ペアリング53 四つ折の千円ひらく夜店かな 鶴岡加苗

追記:単帯/2020.3.14、化学式/2019.10.1

ペアリング53

◎渡そ話そ

いつ渡そバレンタインのチヨコレート 田畑美穂女たばた みほじょ

鎌倉の何から話そ桜餅さくらもち 田畑美穂女

 

 

◎老境

老いてこそなほなつかしやひな飾る 及川貞おいかわ てい

恋歌の老によろしき歌留多かるたかな 森澄雄

古稀こき過ぎて知る双六すごろく面白おもしろさ 大牧広

 

 

◎砂時計の色

受験子の机に青き砂時計 鶴岡加苗つるおか かなえ

時の日や砂をピンクに砂時計 鈴木榮子

砂時計の砂のももいろ春を待つ 津川絵理子

 

 

◎乳房ある

ふところに乳房ある梅雨つゆながき 桂信子

乳房あるゆえのさびしさ桃すすり 菖蒲しょうぶあや

 

 

◎紙と金属

よきみくじ四つにたたんで単帯ひとえおび 星野立子

四つ折の千円ひらく夜店かな 鶴岡加苗

百円玉握りて寒き列にならぶ 山田露結   ろけつ

 

 

◎どかと、がらりと

いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子

朝夕がどかとよろしき残暑かな 阿波野青畝あわの せいほ

 

 

◎公式、化学式

公式のうつくしく夏果てむとす 小澤實おざわ みのる

ひややかに亀甲きっこうなせり化学式 小川軽舟    けいしゅう

化学式美しかりし花火かな ハードエッジ

 

 

◎霧と鉄道

流れ行くきりれつつ列車待つ ハードエッジ

朝霧をつんざく一番列車かな 寺田寅彦    とらひこ

轟々ごうごうと霧の中行く列車哉 徳田秋声    しゅうせい

汽車の胴霧抜けくればしたたりぬ 飴山實あめやま みのる

霧にともす登山電車や下校どき 青木泰夫   やすお

 

 

◎歯磨の香

朝寒や歯磨はみがきにおふ妻の口 日野草城    そうじょう

行秋やすすぎてににほふ歯磨粉はみがきこ 小川軽舟

 

 

◎年末年始

娘二人来て帰りけり大晦日おおみそか 永井龍男   たつお

子連夫婦来て帰りたる二日かな 安住敦    あつし

 

以上です