追記:城攻め/2020.3.28、彷徨ふ/2018.2.16、捧ぐ/2018.2.5、分割/2017.12.13、萎ぶ/2017.12.12、諭す/2017.11.21、誘ふ、慕ふ/2017.9.15
◎和語俳句、さ行の「さ」です
→「し」
→「す」
→「せ」
→「そ」
目次
◎苛む=さいなむ
初蝶を苛む風となりにけり 西宮舞
稲妻の斬りさいなめる真夜の岳 福田蓼汀(りょうてい)
◎遮る=さえぎる
大夏木日を遮りて余りある 高濱虚子(たかはま・きょし)
秋の日を幹重なりて遮りぬ 高濱虚子
いつぽんの幹のさへぎる冬日なり 長谷川素逝(そせい)
◎遡る=さかのぼる
遡る花の小川のボートかな 正岡子規(しき)
遡る草刈舟のつづくなり 松村蒼石(そうせき)
◎逆らふ=さからう
白木蓮の散るべく風にさからへる 中村汀女(ていじょ)
※白木蓮=はくれん
やはらかに金魚は網にさからひぬ 中村汀女
さからはず十薬をさへ茂らしむ 富安風生(ふうせい)
冬ざくら死に逆らはぬ鳥けもの 木内彰志(きうち・しょうし)
◎蔑む=さげすむ
蔑めり激しからざる雷などを 山田みづえ
死に遅れたる蟷螂を蔑めり 上田五千石(ごせんごく)
※蟷螂=とうろう=カマキリ
◎捧ぐ=ささぐ
山百合を捧げて泳ぎ来る子あり 富安風生
捧げるの熟語に「捧げ銃」の号令があります
また、
百合には「鉄砲百合」という種類があります
その辺の連想が微かにあるのも一興
一本の山百合は、
「純白の」と書きたいところですが、
(純白なのは、むしろ、鉄砲百合)
ちょっとアバタのあるワイルドな百合です
少年に似合う、というよりも、
少年には不釣り合いな、
濃厚な甘い匂いの、百合の王様が山百合です
(日本特産)
そんなアンバランスな対比に
さらに、
ダイナミックな泳ぎが加わりつつも、
全体は水の冷たさ、静けさに包まれているのです/2018.2.5
→山百合/GGL画像
→鉄砲百合/GGL画像
泳げない子ならば、
山百合の天に近きを折り呉るる 櫛原希伊子(くしはら・きいこ)
捧げ来しは実梅を叩き落とす棒 辻桃子
秋になれば、同様に、
よろよろと棹がのぼりて柿挟む 高濱虚子
◎誘ふ=さそう
誘ひあひ彼岸詣の老姉妹 星野立子
※彼岸詣=ひがんもうで
「姉妹」といえば、たいてい幼子を思いますが、
幼子も年を取ります
そして、
年取っても、姉妹は姉妹です
「55DB」には「姉妹」が140句ほど
内、「老姉妹」は6句だけですが、
いい句があります
蜜豆で別れる慣ひ老姉妹 石丸泰子
老いてこそ姉妹美し谷崎忌 三木敬子
遠足へ未明の声の誘ひ合ふ 中村草田男(くさたお)
ころはよし祇園囃子に誘はれて 後藤立夫
雪さそふものとこそ聞け手毬歌 久保田万太郎
※手毬唄=てまりうた
◎諭す=さとす
猫の子にかがみて諭す京言葉 中戸川朝人
白日傘幼き兄を諭しゐる 大串章
少年を娼婦諭せる焚火かな 竹岡一郎
悴める掌を包みやり諭しけり 西村和子
大根にしみ入るやうに諭しけり 佐藤郁良(かおる)
賀状みな命惜めと諭しをり 岡本眸(ひとみ)
◎彷徨ふ=さまよう
さまよへる行方不明者春の山 矢島渚男
芦刈のそこらさまよふ一人かな 高野素十
月雪をさまよふ花の絵双六 ハードエッジ
◎騒ぐ=さわぐ
金魚田の雨となりたる騒ぎかな 片山由美子
城攻めの騒ぎよ蓮の葉も花も 鷹羽狩行
討入りの日や下町に小火騒ぎ 鷹羽狩行
※小火=ぼや
その他のさ行:
以上です
お読み頂きありがとうございました