角川俳句賞 2022 落選作
プランA「花氷」50句
落選作
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
春
東風吹かば鶏冠高く風見鶏 ハードエッジ
鶏冠:
春深しひよこに鶏冠兆しつつ 三村純也
戦争は鶏冠を秋風に裂く 片山桃史
霜晴の鶏冠のきつと塩辛き ふけとしこ
雛様に珈琲苦し我が飲む ハードエッジ
雛様:
お雛さま永久はさびしと微笑みぬ 中塚健太
お雛さまに見せてくるりとランドセル ハードエッジ
畑打の仕上は雷に託しけり ハードエッジ
託し:
蒲公英の絮に全てを託しけり ハードエッジ
湯上りの子を初夢に託しけり ハードエッジ
大いなる自重の末の大雪崩 ハードエッジ
自重:
太りつつ暫し自重の桜の芽 ハードエッジ
うすらひのうすらわらひの水たまり ハードエッジ
薄笑:
虚子の忌の写真の虚子の薄笑ひ 大野朱香
茅の輪くぐるはじめの一人薄笑ひ 鈴木鷹夫
凍箒よく見れば薄笑ひゐし 河原枇杷男
美しき夜道を帰る彼岸かな ハードエッジ
夜道:
夜道たのし子を持ち金魚玉を買ひ 中山純子
くちなはも涼しき夜道好むらし 相生垣瓜人
けふの月馬も夜道を好みけり 村上鬼城
みるならばぼうつとみたき桜かな ハードエッジ
見るなら:
老猫は子猫の夢を見るならむ ハードエッジ
鬼の子も父母の夢見るならむ ハードエッジ
四十・五十・六十余年昭和の日 ハードエッジ
連番:
春一番二番三番涅槃西風 清水基吉
一羽二羽三羽をかぎり通し鴨 加舎白雄
落鮎のあはれや一二三の簗 加舎白雄
一之町二之町三之町しぐれ 石原八束
一句二句三句四句五句枯野の句 久保田万太郎
黒一点二点三点寒鴉 ハードエッジ
年立つや一二三四五六七 加藤郁乎
ひよろひよろと白ひげ伸びて躑躅枯る ハードエッジ
ひよろひよろ:
ひよろひよろとまことに高き土筆かな 山口青邨
崩れ簗ならめひよろひよろひよろと 阿波野青畝
夏
一粒で二度美味しいぞ花は葉に ハードエッジ
一粒:
欠伸して涙ひと粒桃の花 利普苑るな
一粒ものこさず去りし夕立かな 西宮舞
羽閉ぢて天道虫のひと粒に 齋藤朝比古
さくらんぼ一粒づつが灯を映す 高濱年尾
茎のなき一粒残るさくらんぼ 市川蘆舟
ひとつぶのひかりは月や星の中 辻桃子
金剛の露ひとつぶや石の上 川端茅舎
一粒の青き地球の露けしや ハードエッジ
新米の其一粒の光かな 高濱虚子
石榴の実の一粒だにも惜しみ食ふ 山口誓子
石榴一粒ほどの増血剤を嚥む 正木ゆう子
葡萄うるはしまだ一粒も損はず 高濱虚子
一粒を食べて欠きたる葡萄の房 橋本多佳子
草いろの虫ひと粒に氷りたる 今井杏太郎
花蜜柑その他橙・金柑も ハードエッジ
その他:
炭乏しそのほか乏し寒明くる 及川貞
象頭山その他春山皆似たり 松本たかし
太郎次郎三郎そのほかもみんな蝌蚪 上田五千石
いそぎんちやくその他生きとし生けるもの 京極杞陽
蠅帳に古漬その他母の昼 草間時彦
見る限り早乙女其他牛も行く 高濱虚子
捕虫網その他何でもある教会 波多野爽波
茄子牛蒡その他一畝づつ背戸に 西本一都
ひとつ買ひその他の虫は聞き捨てに ハードエッジ
しぐれ来と松の中なる松その他 岸田稚魚
