春 【花の雨】 弓なりに傘を開けば花の雨

全然堂歳時記 春の部
【花の雨】はなのあめ

全然堂歳時記=現在、本号を含め54記事=春夏秋冬=18-9-14-10—2-1/年末年始
/2022.4.7

 

◎葉書俳句

◎テキスト

ゆみなりに傘を開けば花の雨 ハードエッジ

弓なり:
糸蜻蛉いととんぼ弓なりといふ愛しかた 中原道夫
高跳たかとびの棒弓なりに秋高し 大河原識
弓形ゆみなり西瓜すいかの皮の残りけり ハードエッジ
列島の弓形強め年迎としむかふ 鷹羽狩行たかは しゅぎょう

すべり台たらたら花の雨流る ハードエッジ

たらたら:
かもはしよりたらたらと春の泥 高濱虚子たかはま きょし
たらたらと雪解雫ゆきげしずくや雪の上 ハードエッジ
土瓶どびんより番茶たらたら大石忌おおいしき 鈴木鷹夫   たかお
たらたらと星流れたる網戸あみどかな 高野素十    すじゅう
たらたらとえんしたたるいなびかり 山口誓子   せいし
もろこしの葉にたらたらと稲光いなびかり 富安風生とみやす ふうせい

花の雨ながるる水となつてゐし ハードエッジ

花の雨つひにぬかるみ始めたる ハードエッジ

ぬかるみ:
ぬかるみの踏まれ踏まれて春なかば ハードエッジ
ぬかるみのあれば吸ひつく落花らっかかな 岸本尚毅   なおき
ぬかるみに残る氷や踏まれ割れ ハードエッジ

泥濘:
涅槃寺ねはんでらまでの泥濘でいねい地獄じごくかな 池田秀水    しゅうすい

花の雨ぬれてからすの重たけれ ハードエッジ

重たけれ:
ながき日の蜂蜜壜はちみつびんの重たけれ ハードエッジ
たがやしてくわねつとりと重たけれ ハードエッジ
土砂降どしゃぶりの雨のの重たけれ ハードエッジ
冬日今まぶたにありて重たけれ 高濱虚子たかはま きょし
積りたる落葉の底の重たけれ ハードエッジ

花の雨に風加はりて強まりて ハードエッジ

下水げすいへとさかさまや花の雨 ハードエッジ

下水:
夕焼へ下水の口のならびたる 渡邊白泉わたなべ はくせん
割下水わりげすいきたなき水の氷りけり 正岡子規  しき

夜にかけてかみなりといふ花の雨 ハードエッジ

花の雨巫女みこ着替きがへて帰りけり ハードエッジ

巫女:
八朔はっさく太鼓たいこうながす巫女みこの鈴 小川軽舟    けいしゅう
伝言を巫女みこ菊師きくしにささやきぬ 日原傳ひはら つたえ
時雨しぐるるや和紙でたばねし巫女の髪 戸恒東人とつね はるひと
冬麗とうれいやバイトの巫女の赤と白 川崎展宏    てんこう
ほのと白し破魔矢はまや作りの巫女の手は 石田波郷   はきょう

巫女/自作:
巫女赤く神主かんぬし白く梅見頃うめみごろ ハードエッジ
夕立を見てゐる巫女のアルバイト ハードエッジ
その跡を巫女の掃きをる松手入まつていれ ハードエッジ
巫女去りて禰宜ねぎも寝落ちて追儺ついな ハードエッジ
玉砂利たまじゃりを巫女のひびかす落葉掻おちばかき ハードエッジ

花の雨花のみやこに早くも ハードエッジ

花の都:
月も出て花の都の盆踊ぼんおどり ハードエッジ

さびしさにネオンともせり花の雨 ハードエッジ

さびしさに:

風船を売るさびしさにへゐたり 上田五千石    ごせんごく
淋しさにせりなればたず 加倉井かくらいあき
淋しさにころげて見るやせみから 正岡子規  しき
淋しさに二通りあり秋の暮 三橋敏雄
淋しさに飯をくふなり秋の風 小林一茶   いっさ
淋しさにまた銅鑼どら打つや鹿火屋守かびやもり 原石鼎  せきてい
淋しさにほどけしすすきかと思ふ 後藤比奈夫  ひなお
淋しさにれてゆく日々寒さにも 稲畑汀子いなはた ていこ
学間のさびしさにへ炭をつぐ 山口誓子   せいし

