角川俳句賞2020 落選作-b 山一つ氷つてゐたる昼の酒

追記:割烹着/2021.1.18

角川俳句賞2020
プランB「明日を信じて」50句

落選作

◎葉書俳句

角川俳句賞2020 落選葉書

 

角川俳句賞2020 落選葉書

 

◎テキスト

寧楽ならと書けば唐天竺からてんじく春霞はるがすみ ハードエッジ

  天竺の俳句:
  天竺の仏は何をころもかへ 正岡子規  しき

 

 

本降ほんぶりにくらみたりけり春の雪 ハードエッジ

  本降り秀句:
  ものの芽をうるほしゐしが本降りに 林翔はやし しょう

  本降りとなるも神輿みこしみやめず 小澤實おざわ みのる

  暗みたり秀句:
  くべ足して暗みたりけり花篝はなかがり 西村和子

 

 

たがやしてくわねつとりと重たけれ ハードエッジ

  鍬の秀句:
  田打鍬一人洗ふや一人待ち 高野素十    すじゅう

  涅槃会ねはんえ蚯蚓みみずちぎれし鍬の先 正岡子規  しき

  鍬二丁使ひ分けしてたけのこ掘る 右城暮石うしろ ぼせき

  一と鍬にあぜを欠きたり落し水 高濱年尾たかはま としお

  鍬の跡ざつくりとあり衣被きぬかつぎ 長谷川櫂はせがわ かい

  掛稲かけいねや洗ひ上げたる鍬の数 加舎白雄かや しらお

  あめつちの地のあるかぎり鍬始くわはじめ 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

ビル裏に配管の巣やつばめ来る ハードエッジ

  改案:
  ビル裏に配管くねる燕来る ハードエッジ

  配管俳句:
  製油所の銀の配管春の海 大西主計   かずえ
    /角川俳句賞2020落選展より

  月涼し配管老いし雑居ビル 小川軽舟    けいしゅう

  配管の寒さがビルをはしりけり 鴇田智哉ときた ともや

  夢の世のコンビナートの聖夜かな ハードエッジ

  銀管のコンビナートのクリスマス ハードエッジ

 

 

涅槃絵図ねはんえず涙ながらにせゆくも ハードエッジ

  涅槃と涙:

  ほろほろとりゅうの涙や涅槃像ねはんぞう 正岡子規  しき

  涅槃会ねはんえや花も涙をそゝぐやと 山口素堂   そどう

  泣いてゐる涙は描かず涅槃の図 中本真人   まさと

  慟哭どうこくの涙は描かず涅槃像 三村純也

  百獣ひゃくじゅうのなみだあかるし涅槃像 室積徂春むろづみ そしゅん

  鳥獣ちょうじゅうにはじめてなみだ涅槃絵図 井沢正江

 

 

仏生会ぶっしょうえ桜餅さくらもちなど良からずや ハードエッジ

  仏と桜餅:
  御仏みほとけにこれもそなへぬさくらもち 高濱虚子

  仏壇は金色こんじきの闇桜餅 ハードエッジ

  神仏に願ひをかけて桜餅 ハードエッジ

  仏と桜:
  堂前の大山桜灌仏会かんぶつえ 星野立子

  鎌倉に大仏と虚子きょし桜貝 ハードエッジ

  人混まぬ朝の大仏初桜 石井とし夫

  大仏殿だいぶつでんいでて桜にあたたまる 西東三鬼さいとう さんき

  大仏の顔よごれたり山桜 正岡子規  しき

  仏間ぶつままでさくらの風を通しけり 櫛原希伊子くしはら きいこ

  白湯さゆうまし山の仏とさくらみて 矢島渚男    なぎさお

 

目の玉は二つのままに蝌蚪かとかえる ハードエッジ

  お玉杓子と蛙の句:
  いきいきとおたまじやくしに蛙の目 古川朋子   ともこ

  蛙の目の名句:
  蛙の目越えてさざなみ又漣 川端茅舎    ぼうしゃ

 

