冬 【おでん2】 おでん屋の俳句の下手を肴かな

全然堂歳時記 冬の部
【おでん2】

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全然堂歳時記=現在、本号を含め96記事=春夏秋冬–年末年始=29-21-21-18–3-4
/2023.12.13

子季語:おでんの灯、おでん屋、おでん酒、おでん鍋、おでん店
月並みテーマ:孤独、愚痴、本音、家族、老い、人生、文学、説教、、、

 

◎葉書俳句

 

 

◎テキスト

駅を出て徒歩とほ一分のおでんの灯 ハードエッジ

よく見かける「駅から歩いて○○分」を使いました
不動産広告の徒歩1分は80m、だそうです

徒歩: ←古風な読みは「かち」
夏の河昔蕪村の徒歩渡り すずきみのる
徒歩ゆくや花野の絵巻巻くごとし 伊藤敬子
駕二つ徒歩五六人花薄 正岡子規
徒歩の人舟で来る人宿もみぢ 藤崎久を
徒歩ならば杖突坂を落馬かな 松尾芭蕉/無季 ←「歩行ならば」バージョンもあり

この橋のたもとのやなぎおでんの灯 ハードエッジ

嘴のたもと:
螢舞ふ橋のたもとの人柱 ハードエッジ

街灯がいとうの他はおでんの灯が一つ ハードエッジ

街灯:
街灯の首の細さや春の雪 小野あらた
街灯の中なる火取虫の影 抜井諒一
街灯にまたも弾かれ夜の蝉 鶴岡加苗
街灯は夜霧にぬれるためにある 渡邊白泉
街灯の灯る寒さの一つづつ 深見けん二
木枯の街灯点くや次々点く ハードエッジ
冬田かな次の街灯まで遠き さとけん
街灯は群れることなくクリスマス ハードエッジ
街灯にもリボン掛けたやクリスマス ハードエッジ

県庁に残業の灯やおでん酒 ハードエッジ

県庁:
県庁と市役所と並ぶ柳かな 寺田寅彦
夕立や県庁前の大通り ハードエッジ

じやんけんで負けておでんの買ひ出しに ハードエッジ

無論、本歌取り:
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子

その蛍にも負けて、
じやんけんで負けて螢の言ひなりに ハードエッジ

おでん屋に雪を払ひつ入りけり ハードエッジ

雪を払う:
挨拶は雪を払つてからのこと 櫂未知子
生きねばや鳥とて雪を払ひ立つ 村越化石
角巻を展げて雪を払ひをり 原田青児
寒菊の雪をはらふも別れかな 室生犀星
前髪の雪を払ひし御慶かな 大嶽青児

おでん屋の湯気ゆげやきとり屋の煙 ハードエッジ

自己模倣:
湯豆腐は湯気焼鳥は煙とこそ ハードエッジ 2021

品書は墨書ぼくしょ赤丸おでん店 ハードエッジ

「おでん店」をどう読むかは自信がありませんが、
「おでんてん」と軽妙な脚韻になるのではと密かに思ったりします

なお、「おでん店」は例句は少ないですが、
無いわけではありません

おでん店:
草の穂に裾明りしておでん店 山口青邨
湯畑とせなかあはせにおでん店 上村占魚

おでん屋の俳句の下手へたさかなかな ハードエッジ

下手:
下手の碁の四隅かためる日永哉 正岡子規
凧上げの下手も上手も先づ走る 高澤良一
はたごやに下手の絵を張る暑哉 正岡子規
絵も文字も下手な看板海の家 小野あらた
上手下手などと云はずに踊るべし 右城暮石
あの下手を嫁にと思ふ踊かな 横井也有
文章の下手のなげきを鵙によせ 星野立子
朝顔は下手の書くさへあはれなり 松尾芭蕉
小説も下手炭をつぐことも下手 久保田万太郎
下手謡稽古休まず老の春 高濱虚子

おでん屋の出戻でもどりのかよふなり ハードエッジ

おでん屋の娘:
おでん屋の看板娘如何にせし 鈴木花蓑

口の実と書いて口実こうじつおでん酒 ハードエッジ

口実:
立春を口実に酌む昼の酒 抜井諒一
はや暮れし日を口実のおでん酒 三村純也

残業の人もきたりておでんの輪 ハードエッジ

残業:
残業の灯が船渡御を見送れる 山田弘子

蒟蒻こんにゃく効能こうのうくおでん酒 ハードエッジ

蒟蒻:
蒟蒻はとわにふるえて春の雪 池田澄子
蒟蒻の白と黒とが秋水に 辻桃子
立冬の蒟蒻を食べまた老いぬ 岸風三楼

主役にはなれぬ白滝しらたきおでん酒 ハードエッジ

食品なら「しらたき」が一般的ですが、
この句では平仮名が続き過ぎるので漢字にしました
「平仮名にすることで、句のしらべが柔らかに、、、」
等は、「おととい来やがれ」派です