埋火に夕刊その他つねのごと 篠田悌二郎
ラグビーの飛車角その他みな駆ける ハードエッジ
初鴉その他雀も飛行機も ハードエッジ
幼子も匙を器用に豆ごはん ハードエッジ
器用/不器用:
板前の水を打つにも器用な手 波多野爽波
バナナむく器用不器用なかりけり 稲畑汀子
不器用に出來て案山子のあはれ也 正岡子規
不器用な笑ひのやうなたうがらし 髙田祥聖
三味線も器用に弾きて芙蓉かな 久保田万太郎
赤に黄に傘や合羽や梅雨楽し ハードエッジ
赤&黄:
春色は春をなす色赤に黄に ハードエッジ
雛壇は赤くプリンは黄色なり ハードエッジ
赤にあらず黄色にあらず桜貝 ハードエッジ
ぽかり真っ黄ぽかりと真っ赤チューリップ 松本たかし
赤に黄に高さを競ふ掻き氷 ハードエッジ
草むらむら薔薇黄なるあり赤きあり 正岡子規
花カンナ赤と黄とあり嗅ぎ比べ 中矢温
赤菊の蕾黄菊の蕾哉 正岡子規
毒茸や赤きは真赤黄は真黄 正岡子規
黄長靴赤長靴や鰤を糶る ハードエッジ
赤や黄の面影のある落葉かな ハードエッジ
荒梅雨の袋ぶらぶらランドセル ハードエッジ
ぶらぶら:
ぶらぶらとして居れば日の永さ哉 正岡子規
子雲雀のぶらぶら歩き虫咥へ 正木ゆう子
スリッパの足をぶらぶら此処涼し 岸本尚毅
軍手ぶらぶら短日の荒物屋 内田美紗
七五三座るや足をぶらぶらと 大塚次郎
枇杷の種ほどの俳句も良からずや ハードエッジ
枇杷の種:
枇杷の種投げたる音の草にあり 阿部みどり女
枇杷の種コップの中にコトンと落す 細見綾子
新婚のしじまこつんと枇杷の種 鷹羽狩行
捨つるには惜しき艶なり枇杷の種 片山由美子
てのひらに出して大きな枇杷の種 山本一歩
枇杷の種ぬめらぬめらと尖りけり 山口優夢
枇杷の種ほどの存在感ほしき 佐藤郁良
遺言とは枇杷の種吐くやうなもの ふけとしこ
枇杷の種ほどの大きさ枇杷の種 ハードエッジ
大きくて長くて黒し枇杷の種 ハードエッジ
枇杷の種ことりと枇杷の皿の上 ハードエッジ
枇杷の種ものの哀れは知らざりき ハードエッジ
青空に憧れて黴青むなり ハードエッジ
憧れ:
全円に憧れてゐる半仙戯 ハードエッジ
花びらに憧れてゐる桜貝 ハードエッジ
梅真白労咳の子に憧れて 齋藤愼爾
夏山も憧れ難くなりにけり 相生垣瓜人
紫陽花の遠き憧れ虹の橋 ハードエッジ
蚊帳吊草繃帯の子に憧れて 正木ゆう子
水銀に憧れてゐる天の川 ハードエッジ
干柿に憧れてゐる熟柿かな ハードエッジ
大釜に憧れてゐる今年米 ハードエッジ
西行に憧れてゐる焚火かな 岸本尚毅
憧れし波郷の眼鏡懐手 鎌田保子
もぎ尽くすまでは我家の茄子畑 ハードエッジ
もぎ:
もぎもぎて梅なき枝や夕嵐 会津八一
駈け出して雨中の茄子をもぎてくる 和田耕三郎
もぎたての茄子の紺や籠に満てり 星野立子
渋柿を喰ふともなくもぎにけり 会津八一
果物はもぎて木の実は落とすなり 野原武
柚子の香を近づいて柚子もぎにけり ハードエッジ
もぎ取りしつららの中の不純物 櫂未知子
湯あがりの掌にもぎくれし庭蜜柑 山口満希子
庭干しの鯵の開きを今朝の幸 ハードエッジ
鯵の開き:
春風に身を開きたる鯵を干す ハードエッジ
叩きても開きても良し鯵の旬 ハードエッジ
花は葉に鯵の開きに蠅たかる ハードエッジ