ざくざくと浅蜊あさりが浜と申さばや ハードエッジ

  ざくざく俳句:
  一掻ひとかきの砂に浅利あさりのざくざくと 大谷弘至おおたに ひろし

  切り口のざくざく増えてにらにほふ 津川絵理子

  ぎつしりとざくざくと星星月夜ほしづきよ 正木ゆう子

  のりたまをざくざく振つてとよの秋 金子敦     あつし

  ざくざくと踏めば我ある霜柱しもばしら 林原耒井はやしばら らいせい

  ざくざくと銀杏いちょう落葉の黄金色こがねいろ ハードエッジ

  申さばや俳句:
  柿若葉妙齢みょうれいとこそ申さばや 石塚友二   ともじ

  箱根山すすき八里と申さばや 正岡子規  しき

 

 

土手どてゆけば子猫の見ゆるバルコニー ハードエッジ

  土手の四季:
  土手につく花見疲れの片手かな 久保より江

  若草や土手にくひつく牛のむれ 正岡子規  しき

  梅雨つゆの川みるみる土手を削りをる ハードエッジ

  焼夷弾しょういだんのがれし土手や花火見る 川村みよき

  どんぐりの落つるや土手の裏表うらおもて 正岡子規

  土手をれ枯野の犬となりゆけり 山口誓子   せいし

  孤児こじら遊び土手の枯草り切れし 津田清子

 

生家跡せいかあとには一面の春の草 ハードエッジ

  秋なら、
  秋雨あきさめに草芽吹めぶきたる更地さらちかな ハードエッジ

  生家の秀句:
  生家売るは棄教ききょうのごとし鳥雲とりくもに 伊藤伊那男  いなお

  アルバムの生家に残してきた月夜 対馬康子つしま やすこ

  廃屋はいおくは誰かの生家烏瓜からすうり 和田耕三郎

  生家すなはちつい栖家すみか鏡餅かがみもち 下村ひろし

  手毬唄てまりうたあとかたもなき生家より 友岡子郷

 

ほのかなる匂ひの花の首飾くびかざり ハードエッジ

  花の首飾り、とくれば、

  花の匂いの名句:
  うすめても花の匂ひの葛湯くずゆかな 渡辺水巴   すいは

 

 

古茶こちゃといふ音のひびきも古茶らしく ハードエッジ

  新茶古茶の秀句:
  新茶出て古茶となるなりおのずから 高野素十    すじゅう

  古茶はたき出して新茶を詰めにけり 大塚次郎

  人々と新茶ひとりの今を古茶 皆吉爽雨みなよし そうう

  ひとり居はときもゆるやか新茶古茶 井沢正江

 

 

電柱が出水でみずの町に灯をともす ハードエッジ

  小4の時の引越:
  町方町まちかたまち/静岡県沼津市から出水でみず/和歌山市へ
  半年ほど住みましたが、
  幸い、実際の出水には会わず

  電柱の四季:
  電柱はさるレガッタは進む ハードエッジ

  代掻しろかきの泥電柱のすそよごす 高濱年尾たかはま としお

  電柱に電球一つ星祭ほしまつり 永島靖子

  船宿の名が電柱に日短ひ-みじか 岸本尚毅   なおき

  雪晴れて電柱すでにかわきをり 京極杞陽きょうごく きよう

  電線がつなぐ電柱枯るる中 西東三鬼さいとう さんき

 

白玉しらたまの熱きをます氷水 ハードエッジ

  白玉の秀句:
  白玉や子のなきつまをひとりめ 岡本眸    みとみ

  白玉や子等の喜ぶことをせむ 西村和子

  白玉や母子誕生の月おなじ 安住敦あずみ あつし

  姉妹あねいもと白玉つくるほどになりぬ 渡辺水巴   すいは

  白玉自作:
  白玉や白く小さくけがれなく ハードエッジ

 

 

ポンと抜くビール家ではプシュと開け ハードエッジ

  瓶か缶か

 

 

ゆるゆると起きてシャワーを昼餉ひるげ前 ハードエッジ

  ゆるゆるの四季:
  ゆるゆるとされど全ての土筆つくしむ 櫂未知子かい みちこ

  ロッカーのかぎのゆるゆる海の家 金子敦     あつし

  ゆるゆると湯のあふれをる紅葉もみじかな ハードエッジ

  片栗粉かたくりこゆるゆるいて春を待つ 金子敦

 