しらたき:
しらたきと豆腐と買ひて冬ざるゝ 久保田万太郎
しらたきの話に花の咲くおでん ハードエッジ
寄鍋のしらたきも飴色に煮ゆ 石塚友二

夏の白滝:
鳥居立つ大白滝を敬へと 山口誓子
白滝に召さるるごとく近づきぬ 西宮舞

息災そくさいやおでんの中のゆで卵 ハードエッジ

息災:
てつぺんかけたか義経は息災か 太田うさぎ

おでんの一巡ひとめぐりしてさてそこで ハードエッジ

さてそこで:
たけのこ煮、そらまめうでて、さてそこで 久保田万太郎

おでん酒おでんを食へばはかどりぬ ハードエッジ

捗り:
歩くごと田植はかどり行くことよ 高木晴子
さびしくて夜なべはかどりをりにけり 山田弘子
庭手入はかどりつゝや薄紅葉 高濱年尾

おでん屋の辛子からしへら見慣みなれたる ハードエッジ

見慣れ:
てつぺんかけたか義経は息災か 太田うさぎ
見慣れたるかの春星の名を知らず 西村和子
香水の見慣れし嵩の月日かな 嶋田麻紀
提灯の見なれぬ高さ鉾の宵 藤後左右
捨て団扇拾ひて見馴れたる絵を見 上野泰
掃苔や見なれし墓にかこまれて 岩田由美
葬り場へゆく見馴れたる寒の町 上崎暮潮
見馴れゐて見飽かぬ富士や初霞 川村紫陽

おでんの乗せて回送電車なり ハードエッジ

回送:
龍天へ回送電車くらやみへ 三宅やよい
回送のバス涼しげに走り去る 中本真人
秋惜しむ回送の灯の消ゆる時 すずきみのる

今年あと余すところのおでんの灯 ハードエッジ

余すところ:
芝ざくら好天あますところなし 石原舟月
あめつちの秋晴余すところなし 粟津松彩子
余すところ数ふるところ年の暮 ハードエッジ

 

◎初案20句

 

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全2枚/88句

全然堂歳時記 冬 【おでん2】テキスト推敲

 

◎推敲過程/A4プリント 原稿/pdf

なし

 

◎推敲過程/A4プリント 加筆/pdf

全4枚

全然堂歳時記 冬 【おでん】A4推敲 加筆

 

 

◎推敲過程/葉書プリント 原稿/pdf

葉書俳句プリント原稿 全7枚

全然堂歳時記 冬 【おでん2】葉書推敲 原稿

 

 

◎推敲過程/葉書プリント 加筆/pdf

葉書俳句プリント加筆 全7枚

全然堂歳時記 冬 【おでん2】葉書推敲 加筆

 

 

◎葉書俳句表側

 

 

◎データベース画面/桐v10

 

 

◎おでん秀句

はや暮れし日を口実のおでん酒 三村純也
飲めるだけのめたるころのおでんかな 久保田万太郎
人情のほろびしおでん煮えにけり 久保田万太郎
くじ運は無いがおでんは三日もつ 塩見恵介
老残のおでんの酒にかく溺れ 久保田万太郎

おでん酒帽子かむりてみな老いて 田中裕明
コンビニのおでんが好きで星きれい 神野紗希
おでん屋の看板ごろの暗さかな 阿波野青畝
おでん酒あしもとの闇濃かりけり 久米三汀
おでん屋の灯のほの暗く心地良く 椎木茂子

コンビニのおでん水道水を足す 黄土眠兎
戸の隙におでんの湯気の曲り消え 高濱虚子
おでん屋を出て真つ黒な土手がある 岡本眸
提灯の三つに一字づつおでん 下田實花
おでん屋の流れ通しの演歌かな 中本真人

おでん屋に同じ淋しさ同じ唄 岡本眸
おでんやを立ち出でしより低唱す 高濱虚子
カフカ去れ一茶は来れおでん酒 加藤楸邨
一人かと聞かれ注がるおでん酒 芝地裕二
おでん煮ゆ男ばかりのたのしくて 行方克巳

おでん屋の看板娘如何にせし 鈴木花蓑
一合に足らぬ一合おでん酒 斉田仁
牛市の寒さ封じのおでん酒 昆ふさ子
おでん汁冷めて浮かべる油かな 杉原祐之
未来おそろしおでんの玉子つかみがたし 山口優夢

おでん屋の端数引かれし請求書 中本真人
おでん煮て店とも屋台ともつかず 三村純也
吾妻橋渡れば場末おでんの灯 山口青邨
おでん屋の暖簾外してすぐ閉めず 中本真人
おでん屋の灯の正面にバス止る 大塚とめ子

おでん屋をのこし早寝の小漁港 大島民郎
おでんやがよく出るテレビドラマかな 吉屋信子

◎未練句/補遺/在庫処理

おでん屋の湯気を豊かに飲むべかり ハードエッジ
おでん屋の壁の達筆ゆでたまご ハードエッジ
おでん屋のゆの字と云へばゆでたまご ハードエッジ
おでん屋の暖簾が背ナを庇ふかに ハードエッジ
貸してくれしおでん屋の傘おでんの香 ハードエッジ

新橋に黒き機関車おでんの灯 ハードエッジ
駅裏の昔ながらのおでんの灯 ハードエッジ
おでん屋のテレビにニュース速報が ハードエッジ

以上です