春 【うすら氷】 解けやすきものにうすら氷、花結び

全然堂歳時記 春の部
【薄氷】うすらひ/うすらい

全然堂歳時記=現在、本号を含め112記事=春夏秋冬–年末年始=31-25-23-21–5-7
/2025.3.17

子季語:薄氷はくひょう薄氷うすごおり薄氷うすらひ/うすらい、うすら氷、うすらひ、春氷、春の氷
人気成分:日、光、影、雪、水、波
参考記事:「うすら氷の俳句と切口」/note

わが俳句データベース内の「薄氷」は約640句/自作除外
表記別の内訳は、
薄氷520、うすらひ70、うすら氷10、うす氷6、春氷25、春の氷15
「うすら氷」は少数派だが、気に入っているので自作では多用
今回は20句中10句

◎葉書俳句

 

◎テキスト

上五の「薄氷」はお好みで「はくひょう」or「うすらい」

夜にふる雪は夜明けのうすら氷に ハードエッジ

夜明け:
月明に続く夜明を囀れり 高橋馬相

四方から青みて夏の夜明哉 正岡子規
血ぶくれて蚊のはひありく夜明哉 正岡子規
蚊の宵と思へば蚤の夜明かな 尾崎紅葉
さくらんぼ夜明けのやうに酸つぱくて 小池康生
人の世に月見草あり夜明あり 星野立子

新米を炊くタイマーの夜明かな ハードエッジ

上げ汐の氷にのぼる夜明かな 正岡子規
一夜明け氷柱長者となりにけり ハードエッジ

みずうみに池に歩道に薄氷うすごおり ハードエッジ

湖と氷:
淡雪や氷あとなき湖の上 河東碧梧桐
湖の氷解くるを聞きに来よ 小澤實

湖の氷にはぢく霰哉 正岡子規
濯女に温泉湧きあふれて湖氷る 木村蕪城
氷上を湖心といへるあたりまで 奥田智久
湖は氷の上の焚火哉 夏目漱石

古池の春のよそお薄氷うすごおり ハードエッジ

春+装:
ウインナも蛸の装ひ千代の春 ハードエッジ

うすら氷を水に浮べて空に雲 ハードエッジ

空に雲:
青空に雲ひとつなき落椿 ハードエッジ
青空に雲も日もなきお茶の花 岸本尚毅
獅子舞の反りかへりたる空に雲 久米三汀

薄氷や切株のすべつ ハードエッジ

滑り落:
竹落葉亀の甲羅を滑り落つ 金子敦
冬の滝大盤石を滑り落つ 栗田やすし

薄氷の針を散らせしごときかな ハードエッジ

氷+針:
薄氷の針を見出でし宿酔 三橋敏雄

やすらかにうすら氷うかぶ日かげかな ハードエッジ

日陰かな:
冬の日に我身の日なた日かげかな ハードエッジ
水鳥の風を逃るる日陰かな ハードエッジ
枯るゝ草枯れぬ小草の日陰哉 正岡子規

薄氷の上に飴玉あめだま置いてやろ ハードエッジ

飴玉:
飴玉のさみどりの線春立ちぬ 金子敦
石鹸玉丸く飴玉甘くかな ハードエッジ
飴玉の最後の固さ寒の雨 星野高士
飴玉を頬に休ませ賀状書く 千野千佳

薄氷の上に大きな春の雪 ハードエッジ

参考句:
小をんなの髪に大きな春の雪 高野素十

うすら氷の下うすら氷の影あはし ハードエッジ

氷+影:
うすら氷の影にも日差ありにけり ハードエッジ
日のさして薄氷に影生まれけり 片山由美子
冬の日や馬上に氷る影法師 松尾芭蕉
あをあをと氷の中に影法師 長谷川櫂
吐く息の影の流るる氷柱かな 森賀まり

うすら氷のぱりぱり乾く地べたかな ハードエッジ

地べた:
蒲公英に地べたの冷ゆる夜なりけり ハードエッジ
青空に地べたに川に桜かな ハードエッジ

夕立にささくれ立ちし地べたかな ハードエッジ
坐りたる地べたが温し祭酒 松野苑子
十薬を刈りし地べたに白き塵 ハードエッジ

蝉おちて鼻つく秋の地べたかな 飯田蛇笏
花火の夜地べたにものを食ひにけり 南うみを
石段のはじめは地べた秋祭 三橋敏雄

豆撒や石に地べたに木に草に ハードエッジ

正月の地べたを使ふ遊びかな 茨木和生

解けやすきものにうすら氷、花結び ハードエッジ

花結:
眠くなる雛の調度の花結 松野苑子
さへづりや遍路の笠の花結び 吉田未灰
武者人形兜の紐の花結び 高橋淡路女
雁や骨壷にある花結 古舘曹人
花結びの黄襷で搗く祝餅 毛塚静枝

