暑き故ものをきちんと並べをる 細見綾子
一斉に見えぬもの指す踊かな 夏井いつき
曼珠沙華食ひちぎられしごとくなり 長谷川櫂
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
暑き故ものをきちんと並べをる 細見綾子
一斉に見えぬもの指す踊かな 夏井いつき
曼珠沙華食ひちぎられしごとくなり 長谷川櫂
わが鬱の淵の深さに菫咲く 馬場駿吉
紫陽花は気圧の谷に咲くといふ ハードエッジ
三味線や寝衣にくるむ五月雨 宝井其角
荒星や毛布にくるむサキソフォン 攝津幸彦
欄干は風の通ひ路掛大根
家々に掛大根の月夜かな
紅梅の蕾ほつほつ掛大根
金貸がティッシュを配る日永かな ハードエッジ
金融の笑顔絶やさず水を打つ 北大路翼
あきらめしもの何何ぞ誘蛾燈 小澤實
熱燗の夫にも捨てし夢あらむ 西村和子
客布団黴を寄せじと絢爛に
白狐もとより踊上手なり
女の神も乗せて目出度し宝船
リボンのやうな立体交差クリスマス
ブランコに雪ふり初めしクリスマス
夢の世のコンビナートの聖夜かな
風生と死の話して涼しさよ 高濱虚子
虚子もなし風生もなし涼しさよ 小澤實
朝顔やおもひを遂げしごとしぼむ 日野草城
寒夕焼終れりすべて終りしごと 細見綾子
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
秋風も秋風らしく秋なかば
アベベなく円谷もなし秋の風
秋風に心尽しの秋刀魚焼く
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
秋雨に草芽吹きたる更地かな
秋雨や線路は頭のみ光り
秋雨や小学生の五六人
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
上流は神々の山天の川
天の川古き時計の捨て所
モナリザの瞳の中の天の川
音もなく時は流れて流れ星
流星や破つて減らすカレンダー
夜なべする人の居眠り流れ星
けふは城あすは図書館松手入
松手入松の緑を滴らす
池に雨松の手入も済みたるよ
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
柿くへば鐘の正岡子規忌なり
柿食うて柿好き子規の忌を修す
死神を何の糸瓜と子規忌かな
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
火柱は秋刀魚の神の降臨か
秋風に心尽しの秋刀魚焼く
黒に焦げ琥珀に焼けて秋刀魚かな
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
草の花やがて草の実草の種
細道の人に踏まるな草の花
星ひとつ空を零るる草の花
古暦切つて綺麗なメモ用紙
数へるにしても短日ばかりなり
除夜の鐘湯に沈みつつ浮びつつ
※葉書俳句追加予定/2024.9.1
三色に白粉花の赤白黄
おしろいの花も蕾も種も見ゆ
白粉花の蕾はみどり種は黒
続き咲く花に初花紛れゆく 中本真人
この鍵で錠ひとつあく星の秋 池田澄子
葱さげて家路の人となりにけり ハードエッジ
貝割菜のきれいに曇る袋選る 中村和弘
ごみぶくろ枯葉の息にくもりけり 清水良郎
葱長きビニール袋くもりけり 長谷川櫂
水底に暑さ忘るる豆腐かな
人魂も涼みに来れ蚊遣香
火も人も裸なりけり夜の海
神々の隆々たるや雲の峰
身を投げて溺るる如し籐寝椅子
夕焼に促されつつさやうなら
コピーして赤はグレーに昭和の日 山田露結
畳まれてひたと吸ひつく屏風かな 長谷川櫂
湯豆腐や死後に褒められようと思ふ 藤田湘子
炎帝や入道雲を従へて
日本の海をぐるりと雲の峰
赤々と夕焼の中の夕日かな
厄介や紅梅の咲き満ちたるは 永田耕衣
花満ちて玉の如くにふるへをり 岸本尚毅
膝に来て模様に満ちて春着の子 中村草田男
雲水の蛇口むさぼる炎暑かな 生田力丈
蝉の腹八分目ほど蝕まれ ハードエッジ
熱湯をむさぼりこぼす湯婆かな 西島麦南
白滝に召さるるごとく近づきぬ 西宮舞
手に取つて素足を愛づる赤子かな ハードエッジ
もてあそぶ火のうつくしき時雨かな 日野草城
戀の字の糸のもつるる試筆かな 鷹羽狩行
獅子舞や蝶もつれあふごとくにも 長谷川櫂
分割/2018.2.8、捩る/2017.12.21、2017.8.26 更新 ◎和語俳句、や行の「や」です →「ゆ」 →「よ」 ◎養ふ=やしなう 鬼の豆嚼みて気力を養へり 相生垣瓜人(あいおいがき・かじん)
お揃ひのすでに楽しき夏の旅
もう少し赤を強くと夕焼守
夕焼のなんと静かに消ゆること
庖丁も厨もゆだね桜鯛 中村汀女
揺らぎ見ゆ百の椿が三百に 高濱虚子
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森澄雄