 

万緑ばんりょくの中に危ない橋かかる ハードエッジ

  万緑の名句、秀句:
  万緑の中や吾子あこの歯生えむる 中村草田男   くさたお

  万緑にラムネ奔騰ほんとうさせ若し 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

    ※「沸騰ふっとう」とするサイトもあるけど、、、

  万緑や温泉でゆあるゆゑの山の駅 石山佇牛

  万緑や寺格をほこる大薬缶やかん 斉田仁さいだ じん

  万緑や木の香せたる仏たち 伊藤通明

  万緑や死は一弾いちだんを以てる 上田五千石    ごせんごく

 

 

秋冬のうれひはなけれせみの声 ハードエッジ

  愁いなき句:
  愁なきに似て薔薇ばらに水やつてをり 安住敦あずみ あつし

  うれひなしく柿のいと赤く 久保田万太郎

 

割箸わりばしの先に毛虫がくねくねと ハードエッジ

  割箸の自作:
  砂浜にナイフ・割箸・桜貝 ハードエッジ

  割箸が置かれ冷奴ひややっこが置かれ ハードエッジ

  割箸の白木を割つて神の留守るす ハードエッジ

 

らちもなく旅の疲れの籐寝椅子とうねいす ハードエッジ

  籐寝椅子秀句:
  この船のながき船路の籐寝椅子 山口波津女   はつじょ

  両舷りょうげんけい相似あいにたり籐寝椅子 山口波津女

  籐寝椅子そのおもかげのよこたはる 長谷川櫂

 

吾輩わがはいは西日に立てる赤い箱 ハードエッジ

 

明るさの明日を信じて火取虫ひとりむし ハードエッジ

  明日の秀句:
  明日も会ふやうな顔して卒業す 大塚次郎

  ひばりひばり明日は焼かるる野と思へ 櫂未知子かい      

  手花火に明日帰るべき母子も居り 永井龍男   たつお

  明日食べむうりありすでに今日楽し 相生垣瓜人あいおいがき かじん

  明日よりは稲刈となる祭かな 瀧澤伊代次たきざわ いよじ

  まんじゆしやげ明日なき牛のに燃ゆる 木田千女きだ せんじょ

  幾千代いくちよも散るは美し明日は三越 攝津幸彦せっつ   

  自作の明日:
  冷蔵庫バタンと閉めてまた明日 ハードエッジ

  明日はもう市民プールの最終日 ハードエッジ

  明月めいげつはけふ明日みょうにちはあしたなり ハードエッジ

 

 

遠花火とおはなび虫けらどもはやみの中 ハードエッジ

  闇の中の自作:
  闇の中風の中なる枯野かな ハードエッジ

  外套がいとうの闇の中なる体かな ハードエッジ

  灯を消して柚子ゆずも柚子湯も闇の中 ハードエッジ

  暗闇の中の波音年新た ハードエッジ

 

 

切株きりかぶを囲む走り根つゆけしや ハードエッジ

  切株の秀句:
  切り株の内よりくさ日永ひながかな すずきみのる

  切株のぐるりよりふく木の芽かな 正岡子規  しき

  生々と切株にほふ雲のみね 橋本多佳子

  切株の年輪よぎる蜥蜴とかげかな 野村喜舟    きしゅう

  切株がひとつ秋風聞けとこそ 山田弘子

  色鳥や切株はもう年とらぬ 中村明子

  行く秋の切株にある余熱かな 佐藤郁良   いくら

  切株に冬日二段ののこの跡 大串章

  切株に坐つて待てば春や来む 鈴木榮子

  自作の切株の四季:
  切り立ての切株に降る春の雨 ハードエッジ

  薄氷うすらいや切株の上を滑り落つ ハードエッジ

  切株の落花らっか再び吹かれ行く ハードエッジ

  苔寺こけでらの苔の切株梅雨つゆ深し ハードエッジ

  切株の息の根あはれ秋の風 ハードエッジ

  切りたての切株に積む柿の山 ハードエッジ

  切株に廻れよ廻れ木の実独楽こま ハードエッジ

  切株に雪の帽子をかぶせやる ハードエッジ

 

