俳壇賞2021 落選作「この子どこの子」
落選作
◎葉書俳句
◎テキスト
春
春雪の白の攻め入る水たまり ハードエッジ
春+雪+白:
春立つや雪嶺はまだ夢の白 大串章
立春の雪白無垢の藁家かな 川端茅舎
花よりも白く大きく春の雪 ハードエッジ
ほろほろと白の壊るる春の雪 ハードエッジ
紅白の菓子美しや春の雪 小津安二郎
黒と白みだれ降るなり春の雪 阿波野青畝
雪よりも真白き春の猫二匹 高濱虚子
またしても長閑な駅に止るなり ハードエッジ
またしても:
またしても鴬餅の粉厚し 飯島晴子
夏座敷またしてもとり散らしけり 久保田万太郎
またしてもふりくる雨や秋出水 久保田万太郎
またしても狐見舞ひぬ下り簗 黒柳召波
行く雁やまたしても建つビルディング 久保田万太郎
またしても人のおちめや年の暮 久保田万太郎
またしても賀状の干支の一廻り ハードエッジ
夏
公園に地元の赤子風薫る ハードエッジ
地元:
夕方は地元のニュースあつぱつぱ 小池康生
波郷忌や地元のバスの深大寺 ハードエッジ
温泉に地元の赤子年の暮 森田智子
湯加減を塩梅申す新茶殿 ハードエッジ
加賀人が酢の塩梅や霜の蟹 正岡子規
舌頭に千転せよと蛞蝓 ハードエッジ
舌頭:
舌頭に千転するや汗の玉 正岡子規
舌頭にとろりと甘き寒の水 高橋淡路女
笹鳴の舌頭見ゆるかに近し 皆吉爽雨
揚羽蝶黒く正しく美しく ハードエッジ
美+黒:
美しき黒の剥落揚羽蝶 ハードエッジ
枇杷の種黒く大きく美しく ハードエッジ
枝々の黒美しき夕紅葉 川崎展宏
黒板を美しくして冬休 齋藤朝比古
縦横に水羊羹の詰め合せ ハードエッジ
詰め合せ:
紫と黒の葡萄の詰め合せ ハードエッジ
紅さしてこの子どこの子祭の子 ハードエッジ
紅さし:
紅さして寝冷の顔をつくろひぬ 高濱虚子
紅さして口数減りぬ七五三 近藤英子
紅さしてゐしはまことか雪女郎 永井龍男
寒紅に紅さしゆびのふと不憫 後藤比奈夫
掃除婦の紅さし指も胼の指 岡本眸
凍鶴の眼の紅さしてかなしけれ 山口青邨
夕立や草刈る人にその草に ハードエッジ
夏の夜のソースに化ける赤茄子かな ハードエッジ
化ける:
明月や茶釜に化ける古狸 寺田寅彦
何にでも化ける力の烏瓜 宇多喜代子
化ける気もなくて海鼠のままでゐる ハードエッジ
夢見よと呟くやうに遠花火 ハードエッジ
夢見:
くちなはの夢見て伸ぶる黒髪か 黛執[《まゆずみ しゅう》
夢見ざる眠りまつくら神の旅 小川軽舟
凍りあふて何を夢みる海鼠哉 松瀬青々
夢見/自作:
こんな日は夢みるやうに春の雪 ハードエッジ
海底に夢みる空母夏の月 ハードエッジ
寝待月夢見の月となりにけり ハードエッジ
鬼の子も父母の夢見るならむ ハードエッジ
うとうとと夢見るごとき小春かな ハードエッジ
怖い夢見しや氷柱の曲りしは ハードエッジ
願はくは夢みるちから宝船 ハードエッジ
蟻地獄夜通し風の吹きすさぶ ハードエッジ
吹きすさぶ:
植木市春ゆく風の吹きすさぶ 飯田蛇笏
秋
秋晴のフライトを待つレストラン ハードエッジ
はらわたをくねくね納め秋昼寝 ハードエッジ
くねくね:
割箸の先に毛虫がくねくねと ハードエッジ
白露やほどけば消ゆる花結び ハードエッジ
花結び:
解けやすきものにうすら氷花結び ハードエッジ
さへづりや遍路の笠の花結び 吉田未灰
武者人形兜の紐の花結び 高橋淡路女
澄む水は母なる海を恋ひ流る ハードエッジ
海と母:
絶海をいまも流るる母の雛 吉田汀史
海底に空母が四つ夏の月 ハードエッジ
海にきて母の日傘の陰に脱ぐ 佐野美智
母の日の海が集めるちぎれ雲 岡本眸
地下鉄が闇を押し行く赤い羽根 ハードエッジ
作者としては丸ノ内線のイメージ
とは言え、
「丸の内線って、全体が真っ赤で、、、」とは、
既に、古老の昔語りか?
