全然堂歳時記 春の部
【春】はる
◎葉書俳句
◎テキスト
春といふだけで良いことありさうな ハードエッジ
ありさうな:
猫の子に何かいいことありさうな ハードエッジ
シクラメン真白く佳き事ありさうな 菖蒲あや
明暗の春よ根を張り芽を伸ばし ハードエッジ
明暗:
篝火や花の明暗あわただし 下村梅子
稲妻の明暗雲の裏走る 高濱年尾
春はまだ氷の解けし冷たさに ハードエッジ
春はまだ:
春はまだ微睡む様に泥濘んで ハードエッジ
春はまだ田舎の奧の梅の花 正岡子規
春はまだ熊の欠伸と蕗の薹 ハードエッジ
春はまだ短うたるゝ柳哉 正岡子規
ふかぶかと春の大地を踏みしめて ハードエッジ
「ふかふか」からの改案だが、さて?
大地:
海のもの大地に干して二月かな 大串章
蒔く種の嬉々と大地にまぎれこむ 檜紀代
うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ 高濱虚子
花散らす雨にうるほふ大地あり 稲畑汀子
ソフトクリーム溶けて流れて大地あり 池田澄子
日の暮の大地へ帰る焚火かな ハードエッジ
ラグビーボールすつくと立てる大地かな ハードエッジ
蝶飛んで百花の春となりにけり ハードエッジ
百花:
柩かこむ春の百花に喪の色なし 内藤吐天
四月逝く百花騒然たる中に 相馬遷子
魁の一花百花の気概もて 高澤良一
この園の百花のなかの花みようが 吉屋信子
雪を来て百花の春や初芝居 ハードエッジ
青年は清と申す伊予の春 ハードエッジ
高濱虚子、本名清
1874年〈明治7年〉2月22日 – 1959年〈昭和34年〉4月8日
出身地は愛媛県温泉郡長町新町(現・松山市湊町)
伊予国=愛媛県
土手に寝て春の証の腕まくり ハードエッジ
土手の四季:
土手に来て吹くや大きな石鹸玉 ハードエッジ
摘草や橋なき土手を何処までも 篠原温亭
土手につく花見疲れの片手かな 久保より江
若草や土手にくひつく牛のむれ 正岡子規
梅雨の川みるみる土手を削りをる ハードエッジ
焼夷弾逃れし土手や花火見る 川村みよき
どんぐりの落つるや土手の裏表 正岡子規
土手を外れ枯野の犬となりゆけり 山口誓子
孤児ら遊び土手の枯草擦り切れし 津田清子
め手に嬰ゆん手に荷物春忙し ハードエッジ
め手=馬手=右手
ゆん手=弓手=左手
初案「母の春」をジェンダーに鑑みて、、、
幼子がめちやくちや歌ふ春の歌 ハードエッジ
苦茶:
春の水皺苦茶にして渉りけり 長谷川櫂
花満ちてしわくちやに泣く赤子かな 仙田洋子
滝壺や水滅茶苦茶に混み合つて ハードエッジ
ハンカチの皺くちや若き日のやうに 大牧広
無茶苦茶に飛んで蝙蝠らしくなる ハードエッジ
爺ちやんにもらふ皺くちやお年玉 木田千女
くしやくしや/参考:
大根を水くしやくしやにして洗ふ 高濱虚子
大輪や春爛漫の観覧車 ハードエッジ
春爛漫:
春爛漫沈没船に稚魚あふれ 小池康生
スキップで春の体が飛んでくる ハードエッジ
参考句:
くさめ児に母来る祖母が飛んで来る 大野伊都子
鞠のごと弾み来し子にお年玉 轡田進
スプリング・ハズ・カム三色ボールペン ハードエッジ
三色:
赤減つて春の三色ボールペン 加藤静夫
二串の花見団子の三色かな 京極杞陽
羅の僧三人の三色に 古舘曹人
三色旗とは青空と雲鶏頭花 ハードエッジ
三色に白粉花の赤白黄 ハードエッジ
行楽や家族の春も瞬く間 ハードエッジ
行楽:
足湯してをはる行楽花の雨 赤松蕙子
行楽の日焼は撫でて消ゆるほど 山口誓子
行楽の人見て通る落葉掻 西山泊雲
妙齢の箸が転げて春の旅 ハードエッジ
妙齢:
柿若葉妙齢とこそ申さばや 石塚友二
みちのくの奥へ奥へと春の旅 ハードエッジ
奥へ奥へ:
連れ立ちて奥へ奥へと避暑の宿 岩田由美
奥の細道よりも奥へと月の旅 赤松蕙子
奥へ奥へ夕日を送り山眠る 大野林火
春なれや花なき枝のゆるるさへ ハードエッジ
春なれや:
春なれや名もなき山の薄霞 松尾芭蕉
春なれや昨日の莟けふの花 ハードエッジ
今日の花:
純白の心に今日の花ひらく 阿部みどり女
桃が枝やひらき加はるけふの花 日野草城
新涼や一輪挿のけふの花 片山由美子
ゆつくりと春の天気の下り坂 ハードエッジ
自作の天気:
暖かや各地の天気聞くことも ハードエッジ
春泥もまどろむやうな良い天気 ハードエッジ
天高く何をするにもよい天気 ハードエッジ
少しづつ天気よき日の冬支度 ハードエッジ
春かなし下駄箱の名札みな剥がされ ハードエッジ
名札:
産科とふ名札はたのし春隣 中村汀女
門弟の名札そろふや鏡餅 中村吉右衛門
足湯して余生の春といふべしや ハードエッジ
足湯:
雉鳴くや足湯に村を見晴らして 杉原祐之
初旅の足湯して待つ市電かな 太田うさぎ
◎推敲過程/テキスト
全然堂歳時記 春 【春】
◎推敲過程/葉書+手書き
保留
以上です