ペアリング57 紅葉して山に神の名仏の名 成田千空

ペアリング57

◎卵焼の色

春立つやひよこの色の卵焼 ハードエッジ

  別案:
  桃咲くやひよ子の色の卵焼 ハードエッジ

行春のわが家の色の卵焼 小川軽舟    けいしゅう

茄子漬なすづけの色移りたる卵焼 藤井あかり

卵焼黄色豆飯まめめし緑色 ハードエッジ

 

 

◎四季の卵割り

啓蟄けいちつの寒さこつこつ卵割る 百合山羽公ゆりやま うこう

風光る卵を割つてかき混ぜる 上田信治

朝ざくら家族の数の卵割り 片山由美子

割り落とす卵や冬に入りにけり 正木ゆう子

卵割るやうに今年となりにけり 奥坂まや

寒卵割つて明るい春を待つ ハードエッジ

 

 

◎何となく通過

月日過ぎただ何となく彼岸ひがん過ぎ 富安風生    ふうせい

なんとなく松過まつす福神漬ふくじんづけ甘き 岡本眸    ひとみ

 

 

◎髭の育成

春眠のひげを育ててをりにけり 佐藤郁良   かおる

梅雨長し髭はつぶやくやうに生え 山口優夢   ゆうむ

 

 

◎再びの雨

ふたたびの雨音を聞く朝寝かな ハードエッジ

ふたたびの雨聴くことも夜長かな 鶴岡加苗

 

 

◎誰も見ない

吹く人を誰も見てゐぬ石鹸玉しゃぼんだま 抜井諒一ぬくい   

螢籠ほたるかごわが寝しあとは誰も見ず 山口波津女   はつじょ

誰も見ぬ喫茶きっさのテレビ冬ぬくし 小野あらた

ぼろ市の大きな月を誰も見ず 岸本尚毅   なおき

 

 

◎校歌

下萌や校歌は文語ちりばめて 櫂未知子かい      

校舎より校歌の古しとよの秋 南十二国  じゅうにこく

 

 

◎神の名仏の名

清水にもあるや神の名仏の名 正岡子規  しき

紅葉もみじして山に神の名仏の名 成田千空    せんくう

 

 

◎茄子胡瓜

子らを起し茄子なす胡瓜きゅうりに水をやり ハードエッジ

茄子胡瓜母の育てしものを食ふ 大串章

 

 

◎ぽつんと赤

ほほづきのぽつんと赤くなりにけり 今井杏太郎

時雨しぐるるやぽつんと赤き猿の乳 斉田仁さいだ じん

 

 

以上です