地下鉄:
竜天に昇る地下鉄の通気孔 鈴木きぬ絵
地下鉄を出れば銀座の春の雪 吉屋信子
地下鉄の押し来る空気花疲 小川軽舟
猫の恋地下鉄郡部まで延びて 前山松花
地下鉄は青き火花を夜の秋 長谷川櫂
コクトー忌地下鉄の窓鏡なす 榮猿丸
牡蠣船に坐し地下鉄の工事音 右城暮石
地下鉄も初日浴びゆく小石川 福島胖
地下鉄/自作:
地下鉄の使はぬ駅に螢舞ふ ハードエッジ
地下鉄で行く地下街のクリスマス ハードエッジ
地下鉄の中に踏まるる落葉かな ハードエッジ
地下鉄が速くて便利義士祭 ハードエッジ
地下鉄で参る浅草都鳥 ハードエッジ
アメリカへ新車を運ぶ月の船 ハードエッジ
月の舟:
座布団に坐してこれより月の舟 ハードエッジ
一燈を目ざし漕ぎゆく月の舟 桂信子
縫ひ上げて切らるる糸の夜長かな ハードエッジ
縫ひ上げ:
縫ひあげて汗のわが身に遠く置く 宍戸富美子
縫ひ上げてすぐに著て出る浴衣かな 宮崎君子
縫ひ上げて歯で切る糸や一葉忌 岩城のり子
縫ひあげし春著をかりの袖だたみ 村田青麦
秋深し画鋲の穴は紙に木に ハードエッジ
画鋲:
春惜しむ画鋲を深く刺し直し 金子敦
ポスター破れ画鋲錆びたる修司の忌 ハードエッジ
新緑や画鋲も金を揃へたる ハードエッジ
文化の日幹はあまたの画鋲刺す 福永耕二
画鋲ひとつ枯木に光り学園祭 桂信子
冬
珈琲に練乳滴らす神の留守 ハードエッジ
珈琲/自作:
梅雨寒の部屋のコーヒー卵焼 ハードエッジ
置かれあるアイスコーヒー稲荷ずし ハードエッジ
女中頭アイス珈琲ひと口飲み ハードエッジ
珈琲に負けてはならじ柏餅 ハードエッジ
秋の夜の濁る珈琲澄む紅茶 ハードエッジ
秋灯や珈琲の香とペンの音 ハードエッジ
珈琲を芭蕉は知らず初時雨 ハードエッジ
珈琲にミルクの渦や神の留守 ハードエッジ
数へ日の街が暮れ行くカフェオーレ ハードエッジ
帰り来て珈琲の香や初詣 ハードエッジ
木枯のガスステーション屋根大き ハードエッジ
お屋敷の子らが落葉を掃いてをる ハードエッジ
屋敷:
琴やめて鶯聞くや下屋敷 正岡子規
うぐひすの宿はと問へば梅屋敷 酒井抱一
釣堀へぬくるみちあり梅屋敷 大場白水郎
物売を梅からよぶや下屋敷 小林一茶
お屋敷の音にこそ聞け松手入 ハードエッジ
柿買の裏門覗く屋敷かな 正岡子規
人住まぬ屋敷の池の氷かな 正岡子規
変化住む屋敷もらひて冬籠 与謝蕪村
水仙や藪の付きたる売屋敷 浪化
落葉道長き小枝を拾ひけり ハードエッジ
小枝:
啓蟄や水道管の枝小枝 ハードエッジ
木を伐つて小枝をちらす春の土 矢島渚男
春待つや花なき小枝伸ばしては ハードエッジ
寒禽の取り付く小枝あやまたず 西村和子
落葉かき小枝ひろひて親子かな 正岡子規
裸木の詳らかなる枝小枝 ハードエッジ
菜箸のやうな小枝に返り花 金子敦
ふる雨は落葉の闇にしみとほる ハードエッジ
木枯や鉄階段の螺旋なす ハードエッジ
螺旋:
遺伝子も銀河も螺旋寒の明け ハードエッジ
赤き火の螺旋を辿る蚊遣かな ハードエッジ
腸詰の腸の悲しみ枯木立 ハードエッジ
腸詰:
腸詰が秋の河原に弾け飛ぶ ハードエッジ
うたた寝のこの子どこの子こたつの子 ハードエッジ
うたた寝:
うたた寝のやうに春日が水の中 南うみを
うたた寝の覚めて降りゐし春の雪 原石鼎
うたた寝のやうな明るさ春の雪 ハードエッジ
うたたねのいまが佳境か春炬燵 清水凡亭
うたた寝のじやまにはならず百千鳥 鎌田保子
うたた寝に団扇の風を賜はりぬ ハードエッジ
人生や秋うたた寝もその一つ 鈴木鷹夫
小春日のうたたね哀れ小傾城 会津八一
うたたねの夢美しやおきごたつ 久保より江
雪の夜に寝かす味噌・酒・赤ん坊 ハードエッジ
寝かす:
子を寝かす子守唄かも蚯蚓鳴く ハードエッジ
南瓜煮て一晩寝かす手紙かな ハードエッジ
新年
年玉の穴あき金貨枕辺に ハードエッジ
金貨:
金貨ほど重たくもなし桜貝 ハードエッジ
いくさよあるな麦生に金貨天降るとも 中村草田男
◎推敲過程 データ
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