薄氷は水の瘡蓋かさぶたがすべし ハードエッジ

瘡蓋:
少年のかさぶた痒く地虫出づ 岩崎健一
取れさうな瘡蓋取れぬ熱帯夜 佐藤郁良
ブルーシートは街のかさぶた虎落笛 斎藤よひら

薄氷のはしむしばむ流れあり ハードエッジ

蝕む:
河童忌や紙を蝕むセロテープ 小林貴子
夜光虫岩を蝕むごとく燃ゆ 大野林火

流されの旅は短し薄氷うすごおり ハードエッジ

流され:
春灯の流されてをる雨の玻璃 上野泰
流されてみせて観潮船といふ 後藤立夫
流されてよりは供なき雛となる 岸風三楼
終夜潮騒雛は流されつづけゐむ 松本明
流されて雛体温を失ひぬ 箱森裕美
囀りてすこしながされゐるらしき 中田剛
尾を振つて流され行くや蝌蚪一つ 星野立子

大川や流されながら人泳ぐ 正岡子規
水馬流され水輪流されし 倉田紘文

ざりがにの流されてゆく施餓鬼かな 岸本尚毅

流されて橋をくゞりぬ浮寝鳥 穴井梨影女

草かげにまだめそめそと薄氷うすごおり ハードエッジ

草かげ:
草蔭にぶつくさぬかす蛙哉 小林一茶
草かげに沈めてありし鮎の籠 長谷川櫂
草かげにころろころろと秋の水 山口青邨

うすら氷のもやもやけて水ぬるむ ハードエッジ

もやもや:
あめつちや春をもやもや掻き玉子 池田澄子
春の鯉もやもや影を重ねゐつ 大串章
蛤のもやもやと出す明日かな 上田信治
古株の底やもやもや薄の芽 正岡子規

もやもやと鶏頭が磨硝子ごし 生駒大祐
もやもやと腸のある南瓜かな ハードエッジ

裏打のもやもやもまた蜜柑なり ハードエッジ

うすら氷の消えて明るい水たまり ハードエッジ

うすら氷は朝日をあびて卵焼 ハードエッジ

日を浴:
永き日の末の夕日を浴び歩く 大野林火
湯帰りの立春の日を浴びにけり 篠原温亭
日を浴びて春の雪舞ふ金閣寺 浜田智恵
日を浴びて埃を浴びて花の酔 籾山柑子

いぼむしり日を浴びて皃こすりをる 山西雅子

ひさかたの冬日を浴びて出土品 箱森裕美
冬空の鳶や没後の日を浴びて 上田五千石

今日だけは初日を浴びよ足の裏 加藤楸邨

日を浴/自作:
土くれも石ころも春の日を浴びて ハードエッジ
日を浴びつまだ陽炎となれぬ石 ハードエッジ
日を浴びて波を忘るる春の海 ハードエッジ

日を浴びて働く蜂も花蜜柑 ハードエッジ

日に一度夕日を浴びて鵙の贄 ハードエッジ

日を浴びてうつらうつらと軒氷柱 ハードエッジ
日を浴びて散りぬる金の枯葉かな ハードエッジ
日を浴びて枯葉は散るをためらはず ハードエッジ
選ばれて残る枯葉や日を浴びて ハードエッジ
蜜柑山沖の漁船も日を浴びて ハードエッジ

富士つひに初日を浴びて輝けり ハードエッジ

うすら氷の消えてしまひし桜かな ハードエッジ

消えてしまひ:
花篝次々消えてしまひけり ハードエッジ
曼珠沙華消えてしまひし野面かな 石橋秀野
狐火の消えてしまひし真の闇 清崎敏郎

◎初案20句

解けやすきものにうすら氷花結び ハードエッジ
うすら氷は日当る場所を得たりけり ハードエッジ
うすら氷や水に浮きつつ水となる ハードエッジ
薄氷を置き切株の目覚かな ハードエッジ
うすら氷のぱりぱり乾く水たまり ハードエッジ

日当りてよりうすら氷のめそめそと ハードエッジ
うすら氷の解けてもやもやしてゐたる ハードエッジ
瘡蓋のやうな薄氷剥がさんと ハードエッジ
うすら氷や飴玉舌のなすままに ハードエッジ
うすら氷の針を集めし如きあり ハードエッジ