さびしさに/自作:
寂しさに消えて仕舞しまひし夕焼かな ハードエッジ
寂しさにおどり明かすといふことも ハードエッジ
寂しさに音ありとせば遠花火とおはなび ハードエッジ
蚯蚓みみず鳴く寂しさに身をくねらせて ハードエッジ

朝も昼も夜もまざる花の雨 ハードエッジ

止まざる:
花の雨そそぎやまざる虚子忌きょしきかな 百合山羽公ゆりやま うこう
む水を落しやまざる流れあり 稲畑汀子いなはた ていこ
送り火のゆれやまざるをおそれけり 原田喬    たかし
空といふ自由つる舞ひ止まざるは 稲畑汀子
いだかねば水仙すいせんれやまざるよ 岡本眸    ひとみ

花の雨しんから冷えてしまひけり ハードエッジ

銭湯せんとうに人なつかしや花の雨 ハードエッジ

銭湯:
猫の恋路地ろじ銭湯せんとうにほふなり 箱森裕美はこもり ひろみ
銭湯の西日のかごをひとつとる 田村了咲    りょうさく
銭湯の番台高き子供の日 佐々木六戈ささき ろっか
銭湯の中も祭の威勢いせいかな 関根千方せきね ちかた
銭湯のすたれし町の盆踊ぼんおどり ハードエッジ
ラガーらの負け銭湯の湯を減らす 伊藤伊那男  いなお
銭湯で歯をみがく人大晦日おおみそか ハードエッジ
銭湯の朝影きよき師走しわすかな 広瀬惟然ひろせ いぜん

花のあめ花にくるひてもすがら ハードエッジ

狂ひて:
狂ひても母乳は白しはち光る 平畑静塔ひらはた せいとう
梅の花狂いておの得意とくいとす 和田悟朗   ごろう
向日葵ひまわりが好きで狂ひて死にし画家 高濱虚子たかはま きょし

花の雨生きて売らるる貝の山 ハードエッジ

売らるる:
絵はがきのやうに売らるる種袋 木本隆行
フランスパン立てて売らるる麦の秋 長谷川久々子
半玉のキャベツ売らるる仰向に ハードエッジ
海のもの陸に売らるる寒さかな ハードエッジ
蓋括り売らるる土鍋十二月 鷹羽狩行
皹の手もて売らるる鶏を撫づ 福田蓼汀

花の雨秘伝ひでんのたれに味醂みりん ハードエッジ

味醂:
うなぎ屋が歳暮せいぼによこす味醂かな 龍岡晋たつおか しん

ふたあけて天丼てんどんにおふ花の雨 ハードエッジ

蓋あけ:
ひもいて蓋開けて雛飾ひなかざりけり ハードエッジ
蓋あけしごと極暑ごくしょきたりけり 星野立子
いろいろの蓋あいてゐるキャンプかな 齋藤朝比古さいとう あさひこ
蓋あけて月の光のオルゴール ハードエッジ
鉄の蓋開ければ蛇口じゃぐちななかまど 上田信治うえだ しんじ
蓋開けしままにこごえる戦車かな 二村典子
火事跡に蓋開いてゐる魔法瓶まほうびん 林昭太郎
蓋あけて宝づくしの雑煮椀ぞうにわん 能村登四郎のむら としろう


クリームかチョコかとまよふ花の雨 ハードエッジ

チョコレート:
チョコレート割ればとがれる二月かな 金子敦かねこ あつし
春雪しゅんせつや洋酒の当てのチョコレート ハードエッジ
植民地の人にも届け愛のチョコ ハードエッジ
いつ渡そバレンタインのチョコレート 田畑美穂女たばた みほじょ
いつの間にがらりと涼しチョコレート 星野立子
呪文じゅもんごとくチヨコレイトや露地ろじの秋 ハードエッジ
よく遊びよく学ぶべき秋のチョコ ハードエッジ
新涼しんりょうや銀の中からチョコレート ハードエッジ
つゆの世や黒さまざまにチョコレート 野口る理

あたたかき涙つめたき花の雨 ハードエッジ

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全然堂歳時記 春 【花の雨】テキスト推敲

◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf

全然堂歳時記 春 【花の雨】A4推敲

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

全然堂歳時記 春 【花の雨】葉書推敲

 

以上です