日出づる国の紅白玉椿 ハードエッジ
紅白の椿源平盛衰記 高濱虚子
こゝに二人梅に紅白あるごとく 久保田万太郎
紅白に城址公園梅祭 ハードエッジ
さきがけし紅白二本梅林 鈴木花蓑
紅白の香り違へて梅の園 ハードエッジ
紅白の源平金銀の蠅 ハードエッジ
紅白の煙突灯る秋の暮 ハードエッジ
紅白のまた黄白の菊日和 ハードエッジ
紅白の白は残して西瓜食ふ ハードエッジ
おしろいの花の紅白はねちがひ 富安風生
白粉の花の紅白種黒く ハードエッジ
紅白もさみしきものよ秋桜 上野泰
紅白に林檎の皮の剥かれゆく ハードエッジ
紅白に着膨れてゐるサンタこそ ハードエッジ
紅白で飾る金銀宝船 ハードエッジ
紅白の破魔矢に鳴らす金の鈴 ハードエッジ

肌荒れの貧しき枝にゝと芽吹く ハードエッジ

肌荒:
肌荒の裸木に差す朝日かな ハードエッジ

山奥を漁夫のさまよふ桃の花 ハードエッジ

漁夫:
肌荒の裸木に差す朝日かな ハードエッジ
蘭鋳や漁夫に飼はれて静かなり 有馬朗人
太陽や農夫葱さげ漁夫章魚さげ 西東三鬼
老漁夫の金の指輪や鳥渡る 中村遥

紫木蓮いざ紫の立姿 ハードエッジ

自転車に乗れて嬉しや花も笑む ハードエッジ

自転車:

卒業や今日も堤を自転車で ハードエッジ
自転車で電車を追へり卒業子 ハードエッジ
口笛や卒業の日も自転車で 伊藤宇太子
自転車を一家乗り捨て磯遊(び) 上野泰

少年の夏自転車を分解す 折勝家鴨
自転車の連なり過ぐる夕立かな 金子敦
何処へでも行ける自転車日焼の子 ハードエッジ
自転車に刺して真白き捕虫網 ハードエッジ
自転車のうしろに乗つて浮輪の子 鶴岡加苗
自転車に昔の住所柿若葉 小川軽舟
自転車の錆び行くままにサドル黴び ハードエッジ

自転車の低きを漕げる婆の秋 ハードエッジ
自転車の浜に埋まる秋の暮 長谷川櫂
前うしろ乗せて自転車秋の空 ハードエッジ
自転車の妻に驚く鰯雲 斎藤夏風
盆過ぎの村を自転車警邏の燈 鷹羽狩行

自転車にちりんと抜かれ日短 齋藤朝比古
凩や間口あらはに自転車屋 小川軽舟

自転車に詰める空気も年用意 ハードエッジ

年立つて自転車一つ過ぎしのみ 森澄雄

行く春を朝寝の床に惜みけり ハードエッジ

連休の五月まぶしく美しく ハードエッジ

連休:

連休の飛び石なれど暖かし ハードエッジ
連休の隙間八十八夜かな ハードエッジ
連休に確と憲法記念の日 ハードエッジ

連休の空を旅して鯉のぼり ハードエッジ
連休の余韻のやうに母の日来 ハードエッジ

風薫る富士は日本一の山 ハードエッジ

日本一:
日本一高き駅なり松飾 橋本美代子
此山の黍の雑煮や日本一 正岡子規

スカートを広げし如く蛸を干す ハードエッジ

スカート:

陽炎やミニスカートがまた流行る ハードエッジ
スカートは落下傘に似風光る 宮坂静生
初蝶やスカートのなか脚うごく 津川絵理子
蒲公英の絮スカートの風に飛ぶ ハードエッジ
スカートの一円を置きうまごやし 鷹羽狩行
スカートをひろくクローバーに広げ坐る 山口青邨

スカートのはたはたしたる船遊 辻桃子

冬萌や巻きスカートに光るピン 小川軽舟

燕の子庇の上はまだ知らず ハードエッジ

庇の上:
行く年や庇の上におく薪 小林一茶

シュッと出る泡の石鹸若葉の夜 ハードエッジ

軽雷の遊ぶが如く二度三度 ハードエッジ

これでもか旱、日盛、油照 ハードエッジ

これでもか:
これでもかと言はんばかりの落椿 佐藤郁良
ストーブを焚くこれでもかこれでもか 右城暮石

虹の字は直線ばかり素気なし ハードエッジ

直線:
廻りつつ一直線の落花かな ハードエッジ
西日へと一直線に路地燃ゆる ハードエッジ
かなかなや一直線にくる寂しさ 正木ゆう子
未来図は直線多し早稲の花 鍵和田秞子
新道は一直線の寒さかな 夏目漱石

