ペアリング2 熱燗の夫にも捨てし夢あらむ 西村和子

追加:春の鼻の穴3句/2019.7.13、滝/2019.4.16、賀状/2019.1.9、ラブホ/2018.7.14、底抜2句・事故・散乱/2018.6.19、汽車/2018.5.1、お砂場/2018.2.2、2句/2017.11.21

◎ペアリング2

好対照の俳句を並べてみました

◎社会貢献

金貸がティッシュを配る日永かな  ハードエッジ
  ※金貸=かねかし、日永=ひなが

ラブホテル正午の水を打ちにけり  加藤静夫

金融の笑顔絶やさず水を打つ  北大路翼
  ※金融=きんゆう

 

 

◎限界突破

突支棒はづれて梅雨に入りにけり  加藤静夫
  ※突支棒=つっかいぼう、梅雨=つゆ

蓋あけし如く極暑の来りけり  星野立子
  ※蓋=ふた、如く=ごとく、極暑=ごくしょ

秋近き底ぬけぶりとなりにけり 久保田万太郎

淋しさの底ぬけて降るみぞれかな 内藤丈草ないとう じょうそう

 

 

◎朱肉物語

これも黴底なし梅雨の朱肉壺  石塚友二(ともじ)
  ※黴=かび、壺=つぼ

峯雲や朱肉くろずむ村役場  土生重次(はぶ・じゅうじ)
  ※峯雲=みねぐも

 

 

◎氷の変身

氷挽く屑ましろなり夕桜  小川軽舟(けいしゅう)
  ※挽く=ひく、屑=くず

夏氷掻くや白雪にはかなる  日野草城(そうじょう)
  ※掻く=かく

 

 

◎鼻の穴

あたたかや二つ並んで鼻の穴  ハードエッジ

仄暗ほのぐらきものに寝釈迦ねしゃかの鼻の穴  斉田仁

涅槃像ねはんぞうの金の詰りし鼻の穴  ハードエッジ

鼻の穴すずしく睡る女かな  日野草城
  ※睡る=ねむる

なきがらや秋風かよふ鼻の穴  飯田蛇笏(だこつ)

 

 

◎断念

あきらめしもの何何ぞ誘蛾燈  小澤實
  ※誘蛾燈=ゆうがとう

小瑠璃飛ぶ選ばなかつた人生に  野口る理
  ※小瑠璃=こるり

熱燗の夫にも捨てし夢あらむ  西村和子
  ※熱燗=あつかん、夫=つま(業界慣用読み)

 

 

◎幽体離脱

滝をのぞく背をはなれゐる命かな  原石鼎  せきてい

飛込の途中たましひ遅れけり  中原道夫

凍蝶の己が魂追うて飛ぶ  高濱虚子(きょし)
  ※凍蝶=いてちょう、己=おの、魂=たましい

 

 

◎どの花

籠に盛りてどの花となく涼しさよ  高濱年尾
  ※籠=こ

やすらかやどの花となく草の花  森澄雄
  前句に比べて、
  原因とか状況とかが書かれていない

  「どの花、、、も」かと思うと、
  「どの花となく」と、はぐらかされる

  そういったボンヤリした表現自体も、
  「やすらか」らしいかも?/2018.6.19

 

 

◎警告

毎日の朝寝とがむる人もなし  松本たかし

白日傘幼き兄を諭しゐる  大串章
  ※諭し=さとし

泳ぎ子を警め通る草刈女  清崎敏郎
  ※警め=いましめ

悴める掌を包みやり諭しけり  西村和子
  悴める=かじかめる、掌=て※

大根にしみ入るやうに諭しけり  佐藤郁良さとう かおる

賀状がじょうみな命惜めと諭しをり  岡本眸あかもと ひとみ

 

◎まとめの3句です

やすらかやどの花となく草の花  森澄雄

なきがらや秋風かよふ鼻の穴  飯田蛇笏

熱燗の夫にも捨てし夢あらむ  西村和子

 

以上、お読み頂き、ありがとうございました