ま二つに鯵のひらきや秋の風 ハードエッジ
道端の草もずぶ濡れ撒水車 ハードエッジ
撒水車:
春塵を虹でおさへて撒水車 土生重次
ついてゆく揚羽蝶あり撒水車 高野素十
世直しの如く撒水車が行くよ 加藤静夫
撒水車道広ければ又通る 稲畑汀子
撒水車おのが濡らせし道かへる 富田木荘
撒水車の後ゆくよきことある如し 立木青葉郎
おつとりと牛の歩みの撒水車 ハードエッジ
濃き影を引きずるやうに撒水車 ハードエッジ
一寸手を振つてやりたや撒水車 ハードエッジ
働いて楽しさうなる撒水車 ハードエッジ
道半ば重荷も半ば撒水車 ハードエッジ
追ひ抜けば人喜びぬ撒水車 ハードエッジ
後ろから押してやりたや撒水車 ハードエッジ
東京で見かけし電車夏の山 ハードエッジ
見かけ:
美しき人を見かけぬ春浅き 日野草城
面接で見かけし顔も新社員 ハードエッジ
公園に見かけし春の日傘かな 鈴木花蓑
見るたびに見かけぬが居り涅槃図絵 大住日呂姿
二三日見かけぬ秋の蝶々かな ハードエッジ
大仏を見かけて遠き冬野かな 高井几董
見かけよりぬくきものなり頬被 右城暮石
霜囲ひしたる二三も見かけたる 清崎敏郎
あをからん鴉の夢を見かけけり 攝津幸彦
夏雲の白く眩しく美しく ハードエッジ
空母とも呼ぶべき雲が夏の空 ハードエッジ
空母:
空母対空母入道雲真白 ハードエッジ
海底に空母が四つ夏の月 ハードエッジ
空母「みどり」秋天に泌みいる血友病 攝津幸彦
高原を空母とおもふ良夜かな 仲寒蟬
白鳥や空母浮んでなにもせず 和田悟朗
初凪や航空母艦平かに 五十嵐播水
カツ揚る沸騰空母沈むさまに 大原テルカズ
まぼろしの空母に種を蒔きゐたり 攝津幸彦
風死してピクリともせぬ暑さかな ハードエッジ
ピクリ:
鯖ピクリ板濡色に木目も生く 香西照雄
炎天の足下に焦げて影小さし ハードエッジ
足下:
春日傘たたむ足下の潮迅し 岸本尚毅
大悪人虚子の足下の落椿 ハードエッジ
籐椅子の風は足下の樹海より 井沢正江
足下にて外燈点けり冬の崖 岡本眸
煤箒仁王足下の銭集む 河村むつ子
地の涯に天を支ふる花氷 ハードエッジ
地の涯:
青白き地の涯見せていなびかり 檜紀代
地の果:
春眠や両の手足は地の果に 橋閒石
地の果のごとき空港茅花照る 横山白虹
地の果に地の塩ありて螢草 山本健吉
地の果は海のはじまり鳥渡る 猪俣千代子
爪先は地の果てに似て湯ざめかな 佐藤郁良
雷の字は雨と田んぼや微笑まし ハードエッジ
微笑まし:
雛を買ふ人見てあればほほゑまし 森川暁水
都踊はヨーイヤサほほゑまし 京極杞陽
夏の月ひとの裸はほほゑまし 上田信治
たんぽぽもほほゑましくも返り花 成瀬正俊
雷鳴の渡り廊下を給食が ハードエッジ
渡り廊下:
料峭の渡り廊下の踏めば鳴る 西村和子
病棟の渡り廊下や夜の蟹 広渡敬雄
外湯まで渡り廊下や火蛾の宿 吉田ひろし
学校の渡り廊下の干菜かな 上原富子
七草の雪降る渡り廊下かな 長谷川櫂
虹が出て橋の下より拾はるる ハードエッジ
橋の下:
満汐や橋の下まで春の海 正岡子規
春水や四条五条の橋の下 与謝蕪村
鉄橋の下の暗さや鳥交る 寺澤一雄
母のなき子猫なりけり橋の下 ハードエッジ
夕立の足音聞くや橋の下 正岡子規
