長き夜を線香の火の沈みゆく
長き夜の胡麻を圧して胡麻油
而して頁を捲る夜長かな
ペアリング53 四つ折の千円ひらく夜店かな 鶴岡加苗
いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子
朝寒や歯磨匂ふ妻の口 日野草城
恋歌の老によろしき歌留多かな 森澄雄
ペアリング54 鶏に食はせてみたき桜貝 ハードエッジ
寒の字のとれて雀のよく弾み 横井理恵
初夏の乳房の筋の青さかな 野村喜舟
雨を来て雨に帰りぬ茄子の馬 山崎千枝子
ペアリング55 裸子の尿るに弓をなす背かな 波多野爽波
蛇食ふと聞けば恐ろし雉子の声 松尾芭蕉
金銀の卑しき蠅の集りをる ハードエッジ
子の尿の燦燦として山眠る 押野裕
ペアリング56 太陽の育てし地球蝌蚪生まる 生駒大祐
もやもやと老人のゐる夏祓 小原啄葉
にせものときまりし壺の夜長かな 木下夕爾
埋火やつひには煮ゆる鍋の物 与謝蕪村
開発素句報 2019-06 白玉はヘモグロビンの夢を見るか
ハンカチと生れて日々を清らかに
向日葵で円盤投げをしてみたし
暗闇に団扇を探る暑さかな
ペアリング57 紅葉して山に神の名仏の名 成田千空
茄子漬の色移りたる卵焼 藤井あかり
ほほづきのぽつんと赤くなりにけり 今井杏太郎
寒卵割つて明るい春を待つ ハードエッジ
夏 【涼し１】 諳んじて九九を手玉の涼しさよ
旧家こそ昔ながらに涼しけれ
黄の辛子みどりの山葵涼しけれ
忘らるることも涼しと思ひけり
このサイトは一体、どんな俳句を収録しておるのか？
このサイトの内容：
開発素句報
全然堂歳時記
俳句類題
和語俳句
夏 【暑し】 真夏日は赤猛暑日は黒の地図
柿の実の大暑に耐ふる緑色
暑し暑しと素麺すする印度人
暗闇に団扇を探る暑さかな
開発素句報 2019-07 書に遊び昼寝の夢に駆け廻り
茄子の馬流線形でありにけり
化学式美しかりし花火かな
海峡に鯱と鯨や夏の月
秋 【終戦日】 あやまちは勝たざりしこと終戦日
万骨のそして我らの終戦日
白黒の間の黄色終戦日
人種みな平等の夢敗戦日
ペアリング58 遅き日のつもりて遠きむかしかな 与謝蕪村
永き日やばふうと深き牛の息 鈴木牛後
稲妻や浪もてゆへる秋津洲 与謝蕪村
信心はさめることなき湯婆かな 増田龍雨
開発素句報 2019-08 いつまでも手を振つてゐる夏休
かはほりと蝙蝠傘とバットマン
新涼や水切籠に皿を挿す
桃すする幼なのほつぺ落ちさうな
夏 【飲料 酒】うたかたのうすきみどりのソーダ水
襷して新茶娘や駅前に
サイダーとラムネの差異を雲に聞く
アイスクリーム食べさせてゐる古写真
開発素句報 2019-09 日本に神の名あまた柿の名も
申し訳なささうな黄を青蜜柑
菊の香のつんと神代の昔かな
一年で果つる虫草秋の風
【口】 暖かや前歯の欠けし女の子
口笛の如く流星刺さりけり
立冬や歯磨で歯を美しく
いもうとへくちうつしなる手毬唄
ペアリング59 疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮 小沢昭一
白木蓮に純白といふ翳りあり 能村登四郎
万緑や寂しきものに永久歯 ハードエッジ
鮟鱇の口ほどもなき目なりけり ハードエッジ
【鼻】 お大事に嚔・鼻水・鼻詰り
家族の春特急の窓に鼻押し当て
枯色をまとふ香水鼻を打つ
人の世の目くそ鼻くそ山眠る
【手】 割烹着の腕の太さよ草の餅
寝転ぶに春の証の腕まくり
団扇絵の美人片手に夕涼み
梅が枝の肘の辺の氷柱かな
全然堂ブログ履歴
2020.3.24：カテゴリー名修正 俳句類題を分割して名称変更 →お手本歳時記、お手本切口 2020.1.7：pdf 表示不具合解消 ３週間ほど、ご迷惑をおかけしました 先月、”PDF Embedder” をバージョン
開発素句報 2019-10 秋深く赤い夕日を滲ませて
柿の木がこの柿食へと枝垂れけり
湯煙の夜空に消ゆる紅葉かな
少しづつ天気良き日の冬支度
夏 【梅雨２】 梅雨の川みるみる土手を削りをる
持つて出る昨日の傘や梅雨暗し
梅雨出水畦道消えて恐ろしや
草引けば土美しや梅雨晴間
【水底】 水底に映れる影もぬるむなり 杉田久女
水底の目高の影の方が濃し 西村和子
水底に映れるごとし遠花火 長谷川櫂
水の底突けば固しや水澄める 岸本尚毅
夏 【梅雨１】 降りますなあ降るもんですなあ梅雨長し
降り方の緩急自在梅雨の日々
梅雨なれや傘の袋が落ちてをる
長梅雨の変な処に変な虫
ペアリング40 白梅の硬き蕾の香なりけり ハードエッジ
拾はれてよりの仕合せ桜貝 後藤比奈夫
あはれ子の夜寒の床の引けば寄る 中村汀女
元日は大吹雪とや潔し 高野素十
夏 【豆飯】 豆飯を食ふや新茶もごくごくと
卵焼黄色豆飯緑色
目に見えぬ塩の恩寵豆御飯
母の日の母なき月日豆ごはん
ペアリング41 朝顔や板戸にしみて釘のさび 長谷川櫂
紅梅の紅の通へる幹ならん 高濱虚子
ソーダ水深きところを吸はれをる ハードエッジ
しぐるるや駅に西口東口 安住敦
ペアリング42 天高しこれが社長のキャデラック 西村麒麟
七十の母がかしづく雛かな 山田みづえ
あかつきや歩く音して籠の虫 岸本尚毅
風邪の面たはしの如くなりにけり 迷水
ペアリング43 行く春や撰者を恨む歌のぬし 与謝蕪村
青き踏む左右の手左右の子にあたへ 加藤楸邨
山蟻や定家の捨てし歌の数 南うみを
川船のぎいとまがるやよし雀 高濱虚子