全然堂歳時記 春の部
【春の風】はるのかぜ
全然堂歳時記=現在52記事=春夏秋冬=16-9-14-10—2-1/年末年始
◎葉書俳句
◎テキスト
古き良きものこそ大事春の風 ハードエッジ
山門に仁王怒れる春の風 ハードエッジ
仁王:
金泥の仁王の乳首あをあらし 川崎展宏
黴の世の黴びざるものに仁王の眼 高橋悦男
春風が吹いて明るくなりにけり ハードエッジ
明るく:
明るくてまだ冷たくて流し雛 森澄雄
藤暗く躑躅明るく月暗く 岸本尚毅
夏至の日の手足明るく目覚めけり 岡本眸
夏の雨明るくなりて降り続く 星野立子
降り出して明るくなりぬ杜若 山口青邨
橋の上まだ明るくて秋の暮 鷹羽狩行
ゼリー明るく羊羹暗く盆の家 正木ゆう子
ピーマン切って中を明るくしてあげた 池田澄子
そのあたり明るく君が枯野来る 西東三鬼
明るく/自作:
石段のほの明るくて春の雨 ハードエッジ
その色の淡く明るく雛あられ ハードエッジ
夜店とは神の如くに明るくて ハードエッジ
鵙の贄死後を明るく枝の先 ハードエッジ
寒夕焼今日の終りを明るくす ハードエッジ
乾きたる土明るくて霜柱 ハードエッジ
ひらかなのふところ丸く春の風 ハードエッジ
平仮名:
ひらがなの連なる花壇はるのひる 利普苑るな
ひらかなの柔らかさもて春の波 富安風生
ひらがなでさよりと書けばさもさより 野木藤子
黒板はひらがなばかり花林檎 吉原文音
秋の灯にひらがなばかり母の文 倉田紘文
秋の灯にひらがなばかり母へ文 倉田紘文
秋の蝶子のひらかなは彫るごとし 津川絵理子
書初や平仮名一人一字づつ 久保田万太郎
ひらかなの散らかつてゐる歌留多会 後藤立夫
朝も早よから春風の蜜柑山 ハードエッジ
春風も驚く凧の高さなり ハードエッジ
春風にそれは巨大な風車 ハードエッジ
巨大:
海底に巨大戦艦梅白し 利普苑るな
巨大な蛾死んで巨大な廃墟なり 斉田仁
繃帯を巻かれ巨大な兵となる 渡邊白泉
山よりも丘に親しき春の風 ハードエッジ
春風に兎の耳の赤ん坊 ハードエッジ
兎の耳:
下萌や早も兎の耳の丈 ハードエッジ
春風のやうな幼子春の風 ハードエッジ
在校生にも春風の吹き渡れ ハードエッジ
春風と別れて入る美術館 ハードエッジ
美術館:
永き日の近代美術館しーん 鈴木鷹夫
中庭に蒲公英の咲く美術館 ハードエッジ
夏立つや昔リッカー美術館 ハードエッジ
美術館閉鎖して美の冷蔵庫 三好潤子
春風の蝶々むすび花むすび ハードエッジ
花結び:
ひもとくや春のはじめの花むすび ハードエッジ
おむすびにならねど春の花むすび ハードエッジ
解けやすきものにうすら氷花結び ハードエッジ
武者人形兜の紐の花結び 高橋淡路女
花結びの黄襷で搗く祝餅 毛塚静枝
春に吹く風は花びら運ぶ風 ハードエッジ
大陸の砂を巻き上げ春の風 ハードエッジ
巻き上げ:
あたたかや鼻巻き上る象の芸 吉屋信子
ものの芽の渦巻き上がりゴッホの絵 長谷川かな女
不機嫌に砂巻き上げて初嵐 中村苑子
巻き上げて虚ろに太し秋簾 ハードエッジ
番号の若きは荒《あ》るる春の風 ハードエッジ
番号:
夕立に番号振つてみたきかな ハードエッジ
番号や団地の壁の夕焼けて ハードエッジ
電話みな番号を持ち星祭 山口優夢
春風の今日の激しさポリバケツ ハードエッジ
バケツ:
スコップもバケツも小さし磯遊び 大坪洵子
一の一と書かれしバケツ朝桜 金子敦
バケツにておもちやを洗ふチューリップ ハードエッジ
バケツ一杯の白球晩夏光 津川絵理子
水打つや恋なきバケツ鳴らしては 大串章
蟻一つ浮んでゐたるバケツかな ハードエッジ
夏草やバケツ振り振り子供来る 星野立子
朝顔にバケツの水をやりにけり ハードエッジ
凩にころぶ夕べのバケツかな 京極杞陽
火事跡のバケツの縁につもる雪 皆吉司
五六本氷柱刺したるバケツかな ハードエッジ
特務兵バケツを提げて戦死せり 日野草城
春風に冷たくされてゐたりけり ハードエッジ
春風を吐いて練習ゴジラの子 ハードエッジ
七人の侍さらば春の風 ハードエッジ
黒澤明『七人の侍』/予告編
◎推敲過程/テキスト/pdf
全然堂歳時記 春 【春の風】 テキスト推敲
◎推敲過程/A4+手書き/pdf
◎推敲過程/葉書+手書き/pdf
全然堂歳時記 春 【春の風】 葉書推敲
以上です