夕立や橋の下なる笑ひ声 正岡子規
橋の下行くもあるべし飛ぶ螢 立花北枝
鉄橋の下には違ふ秋の風 仲寒蟬
桟橋の下の氷も揺れはじむ 松野苑子
滿汐や千鳥鳴くなる橋の下 正岡子規
虹の根を煎じて飲めと言はれけり ハードエッジ
虹の根:
虹の根のありしところか菫濃し 齋藤愼爾
畦を違へて虹の根に行けざりし 鷹羽狩行
虹の根に紫陽花はまだ蕾なり ハードエッジ
虹の根に夢と希望と涙壺 ハードエッジ
虹の根を鯛らつついてゐるならむ 今瀬剛一
虹の根をこれから掘りにゆくところ 金子敦
虹の根を探しにゆきし子供かな 仙田洋子
虹の根に白壁光る青田哉 正岡子規
扇風機除湿機空気清浄機 ハードエッジ
清浄:
寺清浄僧等清浄夏めきぬ 高野素十
百本の筆の清浄夏山家 高野素十
どうどうと滝の重みの夕立かな ハードエッジ
どうどう:
どうどうと夏の朝雨有難や 星野立子
重き雨どうどう降れり夏柳 星野立子
盆の島月にどうどう太鼓打つ 橋本美代子
夕立にとても大きな駐車場 ハードエッジ
駐車:
雲雀すつ飛ぶ白根山頂駐車場 山田みづえ
不法駐車あたりはいつも恋の猫 鈴木六林男
油照黄泉比良坂駐車場 青島玄武
滝音の届かぬ滝見駐車場 右城暮石
夏草の中の白線駐車場 ハードエッジ
駐車場くづれの空地いわし雲 押野裕
屋上に駐車場あり今日の月 ハードエッジ
校庭を駐車場とし村祭 中本真人
狗尾草も四季のうつろひ駐車場 ハードエッジ
底冷を積んで立体駐車場 佐藤郁良
駐車場の隅にマフラー落ちてをり 山口優夢
地下駐車場にもクリスマスキャロル 山田弘子
鯵フライ文明開化の味がする ハードエッジ
鯵フライ:
アジフライにじゃぶとソースや麦の秋 辻桃子
麦秋のソースじやぶりとアジフライ 辻桃子
肉を焼く煙に噎せて夏の月 ハードエッジ
肉を焼く:
肉を焼く煙あがりぬ秋の山 長谷川櫂
軽トラに夜店一式積み込んで ハードエッジ
軽トラ:
軽トラに珈琲の香や春の雪 ハードエッジ
大方は白の軽トラ植木市 ハードエッジ
軽トラックから踊り子の飛び降りし 柴田恵子
秋祭軽トラックに太鼓載す 押野裕
畦をゆく白き軽トラ雁渡る ハードエッジ
柿たわわ軽トラックが道の幅 佐藤郁良
軽トラや馬の如くに大根積む ハードエッジ
ティアラして夜店を帰る女の子 ハードエッジ
冬バージョン:
ティアラして雪のディズニーランドかな ハードエッジ
帰り道暗し夜店を振り返る ハードエッジ
帰り道:
母と子の帰り道らし草摘んで ハードエッジ
草を摘み草の匂ひの帰り道 北川あい沙
まつかさ拾ひ春の祭の帰り道 阿部みどり女
巣構への見え帰り道明るしや 下田稔
風呂が先か秋刀魚が先か帰り道 ハードエッジ
探梅の地卵を買ふ帰り道 ハードエッジ
帰り道木の葉はとうに眠りおり 二村典子
火蛾と言ふ美しき名の太り肉 ハードエッジ
太り肉:
太り肉の女将涼しく出できたる 桂信子
羅の紺にほやかや太り肉 野村喜舟
柿照るや母系に享けて肥り肉 岡本眸
通ひ路の雨を厭はず火取虫 ハードエッジ
通ひ路:
細道は狐狸の通ひ路あたたかし 渡邊千枝子
土竜はや通ひ路つくる雪間かな 阿波野青畝
東西は月の通ひ路春の夢 ハードエッジ
淡雪や通ひ路細き猫の恋 寺田寅彦