 

呪文じゅもんごとくチヨコレイトや露地ろじの秋 ハードエッジ

  呪文の秀句:
  とびとびに呪文のごとき曼珠沙華まんじゅしゃげ 柏柳明子かしわやなぎ      

  呪文とけ冬日の亀が歩き出す 桂信子

 

 

引かれ行く牛の貫禄かんろく秋桜あきざくら ハードエッジ

  先行句:
  秋風やほふられに行く牛の尻 夏目漱石なつめ そうせき

  冷されて牛の貫禄しづかなり 秋元不死男  ふじお

 

 

もず鳴くや泣き出しさうな空の色 ハードエッジ

  泣き出す俳句:
  迷ひ子の泣き出す春の日ぐれかな 大伴大江丸おおともの おおえまる

  かくれんぼの鬼が泣き出す夕焼ゆやけかな 金子敦     あつし

  しまひにはみんな泣き出し水鉄砲 鶴岡加苗

  闇の夜や子供泣き出すほたる舟 野澤凡兆のざわ ぼんちょう

  童部わらんべの独り泣き出て秋の暮 森川許六    きょりく

  寝呆ねぼけし子夜なべの土間へ来て泣きだす 大熊輝一

  柿もいで鬼が泣き出しさうな空 藤岡筑邨    ちくそん

  鳴く+泣く:
  かめ鳴くはおのれせつを泣くごとし 石原八束   やつか

  わらべ泣きじやくるかにせみ鳴き終り 福田蓼汀    りょうてい

  蚯蚓みみず鳴くなんぞ人泣くをとがむるや 山口青邨    せいそん

 

 

あぜをゆく白き軽トラかり渡る ハードエッジ

  改案:
  畦をゆく白き軽トラ雁の声 ハードエッジ

  トラックの俳句:
  大方は白の軽トラ植木市 ハードエッジ

  トラックに男やまもり御祭礼ごさいれい 本井英    えい

  食パンを運ぶトラックさわやかに ハードエッジ

  トラックに婚の荷高きとよの秋 池田秀水

  トラックが馬を乗せ行く枯野かな ハードエッジ

  トラックが枯野越え来て女おろす 寺山修司

  歳晩さいばんやトラックしたたるまで洗ふ 山口誓子

  トラックの帰りは軽し日脚ひあしぶ ハードエッジ

 

 

秋の灯の赤き点滅てんめつとう高し ハードエッジ

  塔の俳句:
  鳥帰るところどころに寺の塔 森澄雄

  鉄塔は囲ひのなかに花は葉に 古川朋子    ともこ

  鉄塔の二百十日の高さかな 村田篠    しの

  一対の塔木枯こがらしかなで合ふ 藤田湘子    しょうし

  こがらしや人類に塔まだまだ建つ 丸田洋渡   よっと

  かじかみて見上ぐる塔の高さかな 片山由美子

  灯のびょうの東京タワー年の暮 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

  すらり立つ給水塔も水仙すいせんも ハードエッジ

 

 

団栗どんぐりを転がしてみる机かな ハードエッジ

  転がし俳句:
  涼しさに転がしておく木魚もくぎょかな 長谷川櫂     かい

  秋風の転がして行くむくろかな ハードエッジ

  餅搗もちつきうすころがして洗ひをり 辻桃子

  転がして鉄の重さの雪達磨ゆきだるま ハードエッジ

 

 

流星りゅうせい奇跡きせきはある日突然とつぜんに ハードエッジ

 

真つ暗な紅葉もみじの宿に月もなし ハードエッジ

  月もなし:
  黒雲の晴れて見たれば月もなし 正岡子規

  えて上野の森の月もなし 正岡子規

  先行句:
  月に寝て夜半よわきく雨や紅葉宿 高野素十    すじゅう

  月の宿の四季:
  春月や宿とるまでの小買物 芝不器男 ふきお

  月見ゆるたき見ゆる宿をえらびけり 正岡子規

  風鐸ふうたくが床に置かれて月の宿 阿部みどりじょ

  中庭の木のてらてらと月の宿 ハードエッジ

  月の宿二階のとなり同士かな 車谷弘くるまたに ひろし

  奈良に来て冬の月夜の宿をとる 星野立子

 