雹あまた打てば響くよボンネット ハードエッジ

ボンネット:
ボンネット開けて桜を見せてやる ハードエッジ

下戸にして梅酒造りに長じたり ハードエッジ

下戸:
一門の下戸ばかりなる桜餅 河野静雲
ちびちびと下戸の嗜む梅酒かな ハードエッジ
下戸なりし師も神にます新酒召せ 林翔
下戸なれど新酒の頃の酒の粕 ハードエッジ
下戸は食ひ上戸は唱ひ年暮るる 上村占魚

逃ぐる蚊を叩き落せし団扇なり ハードエッジ

叩き落:
桐の葉を叩き落さん今朝の秋 正岡子規

わくわくの予定きらきらの夏休 ハードエッジ

予定:
暖かくなればの予定ありにけり ハードエッジ
暖かや予定に満ちて予定表 ハードエッジ

夏休の擦傷・打撲・虫刺され ハードエッジ

自らの影に憩へば涼しかろ ハードエッジ

巻貝の俤のある鮑かな ハードエッジ

巻貝:
巻貝に蓋あるあはれ朧月 田中裕明
桜貝手に巻貝はポケットに 橋本美代子
巻貝の肉引き出だす日雷 鈴木鷹夫
土用波来るぞ巻貝二枚貝 ハードエッジ
巻貝の巻きに嘆きの寒さかな 上田日差子
巻貝死すあまたの夢を巻きのこし 三橋鷹女

煙たさの鰻屋で食ふ鰻かな ハードエッジ

煙た:
花ふぶき煙たがられてゐたりけり ハードエッジ

産卵を強ひるが如く石榴割る ハードエッジ

産卵:
産卵の蟇に夜明けの月あかり 飯田龍太
自動車解体こほろぎ産卵管を地へ 宇佐美魚目
産卵のはげしき雪の帝都かな 江里昭彦

菜箸の長き直線流れ星 ハードエッジ

直線:
直線の堂曲線の春の山 高濱虚子
廻りつつ一直線の落花かな ハードエッジ
西日へと一直線に路地燃ゆる ハードエッジ
かなかなや一直線にくる寂しさ 正木ゆう子
新道は一直線の寒さかな 夏目漱石

踏切の遠く鳴り出す刈田かな ハードエッジ

小さき虫顔に当りぬ枯野原 ハードエッジ

小さき虫:
啓蟄や小さき虫には小さき穴 ハードエッジ
小さき虫鳴かざる虫に秋の暮 ハードエッジ
小さき虫落葉を少し噛み砕き ハードエッジ
返り花小さき虫の何処より ハードエッジ

民宿の朝食を待つ炬燵かな ハードエッジ

民宿:
民宿の庭に伏せたる和布刈舟 中本真人
民宿に金魚けんらん海鳴る日 野澤節子
雨の日の海の民宿バナナ食ふ 辻内京子
民宿の海荒るる日を冬仕度 鈴木鷹夫
夕鵙や民宿弥七魚くさし 古舘曹人

右に虎左に牡鹿暖炉燃ゆ ハードエッジ

牡鹿:
起きあがる牡鹿もう角伐られゐて 右城暮石
角切りの命拾ひの牡鹿かな ハードエッジ
揮発せむばかり牡鹿の駆け抜けし 正木ゆう子

おでんの香乗せて回送電車なり ハードエッジ

回送:
龍天へ回送電車くらやみへ 三宅やよい
回送のバス涼しげに走り去る 中本真人

真空を自由落下の羽根布団 ハードエッジ

落下:
飛燕あれは夢に落下の花鋏 市野記余子
六月の瑕瑾とひらく落下傘 加藤郁乎
裾をやや乱して神の滝落下 片山由美子
隕石落下まつくらなそうめんつゆ 冬野虹
霜の夜のミシンを溢れ落下傘 永井龍男

 

 

◎初案50句

角川俳句賞 2023 プランA 初案_rotated

 

◎推敲過程 テキスト

282句/5枚

角川俳句賞2023 プランA 推敲 テキスト

 

◎推敲過程 プリントに手書き

50枚

角川俳句賞 2023 プランA 推敲 手書き

 

◎葉書俳句表側

 

◎データベース画面/桐v10

「挙式の虚子忌」の「原」項目がグレーの地になっている
2023年作ではないことの警戒色
が、実はこれも修正後の画面で、
当時は、旧作をすっかり忘れて再創造&再登録してしまい、
日付も 2023 なので、類句チェックも油断したらしい

それでも「挙式」チェックでは原句も抽出されたハズで、
ならば、1年以上前の句なので、
twitter チェックも慎重になるべきなのに、
ここも句の一部分で検索せず、
しかも、推敲後の俳句で検索したので、
「変換の虚子の忌」と「変換に虚子の忌」の違いでヒットせず

類句チェックのフィルターはあったが、
油断すると案外簡単にすり抜けてしまうのが、
身にしみて分った事案

 

 

◎落選葉書一覧リンク

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以上です