椿落ち海女の通ひ路らしくなる 後藤比奈夫
夏草に通ひ路つけし釣師かな 野村喜舟
向日葵銹びて彳つ潮風の通ひ路に 上田五千石
欄干は風の通ひ路掛大根 ハードエッジ
通ひ路の一礼し行く神も留守 松本たかし
ががんぼのやうな人生かも知れぬ ハードエッジ
人生:
人生は長からねども潮干狩 岸本尚毅
絵茣蓙古り人生もほぼ古りにけり 後藤夜半
人生の途中に梅を干しておく 菊地京子
小瑠璃飛ぶ選ばなかつた人生に 野口る理
浮巣見しのみの人生かも知れず 今瀬剛一
人生や秋うたた寝もその一つ 鈴木鷹夫
人生は秋晴もあり野菊も咲き 京極杞陽
菊日和人生百か二十五か 攝津幸彦
人生を発明し得ず猪を食ぶ 永田耕衣
やや永く人生はあり冬花火 矢島渚男
人生の午後は日脚も伸びにけり 谷川水車
人生よりも言葉永けれ玉霰 池田澄子
みかん黄にふと人生はあたゝかし 高田風人子
人生のいまが盛りか日記買ふ 山田弘子
人生の午後の思ひを初日記 森田公司
人生の第何章の初暦 塙告冬
人生/自作:
永き日の人生楽しからざるや ハードエッジ
人生の朝寝の日数増やしけり ハードエッジ
人生は楽しきがよしソーダ水 ハードエッジ
人生に階段いくつ七五三 ハードエッジ
子燕の喉に押し込む蜻蛉かな ハードエッジ
押し込:
塵取に押し込む桐の廣葉かな 正岡子規
冬の朝日看護婦は帽に髪押し込む 田川飛旅子
斜交ひに聖樹押し込むエレベーター 柘植史子
恋ゆゑに海月となりし天道虫 ハードエッジ
恋ゆゑ:
恋故にしうねき猫となりにけり 京極杞陽
みちのくに恋ゆゑ細る滝もがな 筑紫磐井
やや小さき蟇の来てゐる今年かな ハードエッジ
来てゐる:
郊外に春の来てゐるアドバルーン 若杉朋哉
卒業の兄と来てゐる堤かな 芝不器男
卒業の子らが来てゐる保健室 ハードエッジ
別荘に来てゐる人もをどりけり 茨木和生
すぐそこに来てゐる春や春を待つ 上村占魚
初恋の人が来てゐる初詣 西村麒麟
蠅を取る道具色々郷土館 ハードエッジ
道具:
尺八もけんくわ道具の彌生かな 久保田万太郎
くちびるは嫁入り道具春逝けり 櫂未知子
買ひありく世帯道具や花曇 久保田万太郎
雛道具時の流れの忘れもの ハードエッジ
新緑に鑿の重みの道具箱 長谷川櫂
弁慶の道具しらべる夜長哉 正岡子規
小道具のパンはほんもの聖夜劇 仮屋賢一
松葉牡丹ざらりと種を零しつつ ハードエッジ
ざらり:
遠雪崩卵ざらりと掴みけり 相子智恵
秋
湖の闇の深さよ遠花火 ハードエッジ
闇の深:
金亀子擲つ闇の深さかな 高濱虚子
流燈の果てなる闇の深さかな 今泉貞鳳
狐火の消えたる闇の深さかな 岡田夏生
冬
木枯を切り分けてゐる風見鶏 ハードエッジ
風見:
どちらから吹くも春風風見鶏 後藤比奈夫
木枯に身を細うして風見鶏 ハードエッジ
高き枝に咲いて風見の寒椿 ハードエッジ
ことことと弱火のちから冬籠 ハードエッジ
ことこと:
敬老日とは煮小豆をことことと 及川貞
ことことと小豆煮つむる細雪 加藤耕子
小夜更けて煮豆こ《にまめ》とこと賀状書く ハードエッジ
新年
怪獣のよく出ることよお正月 ハードエッジ
怪獣:
怪獣の背中が割れて汗の人 加藤静夫
怪獣のなかから夏風邪の男 大石雄鬼
冬