うすら氷の消えて明るい水たまり ハードエッジ
うすら氷も日暮の色となりにけり ハードエッジ
うすら氷の消えなむとする桜かな ハードエッジ
流されて短い旅の薄氷 ハードエッジ
うすら氷の影にも差してゐる日かな ハードエッジ

まひそめし雪うすら氷の上にかな ハードエッジ
湖の縁一周のうす氷 ハードエッジ
薄氷の端を蝕む流れあり ハードエッジ
池にふる雪うすら氷となる夜明け ハードエッジ
湖に池に歩道に薄氷 ハードエッジ

◎推敲句一覧/pdf

全198句/4枚

全然堂歳時記 春 【うすら氷】推敲 テキスト

 

◎A4推敲 原稿/pdf

全2枚

全然堂歳時記 春 【薄氷】 A4推敲 原稿

 

◎A4推敲 加筆/pdf

全2枚

全然堂歳時記 春 【うすら氷】 A4推敲 加筆

◎葉書推敲 原稿/pdf

全14枚

全然堂歳時記 春 【薄氷】 葉書推敲 原稿

 

◎葉書推敲 加筆/pdf

全14枚

全然堂歳時記 春 【うすら氷】 葉書推敲 加筆

 

◎葉書俳句秀句&注釈面

◎データベース画面/桐v10

◎薄氷秀句

明け方の薄氷さびしくてきれい 木下ラーラ
薄氷に乗りてこの世を遊ばむか 糸大八
うすらひやきのふ籠りをときし寺 宇佐美魚目
うすらひの張りためらへる如くなり 深川正一郎
うすらひや天地もまた浮けるもの 行方克巳

薄氷の解けんとしつつ日をはじく 高濱年尾
昼月は空のうすらひ伊賀に入る 川崎展宏
うすらひのかけら光りぬ竹箒 南うみを
日暮まで山かげの田の薄氷 長谷川櫂
日のさして薄氷に影生まれけり 片山由美子

火事跡に二三日張る薄氷 田中気骨
たつぷりと水ある春の氷かな 岸本尚毅
うすらひに水のくまどり光悦忌 上田五千石
薄氷と水とけじめのあるあたり 宮津昭彦
薄氷の裂け目に水や形見分 広渡敬雄

薄氷はそろそろ水にもどりたく 神山朝衣
泡のびて一動きしぬ薄氷 高野素十
薄雪をのせし薄氷銀閣寺 右城暮石
恋猫が舐めうすらひの穴穿つ 大内登志子
薄氷に縄文土器の模様かな 松野苑子

母親よ池のかたちの薄氷よ 池田澄子
籾殻のこぼれて春の氷かな 南うみを
せりせりと薄氷杖のなすままに 山口誓子
穿ちたる氷の穴に薄氷 右城暮石
薄氷の吹かれて端の重なれる 深見けん二

つつと動きて薄氷とわかりけり 鷹羽狩行
せゝらぎに流れもあへず薄氷 高濱虚子
流れきし薄氷とまる薄氷に 鈴木貞雄
薄氷の裏を舐めては金魚沈む 西東三鬼
檐下や金魚の池の薄氷 正岡子規

薄氷に鯉の錦の滲みゐる 白岩三郎
薄氷を引きずつてゆく鴨の胸 小圷健水
薄氷やひとりたのしき鳰 石田波郷
薄氷にふたたび降りし雀かな 皆川盤水
うすらひは深山へかへる花の如 藤田湘子

薄氷にのつて乾ける落葉かな 上野泰
薄氷のめじや~とある落葉かな 野村泊月
薄氷の草を離るゝ汀かな 高濱虚子
つぎつぎと薄氷流れ岸の草 桂信子
藁しべを引くや着ききし春氷 岡井省二

◎未練句/補遺/在庫処理

うすら氷の時々刻々や日を浴びて ハードエッジ
薄氷の呪文早くも解け始む ハードエッジ
うすら氷の影にも日差ありにけり ハードエッジ
うすら氷や眩しくなれば目をつむり ハードエッジ
うすら氷のちかくを水のとほりけり ハードエッジ

うすら氷も水も乾いてなくなりぬ ハードエッジ
うすら氷や未練の水を滲ませて ハードエッジ
うすら氷も雲も浮かんでゐてやがて ハードエッジ
うやむやに消えてしまひし薄氷 ハードエッジ
うすら氷を見てやる他に術もなし ハードエッジ

うすら氷をうかべ名もなき水たまり ハードエッジ
うすら氷のじつと浮んでゐたりけり ハードエッジ
うすら氷の浮かんでゐるがやつとなり ハードエッジ

 

以上です