ペアリング5 ふるさとの月の港をよぎるのみ 高濱虚子

追加:野に遊ぶ/2020.12.15、ホテルの人&宿の犬/2019.12.7、梅林・花冷・夜桜・葉桜/2018.8.27、出初式/2018.7.30、花見/2018.7.12
独立:水たまり/2018.9.3
◎ペアリング5

好対照の俳句を集めました
対比の妙をお楽しみください

◎ああ無情

初蝶を苛む風となりにけり  西宮舞
  ※初蝶=はつちょう、苛む=さいなむ

色鳥を吹き消す風となりにけり  ハードエッジ

吹き消したやうに日暮るる花野かな  小林一茶

 

 

◎かたち

毒薬は壜のかたちに夏を待つ  五島高資(たかとし)

或る闇は蟲の形をして哭けり  河原枇杷男(びわお)
  ※蟲=むし、哭けり=なけり

大いなる鹿のかたちの時間かな  正木ゆう子

 

 

◎可聴範囲

すでにして声とどかざる野に遊ぶ 中村汀女    ていじょ

蝉のこゑ届かぬところまで泳ぐ  ハードエッジ

湖心にてとほき蜩聴きすます  西村和子
  ※蜩=ひぐらし

 

 

◎有用長物

捧げ来しは実梅を叩き落とす棒  辻桃子
  ※捧げ=ささげ、実梅=みうめ、叩き=たたき

よろよろと棹がのぼりて柿挟む  高濱虚子
  ※棹=さお、挟む=はさむ

 

 

◎接合部分

向日葵の裏むつちりと茎曲がる  相子智恵
  ※向日葵=ひまわり

むつちりと首のうしろや盆の僧  清水良郎

 

 

◎宿屋の人、子、犬

螢狩ほたるがりホテルの人も来てゐたり 小野あらた

宿の子をかりのひいきや草相撲  久保より江
  ※草相撲=くさずもう

草相撲見るや来てゐる宿の犬 五十嵐播水いがらし ばんすい

宿の子をかりて花火を見にゆくも  田中裕明

 

 

◎通過中

ふるさとの月の港をよぎるのみ  高濱虚子

生国を電車で通る月光裡  池田澄子
  ※生国=しょうごく、月光裡=げっこうり

よらでゆく島に手を振る日短か  吉屋信子

 

 

◎イエロー&ホワイト

黄菊白菊、その他白と黄は例句多く、いつか別立てで書くつもり/2018.7.18
黄白の菊や相和し相背く  相生垣瓜人(あいおいがき・かじん)
  ※背く=そむく

白と黄の和して同ぜず水仙花  ハードエッジ

 

 

◎くもり袋

貝割菜のきれいに曇る袋選る  中村和弘
  ※選る=よる/える

ごみぶくろ枯葉の息にくもりけり  清水良郎

葱長きビニール袋くもりけり  長谷川櫂
  ※葱=ねぎ

 

 

◎まとめの3句

宿の子をかりのひいきや草相撲  久保より江

ある闇は蟲の形をして哭けり  河原枇杷男

白と黄の和して同ぜず水仙花  ハードエッジ

 

以上です