山の湯に朝な朝なの寒卵 ハードエッジ
朝な朝な:
雪間まだ朝な朝なを氷りゐし 佐藤宣子
朝な朝な心にかゝる接木哉 正岡子規
行秋の朝な朝なの日田の霧 高野素十
朝な朝な朝がほながき契り哉 正岡子規
◎初案50句
美しき彼岸の夜道たどりけり ハードエッジ
春風に身を細うして風見鶏 ハードエッジ
うすらひのうすらわらひの水たまり ハードエッジ
悲しさは自重の末の大雪崩 ハードエッジ
畑打の仕上げを雷に託しけり ハードエッジ
雛様に珈琲苦し我が飲む ハードエッジ
四十五十六十余年昭和の日 ハードエッジ
みるならばぼうつとみたき桜かな ハードエッジ
ひよろひよろと白髭伸びて躑躅枯る ハードエッジ
湯の町に遺恨のあるや雷激し ハードエッジ
雷は雨と田んぼや微笑まし ハードエッジ
夏雲の眩しさの桁違ひかな ハードエッジ
空母とも言ふべき雲や夏の空 ハードエッジ
肉を焼く青き煙や夏の海 ハードエッジ
虹が出て橋の下より拾はるる ハードエッジ
虹の根を煎じて不老不死薬 ハードエッジ
夕立にとても大きな駐車場 ハードエッジ
さす傘が水の重みの夕立かな ハードエッジ
黄の合羽ピンクの合羽梅雨楽し ハードエッジ
梅雨寒や袋吊りたるランドセル ハードエッジ
炎天の足下の影の濃く小さし ハードエッジ
風死してピクリともせぬ暑さかな ハードエッジ
都会からの中古電車や山開き ハードエッジ
雑草も濡らして行きぬ撒水車 ハードエッジ
扇風機除湿機空気清浄機 ハードエッジ
帰り道暗し夜店を振り返る ハードエッジ
夜店から帰るティアラのお姫様 ハードエッジ
一式の夜店を乗せて来りけり ハードエッジ
幼子も匙を器用に豆ごはん ハードエッジ
地の涯に天を支へる花氷 ハードエッジ
庭に干す鯵の開きを飽きもせず ハードエッジ
鯵フライ食へば文明開化せり ハードエッジ
火蛾といふ名に恥じらひて太り肉 ハードエッジ
ががんぼのやうな人生かも知れず ハードエッジ
子燕の喉に押し込む蜻蛉かな ハードエッジ
天道虫水母に化すと教へられ ハードエッジ
蠅を取る道具工夫や郷土館 ハードエッジ
小ぶりなる蟇の来てゐる今年かな ハードエッジ
通ひ路の雨を厭はず火取虫 ハードエッジ
一粒で二度美味しいぞ花は葉に ハードエッジ
橙も金柑も咲き花蜜柑 ハードエッジ
青空の青とも違ふ黴の青 ハードエッジ
枇杷の種ほどの俳句を志す ハードエッジ
平凡に朝は茄子と胡瓜もぎ ハードエッジ
松葉牡丹咲き継ぐ種を零しつつ ハードエッジ
湖の深き暗がり遠花火 ハードエッジ
木枯を切り分けてゐる風見鶏 ハードエッジ
弱火にて今日もことこと冬籠 ハードエッジ
山の湯に近所で取れし寒卵 ハードエッジ
怪獣の特に出易きお正月 ハードエッジ
◎推敲過程 テキスト
角川俳句賞 2022 プランA 推敲 テキスト全224句
◎推敲過程 プリントに手書き
角川俳句賞 2022 プランA 推敲 手書き_compressed全31枚
◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
※付録:落選葉書一覧リンク
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