追記:ふたりづれ/2022.2.12
ペア81
◎絶賛の春
新邸に楽しき春を待つばかり 鈴木花蓑
大好きな春を二人で待つつもり 西村麒麟
やがて、二人は
この春よりあけくれのふたりづれなり 滝井孝作
◎濃きところ
古町の春色の濃きところかな 日野草城
風が見ゆ青田もつとも濃きところ 池田秀水
猫が知る冬日もつとも濃きところ 伊藤伊那男
雑炊の卵の黄身の濃きところ 澤田和弥
金屏にともし火の濃きところかな 高濱虚子
緑濃きところは捨てて葱白し ハードエッジ
◎象の耳の四季
春風をあふぎ駘蕩象の耳 山口青邨
南風や扉よりも重く象の耳 有馬朗人
梅雨晴や歩けば戦ぐ象の耳 村田篠
象も耳立てゝ聞くかや秋の風 永井荷風
象の耳開くは落葉聴くために 対馬康子
初春の風にひらくよ象の耳 原和子
◎先っぽの死
涅槃会や蚯蚓ちぎれし鍬の先 正岡子規
割箸の先に毛虫がくねくねと ハードエッジ
◎花を踏んだ草履
花を踏みし草履も見えて朝寝かな 与謝蕪村
花ふみし草履をぬいで絵踏哉 松瀬青々
◎帰る家
落椿跨いで帰る家がある 加藤静夫
菜の花や帰る家ある子供たち 矢口晃
みんな帰る家あり赤い羽根つけて 菖蒲あや
日に一度帰る家ありすいつちよん 黄土眠兎
帰る家ありて摘みけり草の花 小島健
◎さびしくなれば
夕焼の寂しくなれば消ゆるなり ハードエッジ
露草や淋しくなれば泣きもする 星野立子
檻の鷲寂しくなれば羽搏つかも 石田波郷
◎コア
自我のなきものは去るべし青嵐 鷹羽狩行
命なきものは滅びず定型派 筑紫磐井
◎富裕層
手の薔薇に蜂来れば我王の如し 中村草田男
幼きに木の実わかちて富むごとし 岡本眸
◎バス遅延
真冬日をバスは二時間来ぬつもり 櫂未知子
嘘つきのバス時刻表雪もよひ 丸田余志子
以上です