行く秋や海に広がる河のて ハードエッジ

  広がるの四季:
  温泉の素の広がるおぼろかな ハードエッジ

  火は見えで黒く広がる焼野やけのかな 高濱虚子

  雨音の屋根に広がる三尺寝さんじゃくね 齋藤朝比古さいとう あさひこ

  秋風や地下へ広がる丸の内 加藤静夫

  町並の裏に広がる葱畑ねぎばたけ ハードエッジ

  黒髪のわつと広がる初湯かな ますぶち椿子

 

 

金賞の菊の余生よせい日向ひなたぼこ ハードエッジ

  先行句:
  金賞の菊の余生よ勝手口 伊藤石英    せきえい

  現役のころは、
  金賞の字がまだれて菊花展きっかてん 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

ひざに来る冬の日差ひざしや猫も来て ハードエッジ

  猫を出せばいいってもんじゃありませんが、、、

  冬の猫:
  猫が知る冬日もつとも濃きところ 伊藤伊那男  いなお

  親猫はずつしり重し冬ごもり 日野草城    そうじょう

  神さまのやうにまつ白冬の猫 平井照敏    しょうびん

  つつがなく白紙にもどる冬の猫 永末恵子

 

 

おしやべりの子に耳貸して毛糸編けいとあみ ハードエッジ

  先行句:
  耳貸して毛糸編む手の小止こやみなく 麻田椎花   すいか

  耳を貸す秀句:
  耳までも貸してしまへり目借時めかりどき 能村研三のむら けんぞう

 

 

山一つ氷つてゐたる昼の酒 ハードエッジ

  まさか、類句があろうとは!
  国一つ氷つてゐたり空青く 大谷弘至おおたに ひろし

  氷っている俳句:
  流しびな雪が氷つてゐたりけり 岸本尚毅   なおき

  人知れずじつと氷つてゐたりけり ハードエッジ

  水音の周り氷つてしまひけり 山本一歩

  足跡の氷つてゐたり雑木山ぞうきやま 長谷川櫂はせがわ かい

  きらきらと氷つてゐたり雪兎ゆきうさぎ 長谷川櫂

 

みづからをなきものにする焚火たきびかな ハードエッジ

  自作のなきものの四季:
  雛流ひなながし色あるものもなきものも ハードエッジ

  誘蛾燈ゆうがとうはねなきものはよじ登る ハードエッジ

  焦目こげめなきものは秋刀魚さんまにあらざりき ハードエッジ

  手袋を罪なきものが踏んでゆく ハードエッジ

  落葉焚おちばたきせいなきものの赤く燃ゆ ハードエッジ

 

 

無残むざんやな風邪かぜの母から引き離され ハードエッジ

  無残やな:
  無残やな蜘蛛くもに喰はれしほたるあり 会津八一あいづ  やいち

  無残やな熟柿じゅくしの上に熟柿落つ ハードエッジ

 

 

白紙へと戻るすべなき古日記ふるにっき ハードエッジ

  白紙の自作:
  B面は白紙卒業証書かな ハードエッジ

  鉛筆で木枯こがらしと書く白紙かな ハードエッジ

  一枚の白紙の上に描く枯木 ハードエッジ

 

 

行く年のその足音を聞かんとす ハードエッジ

  聞かんとすの秀句:
  冬の日の海にる音をきかんとす 森澄雄

  聞かんとすの自作:
  花びらの千切ちぎるる音を聞かんとす ハードエッジ

  金魚玉きんぎょだま時の流れを聞かんとす ハードエッジ

  売れ残る虫のあわれを聞かんとす ハードエッジ

  凍滝いてだきのその轟音ごうおんを聞かんとす ハードエッジ

 

 

