追記:ぜいたく/2021.1.31、灯の駅舎/2020.3.19
ペアリング64
◎駅や電車
春の都電光りて中の夫見えず 岡本眸
踏切に見上ぐる電車クリスマス 小川軽舟
年越しや発車しさうに灯の駅舎 小久保佳世子
◎箪笥の外へ
帯箪笥はみ出て長き春の帯 長谷川かな女
箪笥からはみだす姉のはらわたも春 西川徹郎
緋縮緬噛み出す箪笥とはの秋 三橋敏雄
◎タンスの上
裏店やたんすの上の雛祭り 高井几董
小箪笥に雛ぽちとある叔母訪へり 久米三汀
豆雛が箪笥の上に忘られて 臼田亞浪
下駄買うて箪笥の上や年の暮 永井荷風
◎ふくれ、あふれる
雛箪笥あくやふくらみでる縮緬 澁谷道
封切れば溢れんとするかるたかな 松藤夏山
◎書物の上
しづかなり聖書の上のサングラス 加藤静夫
時刻表・地図その上にパナマ帽 片山由美子
◎大きな建物
蛍火や山のやうなる百姓家 富安風生
日当れば巖のごとき霜の宿 田中裕明
◎欠落
そのひとの亡けれど冬のあたたかに 田中裕明
初寄席に枝雀をらねど笑ふなり 岸本尚毅
◎若草山
末枯の若草山となりにけり 正岡子規
若草の若草山となりにけり 三村純也
◎眠る幸、眠る哀れ
まづしきものに眠る幸あり雪つもる 成瀬櫻桃子
生きものに眠るあはれや龍の玉 岡本眸
◎色模様の贅沢
ぜいたくのありたけつくす春著かな 久保田万太郎
一軒家より色が出て春着の児 阿波野青畝
膝に来て模様に満ちて春着の子 中村草田男
以上です