君知るや春あけぼのの豆腐店
生産地シールはピンク春キャベツ
食はるるを鶯餅はまだ知らず
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
君知るや春あけぼのの豆腐店
生産地シールはピンク春キャベツ
食はるるを鶯餅はまだ知らず
暁闇の遅々たる刻を囀れり
囀りて羽搏きて尚もどかしや
囀や墨痕はまだぬらぬらと
春昼の積木崩しの悲鳴らし
裸子の水に飛び込む水しぶき
月雪をさまよふ花の絵双六
禁色の紫を花菖蒲かな
紫と白の絢爛花菖蒲
三方へ絞りを垂れて花菖蒲
客布団黴を寄せじと絢爛に
白狐もとより踊上手なり
女の神も乗せて目出度し宝船
リボンのやうな立体交差クリスマス
ブランコに雪ふり初めしクリスマス
夢の世のコンビナートの聖夜かな
けふは城あすは図書館松手入
松手入松の緑を滴らす
池に雨松の手入も済みたるよ
古暦切つて綺麗なメモ用紙
数へるにしても短日ばかりなり
除夜の鐘湯に沈みつつ浮びつつ
水底に暑さ忘るる豆腐かな
人魂も涼みに来れ蚊遣香
火も人も裸なりけり夜の海
神々の隆々たるや雲の峰
身を投げて溺るる如し籐寝椅子
夕焼に促されつつさやうなら
炎帝や入道雲を従へて
日本の海をぐるりと雲の峰
赤々と夕焼の中の夕日かな
お揃ひのすでに楽しき夏の旅
もう少し赤を強くと夕焼守
夕焼のなんと静かに消ゆること
夕焼や餓ゑて綺麗な肋骨
夕立に洗ひたてたる夕焼かな
ああああとサイレンの鳴る夕焼かな
耳にして暑さも峠てふ言葉
生き延びし女子供や終戦日
安らかや日は夕焼に包まれて
明日はもう市民プールの最終日
白粉花の種を零しつ咲き続く
改、豊年のお稲荷さんに稲荷ずし
白粉花や色を違へて咲き乱れ
白粉花や表通りにネオン点く
鳴き通す虫の夜長となりにけり
赤道の箍の外れし暑さかな
日本の海をぐるりと雲の峰
水底に暑さ忘るる豆腐かな