新年

友らみな老いて目出度めでたし年賀状 ハードエッジ

  目出度しの俳句:
  まき足して火の粉めでたし薪能たきぎのう 猪俣千代子いのまた     

  贋物にせもののいく代めでたし虫払むしばらい 高井几董   きとう

  御田植おたうえ太鼓たいこの泥もめでたしや 高野素十    すじゅう

  燈籠とうろうにならでめでたし生身魂いきみたま 各務支考かがみ しこう

  かる~と上る目出度しもちきね 高濱虚子たかはま きょし

  すみはじく金地きんじめでたし筆始ふではじめ 下村ひろし

  目出度し自作:
  花の名が海に目出度し桜鯛さくらだい ハードエッジ

  爺婆じじばば白髪しらがめでたし七五三 ハードエッジ

  あいすがしあかねめでたし初日の出 ハードエッジ

  の神も乗せて目出度し宝船 ハードエッジ

  にうけて朝日めでたし宝船 ハードエッジ

 

初富士の大浴場をひびかせて ハードエッジ

  具体的には、
  からからと初湯のおけをならしつつ 高濱虚子たかはま きょし

  響かせて自作:
  響かせて鉄橋高し雪解川ゆきげがわ ハードエッジ

  金棒かなぼうを地に響かせて冬立つ日 ハードエッジ

  落葉掻おちばか砂利じゃり響かせてゐたりけり ハードエッジ

 

 

歌留多かるた取る水仕で冷えし手が早し ハードエッジ

  参考句:
  歌留多よむことの上手な割烹着かっぽうぎ 石田郷子

  水仕の自作:
  さえずりや水仕の音も色々に ハードエッジ

  小手先こてさきの水仕なれども冷たかり ハードエッジ

  指にまだ水仕の冷えや毛糸編む ハードエッジ

  新玉あらたまの水仕すみたる手を洗ふ ハードエッジ

 

 

たく水仙すいせん縁側えんがわ福寿草ふくじゅそう ハードエッジ

  縁側の秀句:
  縁側欲し春愁しゅんしゅうの足らすべく 中原道夫

  海の縁側さくら貝さくら貝 水内慶太みのうち けいた

  縁側へ居間へ仏間へ西瓜すいかかな 齋藤朝比古さいとう あさひこ

  縁側の日にゑひにけりお元日 村上鬼城    きじょう

 

 

結局は初案しょあんに戻る炬燵こたつかな ハードエッジ

  その途中は、
  句を玉と暖めてをる炬燵かな 高濱虚子たかはま きょし

  炬燵かなの秀句:
  餅花もちばなの高々とある炬燵かな 高濱虚子

  本箱に手の届かざる炬燵かな 会津八一

  猫老いてねずみらず炬燵かな 村上鬼城    きじょう

  自作の炬燵かな:
  楽しくて体にも良き炬燵かな ハードエッジ

  若き日の日記を読める炬燵かな ハードエッジ

  板の上にあごを乗せたる炬燵かな ハードエッジ

  その人の炬燵でありし炬燵かな ハードエッジ

 

 

木のあはれ草のあはれを雪に消す ハードエッジ

  雪に消える自作:
  赤き実や雪にともりて雪に消ゆ ハードエッジ

  水仙の切られし跡も雪に消ゆ ハードエッジ

 

 

火事跡の黒き柱や雪女郎ゆきじょろう ハードエッジ

  火事跡の秀句:
  火事跡に鮮しき朝の午乳びん 高島茂

  火事跡のバケツのふちにつもる雪 皆吉司みなよし つかさ

  火事跡の貼紙はりがみにある遠い町 林菊枝

 

 

梅匂ふ医者の卵の徹夜明てつやあけ ハードエッジ

  梅匂ふの自作:
  紅白は神の依代よりしろ梅匂ふ ハードエッジ

 

 

暖かくなればと思ふことばかり ハードエッジ

 

◎初案50句

※大方は季節順ですが、少し例外あり ご容赦

 

 

◎推敲過程 データ

角川俳句賞 2020 プランB

 

◎推敲過程 プリントに手書き

角川俳句賞2020 プランB

 

以上です